映画「ビール・ストリートの恋人たち」 PR

コムアイが語る「ビール・ストリートの恋人たち」 | “永遠”が一瞬見えるシンプルな愛の物語

「ムーンライト」で知られるバリー・ジェンキンスの監督作「ビール・ストリートの恋人たち」が、2月22日に公開される。第91回アカデミー賞の脚色賞、助演女優賞、作曲賞にノミネートされている本作は、公民権運動家でもあった作家ジェームズ・ボールドウィンによる小説を映画化したラブストーリー。1970年代のアメリカ・ニューヨークを舞台に、19歳の女性ティッシュと無実の罪で逮捕された青年ファニーの愛と信念が描かれる。

このたび「ムーンライト」に感銘を受けたコムアイ(水曜日のカンパネラ)に本作を鑑賞してもらい、感想を聞いた。「ジェンキンス監督は“揺らぎ”を描く作家」と語る彼女が、胸を打たれた場面とは──。

取材・文 / 山川奈帆子 撮影 / 小原泰広

やっぱり優しい人だな

コムアイ

──コムアイさんはバリー・ジェンキンス監督の前作「ムーンライト」を絶賛され、公式サイトにコメントも寄せられていました。特に魅かれた点があれば教えてください。

すごく好きでした。品がよく丁寧に撮られていて、黒人の話の描き方が新鮮で衝撃だった。白人も黒人もそれぞれのキャラクターを決め付けないで、細かく描かれているのに感動しました。

──今回の「ビール・ストリートの恋人たち」はいかがでしたか。

よかったです。すべてを許すような音で始まる最初のシーンから、バリー・ジェンキンス監督らしさを感じました。冒頭の5分だけ観て、この監督は音を大事にしてる人だということを思い出しました。

──主人公カップルのファニーとティッシュが歩いているのを俯瞰で捉えた場面ですね。

はい。最初に流れるのにエンディングっぽい音楽で、いろいろあったけどそれを全部包み込むような音楽というか。人が自分の人生を振り返る瞬間にかかるような音楽が最初に流れていて、この監督はやっぱり優しい人だなと思いました。

ジェンキンス監督は揺らぎを描く作家

──最初に音楽に注目されるのは、ミュージシャンらしい感想ですね。音楽以外の部分で、ジェンキンス監督らしさを感じたところはありますか。

スターの話ではなくて、市民を描いている。主人公カップルもいい意味で脇役っぽいというか。街ですれ違った人の話をのぞき込んでいるような描き方で、1人ひとりの感情の揺らぎに焦点を絞って丁寧に丁寧にお芝居を撮っていますよね。

──「ムーンライト」も、1人の少年の感情の揺らぎを成長とともに3つの時代構成で丁寧に描いていましたね。

はい。1人に焦点を当てれば当てるほど、その時代や街全体の空気が感じられるし、そういう撮り方が上手だなと。ジェンキンス監督は揺らぎを描く作家ですから、日本人は彼の作品を好きだと思います。日本は気配とか揺らぎとか面影を大切にする国なので。本作でも面会のシーンとか、1人の顔の中で、いろんな気持ちが、喜びとか申し訳なさ、戸惑い、期待とか……どんどん繊細に表情が動いていきますよね。

コムアイ

──繊細さや感情の機微を大切にする部分に共通点が感じられますね。

あと「ムーンライト」は会話が好きだなと思ったんですけど、今回も会話がすごくよかったです。

──ジェンキンス監督自身、会話劇が好きと語っていました。先ほど脇役っぽいとおっしゃっていた主人公カップルの関係性はいかがでしたか。

彼らを観てシンプルな気持ちにさせられました。世の中は動いていて、周りでいろんなことが起きているのとはまったく関係なく、2人がずっと求めているものがある。

──自分の求めるものに向かってシンプルに生きるということでしょうか。

それが当たり前だよなと痛感させられました。仕事でも家族でも恋人でもいいんですが、まず先に情熱や愛情があって、そこに向けてがんばってもがいていく。そういう当たり前のことが、なぜ今難しい感じがするんだろうって思うんです。

「ビール・ストリートの恋人たち」より、左からステファン・ジェームス演じるファニー、キキ・レイン演じるティッシュ。

──はい。

この間までインドにいたんですけど、インドではその順番がちゃんとしてる。まず愛があって、そこへ計画が付いてくるという、この映画で感じたことを現地の人々と触れ合って改めて学びました。

「ビール・ストリートの恋人たち」
2019年2月22日(金)全国公開
ストーリー

1970年代、アメリカ・ニューヨークのハーレム。デパートの香水売り場で働く19歳のティッシュは、幼なじみの恋人ファニーの子を身ごもる。しかし、ファニーは白人警官の恨みを買い、いわれのない強姦罪で服役中の身だった。強く愛し合うティッシュとファニーの愛を守るため、家族や友人たちはファニーの無実を証明するべく、奔走する。

スタッフ / キャスト

監督・脚本:バリー・ジェンキンス

原作:ジェームズ・ボールドウィン

製作総指揮:ブラッド・ピット

出演:キキ・レイン、ステファン・ジェームス、レジーナ・キング、コールマン・ドミンゴ、マイケル・ビーチ、ディエゴ・ルナほか

コムアイ
1992年7月22日、神奈川県生まれ。水曜日のカンパネラの主演・歌唱担当。2012年、ケンモチヒデフミとDir.Fに出会い、水曜日のカンパネラへ加入。同年に初のデモ音源「オズ」「空海」をYouTubeに配信し、本格的に活動開始する。2013年よりライブ活動をスタートさせ、「クロールと逆上がり」「羅生門」と立て続けにアルバムを発表。2016年、EP「UMA」でワーナーミュージック・ジャパン/Atlantic Japanよりメジャーデビュー。2017年2月にフルアルバム「SUPERMAN」をリリースした。Dolce & Gabbanaがミラノで発表した2017-2018年秋冬コレクションのショーでランウェイモデルとして歩き、VOGUE JAPAN WOMEN OF THE YEAR 2017を授賞するなどさまざまな活動を行なっている。2018年6月には音楽を水曜日のカンパネラが担当した映画「猫は抱くもの」に出演した。