雨の中の慾情|片山慎三×あいみょん「次、何するんやろ?」ラブストーリー、ファンタジー、戦争… 盛りだくさんの新作に今後への期待が膨らむ

この3人でどうなるんやろう(あいみょん)

あいみょん 成田凌さん、中村映里子さん、森田剛さんというキャストの組み合わせも新鮮で、すごく楽しみにしていました。「この3人でどうなるんやろう?」って。

あいみょん

あいみょん

片山 みんなすごくよかったですね。

──現場では走り方やまばたきの速さを演出したそうですね。

あいみょん 走り方!?

片山 義男の走り方、独特じゃなかったですか?

あいみょん 独特でした。

片山 マンガを描いている青年が無理やり戦争で戦わされていると考えたら、普通に走らないだろうなと思って。スタッフの中に独特な走り方をする人がいてピンときました。歩き方や走り方には、その人らしさが出ると思っているので。

あいみょん 出ますよね。

──今お話に挙がったメインキャスト3人について、印象や撮影して感じた魅力を教えてください。

「雨の中の慾情」より、義男役の成田凌(右端)

「雨の中の慾情」より、義男役の成田凌(右端)

片山 まず成田さんは、僕の言っていることを理解して、いろんなことを提案してくれました。「このシーンは、夢の中だけど傷付いたほうの手だからあんまり動かさないほうがいいですよね」とか。演出目線でいろいろ提案してくれるので、客観的に見て演じているんだなと思いました。

あいみょん 自分の役じゃなく、作品にも向き合っている方なんですね。

片山 そうそう。作品の全体的なトーンなども理解してやってくれました。森田さんは……。

あいみょん 森田剛さん、すごい俳優さんですよね! 私、10代のときに舞台で森田さんのお芝居を見て、衝撃を受けたんです。その衝撃が今も抜けないままだったので、片山さんの作品の中で見るのをすごく楽しみにしていたんです!

片山 そうだったんですね。

「雨の中の慾情」より、森田剛演じる伊守(左)と中村映里子演じる福子(右)

「雨の中の慾情」より、森田剛演じる伊守(左)と中村映里子演じる福子(右)

あいみょん 色気もあって、ああいう役のハマり方がすごいなと思いました。うまく表現できないんですけど。

片山 そうなんですよね、胡散臭くなりすぎないところもよかった。あと、僕が何かを言うのをニコニコしながら楽しみに待ってくれている感じがして。演技が好きなんだなと思いました。森田さんは存在感があるし、声もいいですよね。中村さんは「岬の兄妹」のオーディションに来たのが出会いなんですけど、そのときの演技がすごくよかったから、そのあと短編映画「そこにいた男」に出演してもらって、今回長編でようやくご一緒できました。

「雨の中の慾情」より、成田凌演じる義男(奥)と中村映里子演じる福子(手前)

「雨の中の慾情」より、成田凌演じる義男(奥)と中村映里子演じる福子(手前)

あいみょん 中村さん、素晴らしすぎました!

片山 色気がありますよね。

あいみょん めちゃくちゃあります。これからもいろいろな作品に出られるはずですが、その作品に合った色気が出せる人なんじゃないかなと思いました。

片山 微妙な表情もよかった。僕は、ラストシーンの振り返る顔がすごく好きで。

あいみょん あと滑稽な演技もできちゃう! 器用な方やなと思いました。

「何が自分らしいのかな」を意識して作った(片山)

──「岬の兄妹」「さがす」など過去の作品を踏まえて、あいみょんさんは「雨の中の慾情」に、片山作品の変化や進化は何か感じましたか?

あいみょん 片山さんの作品って、毎回違うから面白いのかなと思います。「次、何するんやろ?」と思わされる。今回は戦争もラブストーリーもやったし、あと何が残っているんやろうって(笑)。次への期待がさらに膨らみましたね。

片山 僕はできるだけ、以前作ったものとは違うものを作りたいと思っているんです。というのも、まだ「自分はこれだ」と言えるものや、向いているものがわかっていないから。わからないからこそいろいろ挑戦したい。そろそろ、自分らしさや作家性みたいなものは決めておかないといけないなと思っているんですけど……。そういう意味では、「雨の中の慾情」は自分らしい作品になったんじゃないかなと思います。今までは、助監督時代の経験も含めて、これまで受けてきた影響が大きく反映されていたのですが、今回はその影響をそいで、「何が自分らしいのかな」ということを意識して作ったので。

──ということは、本作は片山監督にとってこれまでとは違う立ち位置の作品に?

片山 そうですね。だから僕、この映画が大好きなんです。観るたびに泣きます(笑)。しかも毎回違うところで泣けてくる。僕が誰よりも義男の気持ちを理解しているんじゃないかな。皆さんにもそれくらい観てほしいですね。

「雨の中の慾情」場面写真

「雨の中の慾情」場面写真

「雨の中の慾情」場面写真

「雨の中の慾情」場面写真

あいみょん 私も自分の曲で、特にいいなと思った曲はめっちゃよく聴きます。年末になると、その人がサブスクで一番聴いたアーティストのランキングがそれぞれ出ると思うんですけど、私、1位が自分なんですよ。恥ずかしいのでスピッツということにしているんですけど(笑)。本当は1位が自分で、2位がスピッツです。まあ泣いたことはないですけど(笑)。でもそれだけ大事な作品だということですよね。気持ちはすごくわかります。

あいみょんさんに俳優として出てもらおうかな(片山)

──ちなみに、今後お二人が作品でご一緒するならどのような形で作品作りをしたいですか?

あいみょん いやー、片山監督の映画に主題歌はいらないので……。

片山 以前、仲野太賀くんと菅田将暉さんと演技されているのを見て、自然でいいなと思ったので、あいみょんさんに俳優として出てもらおうかな。

あいみょん いやいやいや! ドラマ「コントが始まる」のスポット映像ですよね? あれは本当に数秒だったし、2人とも友達だったので。演技、絶対にできないです! セリフを飛ばしまくって現場の空気を悪くするのが目に見えます。

片山 あいみょんさん主演で映画を撮る、という体制を取れば全然いけると思います。

片山慎三

片山慎三

あいみょん ちなみにどういう役が似合うと思いますか?

片山 探究心が強い役。

あいみょん 探究心が強い役!? 初めて言われました。ちなみにミュージックビデオを撮ったことってありますか?

片山 ないです。撮りたいです。

あいみょん えっ、それはやってほしいですね。撮ったことがないのであればなおさら。

片山 オファー、待ってます!

あいみょん あえてキュンキュンしたラブソングのMVを撮ってもらうのもいいかもしれないな。いろいろ想像が膨らみます。改めて今日はありがとうございました。また対談できて本当にありがたかったです。

片山 こちらこそ。5年ほど前に雑誌の企画で対談をさせてもらったんですが、そのときに僕、「曲が思い付かなくなったり、書けなくなったらという不安はないですか?」という失礼な質問をしてしまったんですが、そのときに「いや、ありません」とすごく力強く答えてくれて。実際にそのあとも曲を書き続けて、作品を出し続けているからすごいなと思っていました。これからも作り続けてほしいです。

あいみょん それはお互い様です。片山さんも撮り続けてほしいです。

片山 がんばります。

あいみょん ちなみに……「雨の中の慾情」の公開は11月29日ですよね。その次の日が私のデビュー記念日なんですよ。

片山 おお!

左から片山慎三、あいみょん

左から片山慎三、あいみょん

プロフィール

片山慎三(カタヤマシンゾウ)

1981年2月7日生まれ、大阪府出身。中村幻児主宰の映画塾を卒業後、ポン・ジュノや山下敦弘の現場に助監督として参加し、自費製作した「岬の兄妹」で長編映画監督デビュー。2019年3月公開の同作は全国6館から50館以上へ拡大上映され、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2018の国内コンペティション優秀作品賞と観客賞、第41回ヨコハマ映画祭の新人監督賞、日本映画批評家大賞の新人監督賞などに輝いた。主な監督作は映画「そこにいた男」「さがす」、ドラマ「連続ドラマW 東野圭吾 さまよう刃」「アカギ」など。ドラマシリーズ「ガンニバル」はアジア各国でヒットし、シーズン2の製作が決定している。ヨン・サンホが脚本と製作総指揮を担うNetflix「ガス人間」では監督を務める。

あいみょん

1995年3月6日生まれ、兵庫県西宮市出身。2015年3月に発表したタワーレコード限定シングル「貴方解剖純愛歌~死ね~」など、センセーショナルな世界観の楽曲でSNSを中心に話題を集め、2016年11月に1stシングル「生きていたんだよな」でメジャーデビュー。2018年に「NHK紅白歌合戦」に初出場を果たし、2019年2月には初の東京・日本武道館単独公演「AIMYON BUDOKAN -1995-」を弾き語りスタイルで開催した。2022年8月には4thアルバム「瞳へ落ちるよレコード」をリリースし、11月には地元である兵庫・阪神甲子園球場での弾き語りライブを成功させた。2024年9月に5thアルバム「猫にジェラシー」を発表。同月よりライブツアー「AIMYON TOUR 2024-25“ドルフィン・アパート”」を行う。