映画ナタリー Power Push - 「3月のライオン」

神木隆之介×有村架純インタビュー ワイルドな姉に弟は心が痛む!? 2人が明かすプロ意識と役への思い

香子を演じるのは怖かった(有村)

──有村さんは、これまでに見たことがないような気性の激しい役でした。香子を演じてみていかがでしたか?

有村架純

有村架純 難しかったです! 原作のファンの方がたくさんいらっしゃるのでどうやって香子を演じようかと緊張しましたし、すごく怖かったです。準備期間にできる限りのことを考えてやらせていただきました。声のトーンやしゃべり方を全部変えて、香子というキャラクターを作っていきました。

──監督からは「こんなふうに演じてほしい」というオーダーはありました?

有村 衣装合わせのときからずっと「ワイルドな感じで!」と言われていて、確かにそうだなって思いました。香子って強いだけじゃなくて本当はもろい女性なので、つんとつつくと崩れちゃいそうなバランスを演じるのが難しかったです。あとは後藤さんと零との関係性をどうやって表現しようかとすごく悩みました。

──神木さんは、有村さん演じる香子にどのような印象を抱きました?

「3月のライオン」より。

神木 本番中に嫌味をチクチク言われて、僕の心はけっこう痛みました。

有村 お芝居だから! でも、自分だけが気持ちよくなって独りよがりになっていないかな?といつも思っているんです。ちゃんと届いているかな?って不安になる。

神木 ほかの人のことを考えている余裕なんてないですよね。

有村 あははは(笑)。

香子にとって零は特別な存在(有村)

──零と香子は、血のつながっていない姉弟という関係性です。2人の距離感が絶妙でしたが、撮影のときは役について話し合いはされたのでしょうか?

「3月のライオン」より。

神木 前回(ドラマ「11人もいる!」)のときと違い、今回は僕が歳下の役なんです。零と香子は原作の中でも一番ふわふわしている関係で、恋人にも家族にも見えるし、やはり他人なんだなという印象もあったりして。有村さんとは「そこが零と香子の関係性の魅力だよね」と話していました。それにお互いにとって唯一相手の心の中を共有できるような関係でもあるから、あんなに零が(後藤正宗に)ぶたれようが何をされようが、香子は零の部屋に来て思いを吐き出していく。そしてそれを零が受け入れるという関係性は「歯車が合っているようで合っていない、合っていないようで合っているという感じだね」と話しました。

有村 香子は後藤さんが好きで一緒にいるんだけど、彼では心の穴が埋めきれないんです。その寂しさをぶつけられる唯一の相手が零だと思いました。だから香子にとって零は、自分の居場所を作ってくれるすごく特別な存在。

──共演シーンはシリアスな場面が多いですが、現場はどのような雰囲気でした?

有村 (神木が)枕の下に何か忍ばせているなあと思ってみたら、チョコレートが入っていたことがありました!

神木 僕が入れました(笑)。 みんなで食べたいなと思って。あとは監督や現場の人たちが温かかったよね。

有村 時間が空いたときは監督と3人でしゃべっていたよね。

神木 みんなでお菓子を食べたり(笑)。

宗谷さんは圧倒的な強さを秘めている(神木)

──本作では、零が個性豊かなキャラクターたちと関わり合いながらどんどん成長していきますが、それぞれもっとも印象深い人物は誰でしょうか?

神木隆之介

神木 宗谷(冬司)さんは、強いですよね……。僕のイメージですが、後藤さんと向き合ったときには、彼からの圧力が見えるんです。だけど宗谷さんは絶対に圧力がかかっているんだけど、それがどこからくるのかがわからなくて怖い。後藤さんは“パワー!”という感じがすごくするのですが。

──宗谷は佇まいは静かなのに、圧倒的な強さを持っているキャラクターですね。

神木 向き合ったときに、「この人には何もないのかな? でも勝てない」というような迫力が感じられるんです。零は彼に立ち向かっていきたいんだけど、たまにかわされる。不確かな存在なのに圧倒的だという、矛盾しているものが同居しているところが宗谷さんの魅力です。その雰囲気を出せる加瀬(亮)さんはすごいなと思いました。

有村 私も宗谷さんです。今、すべてを彼が語ってくれましたが……。

神木 気を使えなくてすみません!

有村架純

有村 いやいや、本当にその通りです(笑)。宗谷って足し引きを間違えるとただの空気のような存在になってしまいそうなところが難しいんですよね。加瀬さんが何を考えて現場に立っていたんだろうってすごく興味が湧きます。

神木 見るからに強いというわけではないよね。

有村 そうそう!

神木 マンガでもありますよね。本当に強い人とすれ違った瞬間にゾクッと背筋が凍る。それで最終的にはその人がボスだったというような。見た目は普通なんだけど強くて、「えっ? この人は何か違う」という感じがするんだよね。後藤は見るからに強いですよね。そういう強さをにじませないのに、圧倒的な感じを内に秘めているのが宗谷さん。

「3月のライオン」前編 3月18日 / 後編 4月22日より全国公開

「3月のライオン」
ストーリー

中学生でプロ棋士としてデビューした桐山零は、東京の下町に1人で暮らしている。孤独を抱えながら将棋を指し続けていた彼は、ある日近隣の街に住む川本3姉妹と出会い、ともに囲むにぎやかな食卓に自らの居場所を見出すように。そして零は、彼女たちの支えを胸に若手ナンバーワンを決める新人戦トーナメントへ飛び込んでいく。

スタッフ / キャスト

原作:羽海野チカ「3月のライオン」

監督:大友啓史

出演:神木隆之介、有村架純、倉科カナ、染谷将太、清原果耶、佐々木蔵之介、加瀬亮、伊藤英明、豊川悦司ほか

神木隆之介(カミキリュウノスケ)

1993年5月19日、埼玉県生まれ。1999年「グッドニュース」でドラマデビュー。2005年に主演作「妖怪大戦争」で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。「11人もいる!」「サムライせんせい」などテレビドラマで活躍する一方、「劇場版 SPEC~天~」「桐島、部活やめるってよ」「るろうに剣心 京都大火編 / 伝説の最期編」「バクマン。」「太陽」「君の名は。」などに出演。8月4日には「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」が公開される。

有村架純(アリムラカスミ)

1993年2月13日生まれ、兵庫県出身。「阪急電車 片道15分の奇跡」で映画初出演を果たし、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」で主人公の母親の少女時代を演じブレイクする。その後「ストロボ・エッジ」「映画 ビリギャル」などに出演。2016年には「アイアムアヒーロー」「僕だけがいない街」「夏美のホタル」「何者」が公開された。4月3日よりヒロインを務める連続テレビ小説「ひよっこ」が放送されるほか、8月26日に「関ヶ原」、10月に「ナラタージュ」の封切りを控える。

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2017年4月7日更新