コミックナタリー PowerPush - 相原コージ「Z~ゼット~」

ギャグの求道者が挑むゾンビホラー 大根仁が「なぜ今」の理由を聞く

「コージ苑」「ムジナ」で知られる相原コージが、4月26日に最新刊となるゾンビパニックホラー「Z~ゼット~」1巻を日本文芸社よりリリースした。折からマンガ界はゾンビものブーム。そんな中、なぜギャグ道を歩む相原までもがゾンビをモチーフとしたのだろうか。

コミックナタリーは長年にわたり「相原フォロワー」を自認する映像ディレクター・大根仁との対談をセッティング。「Z~ゼット~」に込められた真意と、あえて邪道を歩んできたようにも見える相原のマンガ家人生について話を聞いた。

取材・文・撮影/井上潤哉 編集/唐木元

 
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どうせ死ぬんだし、もう好きなことやろうっていう感じで(相原)

大根仁 たまたま別冊漫画ゴラクを読んでいたら「Z~ゼット~」の第1話に遭遇しまして、ちょっと驚いたんです。というのは、世代的に(相原さんの)デビューからずっと読んできまして、相原さんってジャンルを壊すというか、既存のものにちょっと違う視点を入れてみるような傾向があったと思うんです。

相原コージ。取材は相原の仕事場で行われた。

相原コージ ああ、そうですね。

大根 けどゾンビものって、ここ数年のマンガ界では乱発と言っていいほどよくあるジャンルじゃないですか。そこにあえて挑んでいった心づもりをお聞きしたいなと。

相原 やっぱりいままでは、基本的に人の描いてないものを描きたいなと思ってたんです。けどもう50(歳)になるし、いつ死ぬかわからないんで、どうせ死ぬんだしっていう感じです。

大根 来ましたねー、DS問題が(編注:DS=どうせ死ぬんだし)。

相原 確かにヒットタイトルも多いジャンルで、ちょっと抵抗はあったんです。けどもう、好きなことやろうっていう感じで描いちゃってるんで。(誰も)描いたことないものを描くぞっていう、いままでのこだわりはかなぐり捨てて。

大根 そのあたりが、肩の力が抜けてるというか、少し語弊があるかもしれないですけど、気負わず描いてらっしゃる感じですごくいいと思いました。

相原 あといったん仕事がなくなるっていう経験もあって、漫画アクション(双葉社)で「真・異種格闘大戦」が終わったあと、すぐ「次のやってよ」って依頼が来ると思ってたんですけど、そうならなかったんですよ。「なくなるんだな、仕事」って思って。そんなタイミングでゴラクさんが声を掛けてくれたので、ならもう描きたいもの描いとこうと。特に目新しいことをやってる気もないです。

「頭撃ったら何で死ぬんだろう」ってのはずっと疑問だった(相原)

大根 ゾンビ映画でいちばんお好きなのはどれですか。

相原 まあ「ゾンビ」ですね。ジョージ・A・ロメロ(監督)。やっぱりそこが最初だったんで、ダリオ・アルジェント監修版なのかな、音楽の激しいやつ、あれをテレビで観て。ロメロはゾンビ3部作(「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」「ゾンビ」「死霊のえじき」)全部好きですね。3部作は神です。その後のはそうでもないんだけど(笑)。

大根 それで言うと、「Z~ゼット~」は頭を破壊しても動き続けるのが目新しいのでは。

「Z~ゼット~」第2話より。始末したはずの死体に襲われるヤクザたち。

相原 そうですね。3部作は基本だと思うけど、ロメロ・ゾンビ原理主義者ってわけでもなくてロメロのころから、「頭撃ったら何で死ぬんだろう」ってのはずっと疑問だったんですよ。ゾンビって甦った死人なわけじゃないですか。だから人間みたいに動いていたとしてもやはりそれは死人なわけだから、もう一度死ぬっていうのが納得できなくて。脳みそ吹っ飛ばしたら死ぬっていうのは生き物っぽい感じがして、やや抵抗があったんですよね。だからもう何をやっても死なないほうが自然なんじゃないかなとは思っていて、それを描きたかったというのはありますね。ほんと、燃やして消滅させるくらいじゃないと。

大根 「バタリアン」でそんな感じありましたけど。

相原 あれはさらにゾンビを焼却炉で燃やしたら、その煙が地面に降り注いでゾンビが増えるみたいな。僕はそこまで考えてないですけど。

大根 僕は割合ゾンビ進化論を唱えてるので、まあオールドスクールなゾンビも好きですけど、いまの技術でどういう風にゾンビをアップデートさせるか? というところを考えてしまう。その点ではリメイクの「ドーン・オブ・ザ・デッド」は速いゾンビですけど、よくできてたなって気がするし、「28日後」「28週後」の全力疾走ゾンビもすごくいいなと思いますね。

相原 面白いですよね。ただ走るゾンビは腐ってるし硬直してるのに「なんで走れるのかな」っていうのは単純に(思ってしまう)。走るのが嫌いだっていうんじゃなくて、納得させてほしい感じです。

相原コージ「Z~ゼット~」/ 2013年4月26日発売 / 620円 / 日本文芸社
あらすじ

「コージ苑」「サルでも描けるまんが教室」「ムジナ」など、日本ギャグマンガ界の重鎮的存在である相原コージが、満を持して描くゾンビ・パニック・ホラー「Z~ゼット~」。

発生初期、発生中期、発生後期の3段階でストーリーは展開されるが、その構成は毎回バラバラのオムニバス。また、ゾンビ化も人間だけには留まらないし、細分化された肉体さえもゾンビとして襲ってくるという、まさに手の付けようのない状態。

一筋縄ではいかないゾンビ・ホラーの傑作誕生!!

相原コージ(あいはらこーじ)
相原コージ

1963年5月3日北海道登別市生まれ。日本デザイナー学院まんが専攻科卒業。1983年、漫画アクション(双葉社)にて「八月の濡れたパンツ」でデビュー。ギャグマンガの方程式を覆す革新的な手法に定評がある。1989年、ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて連載された竹熊健太郎との合作「サルでも描けるまんが教室」は、人気マンガの分析・パロディといった業界風刺的内容が話題を呼び、現在も根強い人気を誇る。また、ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて同じく竹熊健太郎とともに審査員を務めた「相原賞」は、榎本俊二やほりのぶゆきなど後に人気マンガ家となる新人を数多く輩出した。近年は「漫歌」「真・異種格闘大戦」「下ネタで考える学問」などを発表し、現在は別冊漫画ゴラク(日本文芸社)にて「Z~ゼット~」を連載中。2013年に画業30周年を迎えた。代表作の4コママンガ「コージ苑」は2013年4月より文庫化され、3カ月連続で刊行される。

大根仁(おおねひとし)
大根仁

1968年生まれ、東京都出身。演出家、映像ディレクターとしてさまざまなドラマやビデオクリップを手がける。代表作は「演技者。シリーズ」「週刊真木よう子」「湯けむりスナイパー」など。2010年夏に放送されたドラマ「モテキ」のヒットによりその名を広く知られるようになる。2011年、映画監督デビュー作となる映画版「モテキ」が公開され大ヒット。2013年1~3月には脚本・演出を務めたドラマ「まほろ駅前番外地」が放送され、深夜ドラマでは異例のギャラクシー賞を受賞した。先頃公開された監督第2作「恋の渦」が7月6日より渋谷シネクイントにてレイトショーで再上映される。