受賞後から1年以内の連載開始が目標
──今回は多くの賞にLINEマンガでの連載権か読み切りの掲載権が与えられています。受賞後、実際には連載、掲載までどのようなスケジュールで進んでいくのでしょうか。
受賞したことをお伝えした段階で担当編集と話していただき、どういう作り方が妥当なのか、週刊連載に向けてどういう形が望ましいのか、細かい認識をすり合わせます。LINEマンガには分業制スタジオもあり、線画、着色といった役割ごとに作家さんを紹介できる体制が整っていますので、例えば原作、ネーム、線画までは担当するけれど着色は誰かにお願いしたいというときには、こちらからも担当者を紹介できます。もちろんご自分でスタッフをお探しするのも問題ありません。話し合いを経て制作スタイルが決まれば作業に入って……基本的には受賞後1年以内には連載が開始できるようにしたいですね。
──1年以内の連載開始はけっこう早いほうですよね。
そうですね。制作作業をすべて自分でやるのか、分業にするかでも変わりますが、最初の準備には何かと時間がかかりますので。とはいえ、何年も作品を発表できないままだとモチベーションが下がってしまいます。作家さんそれぞれの事情を考慮して柔軟に考えますが、目標としては1年以内としておきたいですね。読み切りの場合は、受賞作品が読み切りであればそのまま掲載する可能性もあります。もっとクオリティを高めたいと作家さんが希望される場合は、担当編集と相談できます。読み切りは数カ月以内にLINEマンガに掲載できればいいですね。
──作品の告知活動にもサポートは入るのでしょうか。
はい。LINEマンガは編集部と電子書店としての部門を持ち合わせているので、読者に読まれやすいサムネイルの作り方や宣伝するときのコツまで、制作とプロモーションの両面で専門的なサポートができます。またどの賞をとっても担当編集が付き、デビューまでサポートしていくので、そこもポイントですね。
1人の作家が主導するwebtoonをもっと増やしたい
──「LINEマンガ webtoon大賞 2025」にはどんなジャンルの作品も応募できます。特に指定されようとは思わなかったのでしょうか。
LINEマンガに掲載されているwebtoonだとロマンスファンタジーやバトルアクションが人気で、これは読者からのニーズがあるものと言えますから、今後も積極的に狙っていきたいジャンルです。一方、LINEマンガの強みは多くのジャンルを取り揃えていること。ほかのジャンルのwebtoon作品も人気になってほしいという思いがあり、オールジャンルOKとしてます。
──webtoonで人気のジャンルは固まっている印象があります。
人気の出やすいジャンルはありますね。でもwebtoonが発展している韓国ではいろんなジャンルの作品が読まれているんです。LINEマンガでも同じように、幅広いジャンルのwebtoonをもっと世に出していきたいと考えています。
──分業制が一般的な制作スタイルなのも影響しているでしょうか。関わる人数が多くなるほど個性が薄れるというか。
はっきりしたことは言えませんが、1人の作家が制作全般を担当するwebtoonをもっと増やしていきたいとは思っています。そうすることで作家の伝えたいこと、描きたいことが強烈に宿っているようなwebtoonが増え、ジャンルの幅も広がるかもしれません。当然そのようなwebtoonは今でも作られてはいるんですけれど、もっと増やしていきたいと考えています。
求む、縦に読むwebtoonの特徴を生かした新たな表現
──では最後に応募者へのアドバイスをお願いします。
あくまで私個人の考えとして受け取っていただきたいんですが、作家さんのやりたいこと、作家さんができること、読者が求めてることの3つがバランスよくまとまっている作品は目に留まります。作家さんの「これが描きたいんだ!」という思いが一番にはなるんですけど、それが読者にどう見えるのかを少しだけでも意識した作品はいいなと感じますね。
──尖った作品は少数に刺さるかもしれないですけど大多数に届くかと言われたら難しいですし、広く狙いすぎても無個性になり読まれないでしょうから、なかなか大変ですよね。
ええ。あとはキャラクターがいかに立っているかも大事です。主人公に共感できるか、もしくは応援したくなる要素があるかは見ています。そして欲を言えば、縦に読むwebtoonの特徴を生かした新しい表現が見てみたいですね。webtoonは横読みマンガに比べて演出や構図の定番もまだ固まりきってないと思うので、チャレンジングなことをやっている作品があればうれしいです。
審査で重視するポイント、応募者へのアドバイス
T.Jun
──審査で重視するポイントは?
読者に新しい視点を与えられるストーリーにはいつも大きな力が潜んでいます。作画の完成度も大切ですが、作家自身の経験や想像力を感じられる世界観のある作品を期待しています。
──応募者に向けてアドバイスをお願いします。
10年以上webtoonを描き続けてきて思うのは、「続けること」こそが最大の力だということです。今はまだ小さな一歩でも、その積み重ねがきっと誰かの心を動かす物語になります。情熱を持って描く皆さんの作品を楽しみにしています!
プロフィール
T.Jun(テジュン)
喧嘩を題材にした、動画配信で成り上がる主人公を描く「喧嘩独学」のストーリーを手がける。同作は第25回文化庁メディア芸術祭・マンガ部門「審査委員会推薦作品」に選出。2024年にはアニメ化された。
yaongyi
──審査で重視するポイントは?
私は、作品を拝見する際、作者の個性と真摯さを最も重視しております。
ストーリーの完成度や作画レベルももちろん重要ですが、何よりも作り手ならではの視点と感情が込められた作品こそ、読者の心に深く刻まれると信じております。
自分ならではの世界観を持ち、心から語ろうとする情熱に注目したいと思います。
──応募者に向けてアドバイスをお願いします。
日本で私の作品にご声援をお送りくださる読者の皆様には、心より感謝しております。皆様の存在が、私にとって大きな励みとなっております。このたびのアワードにご出品される皆様には、ご自身が心から伝えたい物語を、率直な思いとして作品に込めていただければ幸いです。皆様ならではの視点と個性が盛り込まれた作品を心待ちにしております。
プロフィール
yaongyi(ヤオンイ)
代表作「女神降臨」は、メイクで変身した主人公を取り巻く三角関係と成長を描いた青春ラブコメディ。2020年に韓国でドラマ化、日本でも2025年に実写映画が二部作で公開された。
明生チナミ
──審査で重視するポイントは?
「作品を見てくれる読者さんの事を意識できているか?」と、「人を楽しませるサービス精神+自分の描きたいものを描けているかのバランス」です!
──LINEマンガでwebtoonを掲載・連載する利点はなんだと考えますか?
とにかく作品数が多くてたくさんの人が見てくれている環境がまず素晴らしいです! 活気がある場所で描くことが作家にとって喜ばしいことの1つだと思います。
プロフィール
明生チナミ(アキオチナミ)
豪商と呪われた令嬢のミステリーロマンスを描く、自身初のwebtoon作品「四度目の夫」をLINEマンガで連載中。同作にて、日本人初となる「2025 WORLD WEBTOON AWARDS」本賞を受賞した。
岩原裕二
──審査で重視するポイントは?
テーマや描きたいものが自然に理解できるかどうか。作品に没入できる絵やコマ割り、ストーリーの説得力。テンポ感など。
──LINEマンガでwebtoonを掲載・連載する利点はなんだと考えますか?
何よりフルカラーに仕上がること。自分だけでは手間がかかりすぎてできないことだし、色がつくことでより作品に説得力と没入感が出る。そこがよかった。
※編注:岩原裕二がLINEマンガで連載中の「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者」は、横読み用にモノクロで描かれた原稿を、LINEマンガ側でwebtoon形式に組み直し着色している。
プロフィール
岩原裕二(イワハラユウジ)
マンガ家、イラストレーターとしてさまざまな創作に携わる中、「クレバテス-魔獣の王と赤子と屍の勇者-」を2020年にLINEマンガで連載開始。魔獣と人属が織りなすハイファンタジーを描く同作は、アニメ化を果たし、第2期制作も決定している。
丘邑やち代
──審査で重視するポイントは?
数多くのwebtoon作品が作られ続けている中で、読者を惹き付けるテーマ性や個性があるかどうかは重要だと考えています。また、そのテーマや思いを作品の中でしっかり表現できているか、読者に伝わる描き方ができているかと言ったところにも注目したいと思います。
──LINEマンガでwebtoonを掲載・連載する利点はなんだと考えますか?
コメント欄があり、読んでくださった皆さんの感想が読めるところです。自分の作品がどのように受け止められているのか、読者の方が何を感じてくださったのかを直接知ることができるのは新鮮でした。時に厳しいご意見もありますが、作品作りの励みになっています。
プロフィール
丘邑やち代(オカムラヤチヨ)
突然のモテに戸惑う、プラスサイズ女子を描くポジティブラブコメディ「まぁるい彼女と残念な彼氏」の作画を担当。同作は2024年に「AnimationID」第1弾作品としてライトアニメ化を果たした。

