昭和・平成・令和の“神曲”を個性豊かな“ウタヒメ”たちが歌い継ぐ、メディアミックス音楽プロジェクト「ウタヒメドリーム」。2023年6月に本格始動し、カバー楽曲やオリジナル楽曲を公式YouTubeで公開しているほか、キャストの生歌を堪能できるライブも回を重ねており、さらにTVアニメ化も決定している。そんな「ウタヒメドリーム」の詳しい物語や世界観がいよいよ明らかになっているのが、コミックアース・スターで連載中のマンガ版。マンガはひよりりが手がけ、1巻が10月10日に発売された。
コミックナタリーではマンガ1巻の発売を記念し、主人公・夢咲いぶき役の山﨑玲奈、ウタヒメクイーン・桜木舞華役の鈴木杏奈にインタビュー。2年間の歩みを振り返りつつ、マンガ版で初めて知った新たなキャラクターの一面、同じ表現者として共感する場面、そして歌に向き合う中でのそれぞれの思いまで、たっぷり語ってもらった。
取材・文 / 柳川春香撮影 / 武田真和
昭和・平成・令和の神曲を歌い継ぐ、歌唱力・パフォーマンス力に優れた女性シンガー=“ウタヒメ”。各種グランプリ大会“ウタヒメドリーム”に参戦したウタヒメは、年間サーキットで歌とパフォーマンスを競い、頂点である“ウタヒメクイーン”を目指す。
17歳の夢咲いぶきは、いつかTOKYO歌劇団のステージで歌うことを夢見て、歌とダンスの稽古に励んでいた。しかし、夢への一歩となるはずだったTOKYO歌劇学園の入試の結果は不合格。歌の道を諦めそうになったとき、街中で偶然耳にしたウタヒメクイーン・桜木舞華の歌声に衝撃を受け、いぶきは「ウタヒメドリーム」の世界へ足を踏み入れる。
街中で曲が流れていると「この曲はこの子に合いそう」って
──まずはおふたりからご自身が演じているキャラクターをご紹介いただけますか。
山﨑玲奈 はい。私が演じる夢咲いぶきちゃんは新人ウタヒメなんですが、もともとTOKYO歌劇団に入ることを目指していたこともあり、歌もダンスもすごく得意な子です。一生懸命で、すごく真面目で明るくて、何事に対しても本当にまっすぐ努力し続ける。自分が声をあてていても、いぶきちゃんのまっすぐさと一生懸命さにすごく元気をもらえますし、私ももっとがんばらなきゃってパワーをもらえるような子ですね。
鈴木杏奈 私が演じる桜木舞華ちゃんは、「絶対的女王アニソンのウタヒメ」という肩書きを持つ女の子で、ウタヒメドリームグランプリ6連覇に挑んでいるところです。主人公のいぶきちゃんの憧れの存在でもあり、この作品に出てくるウタヒメの中でも、みんなから憧れられるような存在ですね。プライベートはまだ謎に包まれているので、作品が進むにつれて、舞華ちゃんの感情をもっと見られたらいいなと思っています。舞華はしっかり者に見えて、意外とちょっとドジな部分があるんじゃないのかなって私は思ってるんです(笑)。
──おふたりのほか、総勢8人のキャストで「ウタヒメドリーム」プロジェクトの活動を重ねてきましたが、この2年間はおふたりにとってどんな2年間でしたか?
山﨑 私は声優としてキャラクターを演じることが初めてだったので、最初はドキドキだったんですが、何もかもが新鮮で。いろんなことに挑戦させていただいた、すごく濃密な2年間でした。2年で4回もライブができたり、いろんな楽曲をレコーディングさせていただいたり、ボイスドラマもやらせていただいたり。それまで舞台で歌うことはあっても、レコーディングはなかなか機会がなかったので、1曲1曲に時間をかけて魂を込めるような作業が初めてで、すごく楽しいです。「ウタヒメドリーム」が始まってからはいろんな時代の曲を聴くようになりましたし、街中で曲が流れていると「あ、この曲この子に合いそうだな」「あの子に歌ってほしいな」とか思うようになって。
鈴木 めっちゃわかる! 私もテレビや街中で流れてる曲を聴いて「ウタドリのメンバーだったらあの子が歌ってそうだな」とかって思います。歌ってほしい曲をスマホにメモして、1回スタッフさんにリストを提出しました(笑)。
──「ウタヒメドリーム」はまだ2年とは思えないくらい、たくさんの曲を発表していますもんね。
鈴木 本当に。ライブをしていない期間も本当にレコーディングがたくさん入っていて、レコーディングがなくても生配信があったり、リリースイベントに行ったり、ひたすら桜木舞華として歌った2年間でした。歌が常に隣にある状態、歌とともに過ごした2年間だったなと思います。
杏奈ちゃんの歌を聴いたとき、本当にこんな感じだった
──そんな「ウタヒメドリーム」のストーリーや世界観が、今回のマンガでは明らかになっていきます。読んでみての率直な感想をお伺いしたいです。
山﨑 ようやくファンの方に物語を知っていただける機会ができたというのが、めちゃくちゃうれしいです。私たちは大枠の物語は教えていただいていたので、こういう感じなのかな?という想像を膨らませていざマンガを読んだんですが、1話の終わり方、衝撃的すぎて! 「え、こんなに悲しい場面で1話終わっちゃうんだ!?」と思って。夢と希望に満ち溢れたキラキラした物語だと思っていたので、いきなりいぶきちゃんがどん底から始まるというのがすごく衝撃的でした。
──これまでライブや楽曲で表現されてきた、明るくて天真爛漫なイメージとのギャップがありましたよね。
鈴木 やっぱり2年間演じてきているので、「あっこの子知ってる、この子も知ってる!」って、今まで見てきた子たちの物語が読めるというのがすごくうれしいですよね。あとは舞華が思ったより大きな存在で、その……ビビっています(笑)。
──ウタヒメの中でもクイーンですから、演じるのは相当プレッシャーがありますよね。「ウタヒメドリーム」のキャストさんは全員歌唱力が高いですが、その中でも一番でなきゃいけないという。
鈴木 ライブだと1人ひとりのウタヒメにフォーカスが当たるので、そこまで差があるイメージがなかったんですけど、いぶきちゃんから見た舞華って本当にすごい存在なんだというのを、マンガで読むとより感じますね。舞華の歌が街頭ビジョンで流れてて、通りかかった人が「あ、舞華だ」って言うような場面もあって、舞華ってこういう存在なんだな、本当に女王だって思われてるんだなっていうのがよくわかって。私ももっと舞華になれるようにがんばらなきゃな、聴いているお客さんにマンガと同じような反応をしていただけるように歌えるようになりたいなと思いました。
山﨑 いや、すでにもうクイーンです、本当に。私も杏奈ちゃんの歌を初めて聴いたとき、本当にこんな感じで。「何このめちゃくちゃ歌うまい方、誰!?!?」みたいな感じだったので。
鈴木 いやいや(笑)。あとさ、3話のオーディションのときに、いぶきが舞華の曲を舞華そっくりに歌うって場面があって。
山﨑 あった! 何の曲歌ったんだろう?
鈴木 めっちゃ気になるよね! いぶきちゃんと舞華は全然違う歌い方だから。
山﨑 私も想像できない。もしアニメで自分が歌うとなったら心配すぎる!
読んでて拍手しました
──楽しみですね(笑)。おふたりもいぶきのようにオーディションを受けた経験が多々あると思いますが、特に共感した場面はありますか?
山﨑 いぶきと友達の悠が一緒にTOKYO歌劇団の入試を受けて、悠だけが受かって、いぶきが送り出すシーン、死ぬほど共感しました。自分もけっこう強がっちゃうタイプなので、友達が受かって自分が落ちちゃったら絶対そうするなと思って。「私は大丈夫だよ、がんばってね!」みたいに言って、門が閉まった瞬間に「ウエエエン!!」ってなるタイプ。
鈴木 ここ、去っていく場面に3コマ使ってるんですよ。めっちゃ切ない……。仲いい子が受かったら、その場で「悔しい!!」とはならないじゃないですか。「よかったね、がんばってね」ってなるけど、やっぱり悔しいっていう思いはあるよねって。その後にいぶきちゃんが泣いてるシーンを見て、これはもう、玲奈ちゃんの声がついたらみんな泣いちゃうんじゃないかって思いました。でも、いぶきが何回も挫折してもがんばってるからこそ、私たちも諦めずにがんばらなきゃなって思いますし、応援したいという気持ちで読んでましたね。
──まさにそのシーン含め、山﨑さんはマンガ冒頭をボイスコミックで演じられましたが、これまで見たことがなかったいぶきちゃんの一面を演じてみていかがでしたか?
山﨑 早速壁にぶち当たったというか……やっぱり今までライブとかで作り上げていたいぶきちゃんとは全然違った姿なので、すごく難しかったです。でもアフレコ当日は奈緒ちゃん役の伊駒ゆりえさん、悠ちゃん役の古賀英里奈さん、お母さん役の下屋則子さん……ボイスコミック版のキャストの皆さんの演技が本当にすごくて、自然にいぶきちゃんの気持ちになれました。これがアニメになったら切なすぎてセリフが言えなくなるんじゃないかとか思うくらい、自分で演じていても本当に切なかったです。いぶきちゃんはまだ落ちてばっかりなので、早く受かりたいです(笑)。
──応援したくなるキャラクターですよね。ほかにマンガでおふたりの好きな場面はありますか?
鈴木 私、2話でウタヒメが1人ずつ紹介されていく場面が好きです! まだあんまり知らないウタヒメもいて、きっと強敵がいたりライバルがいたりするんだろうな、どんな子なのか気になるなあって。これからこの子たちの物語も始まるんだってワクワクしたシーンでした。玲奈ちゃんは?
山﨑 好きな場面、いっぱいあるんですよねえ……! すごく個人的になんですけど、羽暮コーチに拾ってもらえる瞬間、めっちゃうれしかったです(笑)。
鈴木 「ちょっと待った!」のところね。
山﨑 読んでてもう、拍手しました(笑)。オーディションに落ちるところも自分のことのような気持ちで読んでいたので、「ありがとうございます。私を救ってくれて!」って、すごくうれしかったですね。
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ウタヒメの個性、私の個性