ウタヒメの個性、私の個性
──その羽暮コーチですが、舞華そっくりに歌ったいぶきに対して、「観客たちはウタヒメの『個性』を求めている」と指摘しますよね。「ウタヒメドリーム」は実際カバー曲を歌うことが多いですし、その中でキャラクターを演じつつ自分の歌に個性を持たせるって、すごく難しいことじゃないかなと思うんです。
山﨑 そうですね。カバー曲がモノマネになっちゃうと自分の色がなくなっちゃいますし、カバーをするなら、やっぱり“この人にしかできないカバー”みたいなものを目指したいなって気持ちは当初からあったので、その個性を出すという部分は私もすごく苦労しました。それで、どうやって個性を出したらいいんだろうって考えていったときに、私は今まで舞台を中心にやってきたので、1つひとつの曲の物語性を大事にする方向にしようと決めて。表情だったり動きだったり、1曲1曲の物語性をいぶきちゃんというキャラクターで表現していけば、カバー曲もできる限りモノマネにはならずに、皆さんにお届けできるんじゃないかなと、そこはすごく今でも意識して歌っていると思います。
鈴木 「ウタドリ」のキャストさんは本当にみんな個性があって、カバー曲だったとしても、自分の曲に染め上げてしまうような力が歌にあるので、同じ曲でも別のウタヒメが歌ったら、まったく違う雰囲気になるだろうなって思いますね。
──声優・俳優・歌手問わず選ばれたキャスト陣ということもあり、まさにそれぞれのバックグラウンドも含めて歌の個性につながっているんだろうなと感じます。鈴木さんは2018年にアニメソングのオーディションでグランプリを獲得されたり、ご自身も歌手としてアニメソングを歌われていて、舞華とも近いところがあると思うのですが、これまで“歌の個性”で悩んだことはありますか?
鈴木 私は小学1年生から6年生まで演歌を習っていて、小さい頃は演歌と歌謡曲しか歌ってこなかったので、中1くらいでアニソンを歌っていきたいってなったとき、何を歌っても演歌っぽさが抜けないということに悩んでいたんです。自分だと全然わからないんですけど、ほかの人からは「アニソンなのに演歌みたい」って言われたりして、ずっとそれを悩み続けて、中学生の頃はなるべく癖をなくそうとしてました。でも、だんだんそれが自分の個性なんじゃないかって思い始めてきて。演歌をやってない人だったらやろうとしても難しいことが、もしかしたら自分は自然にできているのかもしれない、って。
──演歌をやってきたからこそ身についている技術も絶対ありますもんね。
鈴木 そうですね。例えば演歌はビブラートの波がすごく深くて、昔はそれをなくそうとしてたんですけど、「いや、もうそれは自分の個性だ」って思うようにして、アニソンを歌う時でも、あえてビブラートの波を深くしてみたりとか。もちろん浅いほうが合う曲のときは浅くするんですが、舞華ちゃんは割と重ためのカッコいいアニソンを歌うことが多いので、こういうビブラートも合うんじゃないかなと思って、あまり自分の個性を消さずにそのまま表現できたらいいなと思って歌っています。
読者に最初に聴いてほしい1曲は?
──では、今後のマンガでこんな展開が見てみたいな、こんな姿が見てみたいな、という希望は何かありますか?
山﨑 キャストさんたちはすっごく優しい方たちばかりで、現実では絶対にありえないので、逆にマンガの中でピリピリしてるところが見てみたいです(笑)。同じウタヒメクイーンを目指すライバル同士として、ちょっとバチバチし合うところとか。
鈴木 見てみたい!(笑) 舞華は不器用そうだから、AYUNAに「ちゃんとしなさい」とかって叱られてほしい。それで舞華がおどおどしてるシーンを見たい(笑)。
──今お話に出た通り、キャストの皆さんもすごくアットホームな雰囲気で姉妹みたいだなと、先日の4thライブでも感じました。
山﨑 2年経って愛情と仲がもう、深まる一方で! みんな大好きですし、キャストさん同士だけじゃなくスタッフさんもすごく優しくて、自分もとても過ごしやすいですし、歌いやすいです。本当におうちみたいな感じで、すごくのびのびやらせていただいてます。
鈴木 玲奈ちゃんが真ん中にいるからこそなんですよ。こんなに太陽のような、のびのびしてる玲奈ちゃんがいてくれるから、みんな「かわいいねかわいいね」って(笑)。
山﨑 勝手にのびのびしてたのかもしれない(笑)。
鈴木 本当に明るくて元気で、場を明るくしてくれる子なので。玲奈ちゃんがいるとみんながまとまるというか、みんなが玲奈ちゃんを支えつつ、玲奈ちゃんが引っ張ってくれている感じがします。
──4thライブは昼夜でまったくセットリストが違っていて、全曲生演奏で、衣装もくるくる変わって、情報量がすごかったですね。
山﨑 今までで一番忙しかったライブでしたね。準備もすごく大変でしたし、本番もひたすらみんな楽屋で新曲を聴きながら振りをやって。でも、今までのライブで一番盛り上がったんじゃないかなと。昼夜合計で40曲ぐらい新しい曲をお披露目できたのはうれしかったです。
鈴木 今回「唱」だったり、玲奈ちゃんと、萩原ひまわり役の倉知玲鳳ちゃんと3人で歌った「メギツネ」だったり、舞華としてはこんなに踊ったことがなくて、振り入れのときからひいひい言ってました。衣装も「この曲は絶対にこの服だ」っていうのがあって、2着の衣装を交互に着替えたりするんですよ。あんまりそんな着替え、したことがない(笑)。ダンサーさんもけっこうな曲数入ってくださって、バンドの皆さんもこんなに大量の曲を弾いてくださって、皆さんに支えられてできたライブなので、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
──このマンガをきっかけに、ウタヒメの曲を聴いてみようと思う方もいると思います。最後にそんな人に向けて、最初に聴いてほしい1曲をそれぞれ教えてください。
山﨑 ああ、難しい! 難しいけど、私がいぶきちゃんを一番知ってもらえるなって思う楽曲は、「僕が一番欲しかったもの」。温かくてまっすぐ生きているいぶきちゃんにぴったりな曲だなって思っていて。ウタヒメとして歩き出したいぶきちゃんがいろんなウタヒメと出会って、最後に自分らしさを見つけるというような、そんなふうに捉えて歌ったので、マンガでいぶきちゃんの魅力を知ってくれた人に、さらに深めていただけたら。
鈴木 これが舞華の代表曲って私が思ってるのは、「AMBITION」。これは舞華のために作っていただいたオリジナル曲で、“ザ・アニソン”という曲調ですし、ライブでもすごく盛り上がる楽曲なんです。名刺代わりになる曲だと思うので、桜木舞華がちょっと気になるなと思ってくれた人はこの曲を聴いてくれたら、舞華ちゃんがどんな曲を歌っているのか、彼女の「絶対的女王アニソンのウタヒメ」感を、感じていただけるんじゃないかなと思います。
プロフィール
山﨑玲奈(ヤマサキレナ)
2007年1月28日生まれ、愛媛県出身。ホリプロ所属。2018年、ミュージカル「アニー」で主役を務める。2020年12月、「第44回ホリプロタレントスカウトキャラバン」でグランプリを獲得。主な出演作にミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」リン役、ブロードウェイミュージカル「ピーター・パン」11代目ピーター・パン役、ミュージカル「聲の形」西宮硝子役などがある。
山﨑 玲奈(やまさき れな) | ホリプロオフィシャルサイト
山﨑玲奈(RENA YAMASAKI) (@RenaYamasaki) | X
鈴木杏奈(スズキアンナ)
2003年12月5日生まれ、栃木県出身。エイベックス・ピクチャーズ所属。テレビ東京系「THEカラオケ★バトル」に小学5年生で初出演し、U-18四天王の1人として活躍。2018年には「アニメソングを歌って夢のANIMAX MUSIXのステージで歌おう!」オーディションに優勝する。2019年、「IDOL舞SHOW」の百合ヶ丘みさき役で声優デビュー。2021年にTVアニメ「ワッチャプリマジ!」で心愛れもん役を務めるとともに、同作のオープニングテーマ「Dreaming Sound」でアーティストデビューを果たした。


