原作者・小島アジコ インタビュー

若手俳優にとって「縁起いいタイトル」と認識されてるらしい

──お忙しいところ時間を作っていただきありがとうございます。スカイプ・インタビューということで慣れない点もあるかと思いますが、よろしくお願いします。

はい、よろしくお願いします！

──最初、実写化第2弾決定です、みたいな話が来たときには、どう思われましたか。

正直、なぜ今？ というような感じでした。前回から時間も経っているし、話題になった旬みたいなのも過ぎているし。

──けっこう冷静に受け止めたわけですね。なぜこのタイミングなのか、という説明はあったりしたんですか？

どこまでお話していいのか微妙ですが、前回のチベくん役を演じてくださった瀬戸康史くんが、801ちゃんに出たあと、ライダーに決まるわ、大河ドラマに出るわとすごい出世なさったので、どうも若手俳優にとって「縁起いいタイトル」みたいに認識されてるらしいんです。

──じゃあ主役男優の出世ルートとして（笑）。

ゲン担ぎで「801ちゃんもう一度やるか」みたいのがあったのではないかと。憶測ですけど（笑）。

──撮影には立ち会われたりしましたか？ ネットでは第1弾にはカメオ出演されているような噂もありましたが。

それ、都市伝説です。出演してませんので。

──あ、そうだったんですね。

はい。今回は撮影も見てないんですが、脚本を見せてもらったあと、撮影の前に顔合わせをしておきたいということになって、1度、主演の2人にお会いしました。

「本当にあまり目を合わせてもらえないんですね！」って

──近江陽一郎さんと広澤草さんに。小島さんはおひとりですか？

いや、801ちゃんと一緒で。だから多分、ごあいさつ、ということ以外に、近江くんにチベくんの雰囲気や801ちゃんとの関係性を掴んでもらう、という意図が大きかったような気がします。

──なるほど。役作りのための本人取材でもあったわけですね。近江さんはどんな印象でしたか。

（第1弾でチベくんを演じた）瀬戸くんとは違うタイプのイケメンなんですが、キラキラとしたオーラがすごくて、リア充というか、屈託がないというか……。顔合わせの際、あまりにキラキラしてて目を合わせられなかったんですが、そしたら「本当にあまり目を合わせてもらえないんですね！」って（笑）。

──ズバリ言われてしまった（笑）。

でもそのあと、「でも、ときどきちゃんとこっちを見ていてくださって、ありがとうって思いました！」とも言ってくれて。危ういくらい屈託のない人だと思いました。

──自分役を演じる俳優さんと会うって、どんな感じですか。

ええと、そもそも自分とは全然違うイケメンが自分の役をするというのが、違和感と言うか、申し訳ないという気持ちが大きいので。できれば早く瀬戸くんと同じように出世して、黒歴史として経歴から削除していただければと思います（笑）。

──近江くんからは何を聞かれましたか。

普段の暮らしぶりとか、2人の普段の感じが見たいと。なんかすごい熱心な方で、BL読んだりして、役作りの勉強をしてるみたいでした。801ちゃんは「BL読むのだけはやめてー」って、笑顔がずっとひきつってました。

──ははは。

ほんとうに天真爛漫で……。801ちゃんはあとで、9月25日の日記みたいな感じで、近江くんファンから責められたようです。「私たちのサンシャイン（ファンからの愛称）に何てもん読ませやがったんだ」って（笑）。

──普段の感じって、どんな風に説明したんでしょう。

なんか、ごはんとか出掛ける先の話とか、仕事の分業の話とか部屋の片づけの話とか日常の話をして、そのたびに自分が801ちゃんに突っ込まれるという。それを近江くんが「ほんとに突っ込み入れるんですね！」ってキラキラと見てて。

マンガとして圧縮する前のやりとりからリアリティが

──もう少し具体的なエピソードとか聞いていいですか。

あんまり細かいとこまで覚えてないんですけど、本で部屋が片付かないとか、外に出掛ける時にチベくんが服装に頓着しないとか、髪を切るときにQBに行って怒られたとか（笑）。多分、話した内容はサイトや単行本で書いてることなんですが、それを嫁側から感情を込めた会話で聞くと、多分また別のリアリティが。

──別のリアリティというのは？

4コマに収めるときに、マンガとしての切れ味とか速度を出すために、細かい感情の動きをカットしてる部分が多いんですが、そのせいで801ちゃんが理不尽に切れてるように見えたり、チベくんが本当に変人に見えることがあると思うんです。でも実際はそれぞれの価値観がある普通のグダグダな話のわけで。

──マンガでは省略されてる部分まで観察できたわけですね。

QBの話にしても、自分としては6000円かけてちょっと遠くの腕のいい美容師のところに行くよりは1000円で済まして、その時間とか手間とかお金とかを別のことに使いたいわけです。どうせほとんど家から出ないわけだし。でも配偶者としては、6000円で1カ月それなりに見えるんだったら安いものだし、お出かけで自分の隣にいる人間にはそれなりの身だしなみをしてほしいし、自分のことをどうでもいいと思ってるからそういう考えになるんじゃないか、どうなんだ言ってみろっていう話になるんです。

──すごくスタンダードな、カップルのいさかいですよね。価値観の相違による。

まあ、それを圧縮して4コマにしてるわけですが、その圧縮前の状態をお見せしたと思います。

──801ちゃんにやりこめられてる小島さんを見て、「これは演技の参考になるぞー」って。

ええ、多分（笑）。

──では、そんな顔合わせが実を結んだかもしれない実写化第2弾について、見てみようかなーと思っているファンにメッセージを。

はい。僕はまだ完成品は見てないんですが、部分的に届けられたものを見た限りで言うと、まず監督の寺内さんが、前回のあと数多くの作品を手がけられたせいでしょう、実写ドラマ化の腕が前回から相当上がられているということがはっきりわかる出来で。

──第2弾ならではのレベルアップが体感できるような。

はい。あと801ちゃん役の広澤さんもとてもかわいらしくて、また2回目ということで役が非常にこなれていました。そして近江くんはヘタレ感と、一方で毅然とした愛情の両立を心がけたとおっしゃっていて、まさにそんな感じでしたね。とてもよい出来のものになったと思いますので、ぜひご覧いただければと。