コミックナタリー PowerPush - 松江名俊「トキワ来たれり!!」
「史上最強の弟子 ケンイチ」の松江名俊、最新作! “全部やることにしました!”の学園バトル誕生秘話
テーマは「擬似家族」
──2巻ではいよいよ1人ずつのキャラクターが掘り下げられて、どういう人間なのかがわかってくるのが最大の見どころかと思うんですが。
そうですね。みんなが1つの家に集結して、家族のようなものを作る。この作品のテーマは「擬似家族」でもあります。
──「擬似家族」と言いますと。
今は、家族の縁というものが薄くなり、それが正しい価値観であるという風潮の時代になりつつあるかと思うんです。そんな中で自分がいるコロニーが学校だけとか、LINEだけとかになってしまい、ソーシャルネットワークの中で無視されたらそれで人生がおしまい、とならないようにするにはどうしたらいいのか? おそらくそのためにはコロニーを1つだけせずに、部活でも趣味でもなんでもいいから、擬似家族と呼べるようなコロニーを何個も作っておくことが大事なのではないかと。
──松江名先生が感じられた、現代特有の雰囲気や要素も加味されている。
ええ。今までになかったツールが登場して、自分が何か言ったらそれが一生残る、みたいなシステムに世の中が変わってきています。例えばネットでの友達関係が自分の世界のすべてだったら、そういうときに戦いようがないし逃げ道もない。だから、むしろこれからの世代こそ実際に会って、顔を見て話せる友達をたくさん持つことが大切ではないでしょうか。本当なら子供に、確固たる生き方のお手本が見せられたらいいんですけど……確実な答えは常に存在しないですから。
──先生はマンガの役割として、そういうことも考えているんですね。
もちろんマンガを読んで、ただただ楽しんでもらうことが一番なんですけど。マンガは学術書ではないので、一生懸命読んだってしょうがない(笑)。ただせめて楽しむ以外に何か1つでも、人生に役立つことが拾えるなら、そのマンガはすごく幸せな作品なんじゃないかとは思っています。
つらいけど、楽しいから大丈夫
──ちなみに松江名先生の単行本といえば、カバーを取ったところにあるイラストも楽しみの1つですが。
2巻ではカバーを外した単行本の表紙に、“世界の真理の1つ“が描いてあります(笑)。コイン使いのソーサリアンが見せる、世界の真理が……。
──おお、それは気になりますね。また初版限定で、カバー自体の裏面にイラストが描いてあるのも「ケンイチ」以来おなじみです。
カバーの裏面って、マンガの単行本の中で一番面積が広い部分なんですよね。ここに何も印刷しないっていうのは紙に対する冒涜だと、初代担当に食いつきました(笑)。
──ああいったサービス精神は松江名先生ならではといった感じですね。吉祥寺駅で限定のマンガを連載する「日刊トキワ来たれり!!」にも驚かされました。(参照:「ケンイチ」の松江名俊、吉祥寺駅の壁でマンガ連載!最新作1巻発売記念)。
あれは以前「ケンイチ」のときにも、アパチャイが兼一を渋谷で蹴っ飛ばして吉祥寺まで飛んで行くっていう企画がありまして、そこからの派生です。あまりお金をかけず、かつ迷惑もかからない形で何かできないかということで(笑)。まあ単行本のPRだということはあまり意識せずに、ワイワイ楽しく見ていただけたなら幸いです。
──週刊連載をしながらそういった企画もこなされるのは、相当ハードな日々ではないかとは思うんですが。
はい、昔から常につらいです……しかし、楽しいから大丈夫です!(笑)マンガを描くのが本当に楽しいというのが私の最大の武器じゃないかと思っていますので、これからも苦しんで、かつ楽しんで描き続けるでしょう。
松江名 俊(マツエナ シュン)
2月11日生まれ。東京都出身。血液型A型。「騎士と旅人」がまんがカレッジ佳作に選ばれ、サンデー増刊に掲載された「バルハラの門」でデビュー。少年サンデー超で「戦え!梁山泊 史上最強の弟子」を連載後、週刊少年サンデー本誌(ともに小学館)にて「史上最強の弟子 ケンイチ」を長期連載。2015年現在、同誌で「トキワ来たれり!!」を連載中。