アニメ会社のトムスが“IP創出”を目指す「原作工房TMSLab」日本のマンガ・アニメ業界の新たな試みを編集長が語る (2/2)

ちょっと読んでみたい「ありそうでなかった」を探して

──Web連載をまとめた電子コミックス5作が8月10日に発売されます。それぞれ、どんなところが魅力でしょうか。

「美女と野獣の死亡フラグが立っている悪役に転生したけど、魔法使いと恋に落ちそうです!?」は、いわゆる転生モノと悪役令嬢モノのミックスなんですけど、世界中の人に知られている「美女と野獣」をベースにできないかなと思って作った作品ですね。

「美女と野獣の死亡フラグが立っている悪役に転生したけど、魔法使いと恋に落ちそうです!?」より。

「美女と野獣の死亡フラグが立っている悪役に転生したけど、魔法使いと恋に落ちそうです!?」より。

「美女と野獣の死亡フラグが立っている悪役に転生したけど、魔法使いと恋に落ちそうです!?」より。

「美女と野獣の死亡フラグが立っている悪役に転生したけど、魔法使いと恋に落ちそうです!?」より。

──転生モノというといわゆるゲーム的な異世界に転生するパターンが王道なので、過去の名作に転生するって珍しいなと思いました。

ありがとうございます。これはどんな編集部でも考えていることだと思いますが、ありそうでなかったと思えるものが、コンテンツ好きな人が読んでみたい作品だと思うんです。「ワンハン部 それ100均でやろう!」も同じ発想で、よくある女子高生の部活モノなんだけど、100均グッズをテーマにしたマンガって意外とないなーと思って作りました。「ハムカツっ」は、やっぱりマウス系のキャラクターIPって世界中で鉄板なんですよね(笑)。トムスでも以前「とっとこハム太郎」のアニメを制作していて、それで小動物系IP作りたいねって部内でリサーチしていたときに「ハムスター動画がバズってます」って部員が提案してきて。そこから“ハムチューバー”って言葉を思いついて、動画配信しているハムスターたちのギャグマンガを作りました。

「ワンハン部 それ100均でやろう!」より。

「ワンハン部 それ100均でやろう!」より。

「ハムカツっ」より。

「ハムカツっ」より。

──その一方で、西島大介さんのような個人作家性が強い方がいるのは意外でした。

「コムニスムス」はもともと西島さんが描いてきたシリーズの新作ですが、こちらは先程の“全部やりたい”という才能と個性を応援する企画で、国内だけじゃない可能性を模索しています。またその一方で、西島さんの描くキャラクターの造型は、めちゃかわいくて世代を問わず愛されるアイコンとしての魅力を秘めているので、その“得意”を活かしたIP創出にも取り組んでいます。SAAさんの「宇宙少女漂流記 THE ONLY WAY HOME」はメディアミックスのピースとして仕込んでいる作品で、実は別視点からの映像企画を進行しています。

「コムニスムス」より。

「コムニスムス」より。

「宇宙少女漂流記 THE ONLY WAY HOME」より。

「宇宙少女漂流記 THE ONLY WAY HOME」より。

──いろんなジャンルの作品が載っているレーベルですね。

第一に原作を生んで育てていくことを目的にしているので、生まれる場所としてのジャンル縛りはやめようと思っています。もちろん作品を育てるのは編集の責任なので、例えば「美女と野獣の死亡フラグ~」だったら、ファンタジー好きの女子と相性がいいから、電子書店の中でもファンタジー系が強いストアさんと一緒にブランディングしたり、「ハムカツっ」ならVTuberの会社さんと一緒に、“ハムチューバー”をリアルに実在させる仕掛けを始めたりと、生まれたIPの個性に合わせた育て方を実践し始めています。ユーザーさんからもっとこうしてほしいという意見があれば、それをフィードバックしていきたいですし、作品ごとの個性を伸ばしていけば結果的に面白いIPが育つんじゃないかと。どっちにしても一次創作なので人工的にムーブメントを作っていくというより、まず世の中にある潜在需要を作品という形で顕在化していくところからですよね。

──今後の新連載などは、どんなものが?

ちょうど8月10日から「ラブコメと怪獣退治の不文律」という新連載が始まります。これは、小動物系の女子高生が、昭和にタイムスリップして怪獣退治をさせられるというSFコメディで、それがどんな不文律によってラブコメになるのか、をぜひ読んで確かめてほしいです。少し不思議でアニメっぽい少年マンガなので、より多くの方に楽しんでいただけると思います。今後もジャンルをミクスチャーした新規作品がコンスタントに出ていきますので、どの子も仲良くしてくれたらうれしいです。

作家さんの強いところ、光るところを一緒に探すマンガ賞

──では漫画大賞についても聞かせてください。総合部門もありますが、シーンだけで応募できる「テーマ部門」は新しいなと思いました。

マンガを最初に描くときって、例えばボクシングマンガが描きたかったら試合のシーンだけ描くじゃないですか。だってそこが描きたくてマンガを描き始めるから。だから男子はバトルシーンしか描かないし、女子は告白シーンしか描かない(笑)。実際にマンガを作ってみるとわかるんですけど、一番おいしいシーンに持っていくまでの構成を考えるのが一番大変で、バックボーンやキャラクターを作るなど、やることが多いんです。だからそこにたどり着くまでにくじけちゃう人もけっこう多いんですよね。

──以前、マンガ家さんから1話の中で描きたいシーンは数コマしかないって聞いたことあります。あとは全部苦痛だと。

(笑)。だからこそ、その人の“得意”を見つけるうえでは、描きたいシーンだけ描いてもらったほうが才能を顕在化しやすいかもしれない。アニメやゲームの世界では、「これだけをやらせたらすごい」っていう人が活躍しているケースも多いです。そういう意味でも強いところ、光るところをいち早く見つけて伸ばしていくことができたほうがいいなと思っています。もちろん万能型のマンガ家を目指すなら段階的に不得意なことを克服していくことにはなりますが、いきなりオールラウンダーである必要はないかなって。一度ハードルを低くしてみようと思って、こういうテーマ賞を作りました。

──実際に、応募者からの反響はいかがですか?

ありがたいのは、専門学校とか美大の先生から「授業の課題に使っていいですか」っていう問い合わせがいくつか来ていて。学生さんだとマンガを1本仕上げられるスキルのある子はなかなかいないけど、このテーマならうちの生徒でもいけるかもしれませんって。こういうところから未来に花開く才能が芽を出すといいな、と思ってます。あ、現役の作家さんからも「日頃のストレス解消に出してもいい?」と言われたりします(笑)。

──(笑)。では総合部門では、どんな作品を求めていますか?

「総合部門」では、作品の“発展性”を見るとご説明していますね。IPの種になるような作品に広がっていく要素があるのかを探しますと。それこそ役者の卵を見るような、この子は俳優にもなれるかもしれないし、バラエティタレントになれるかもしれないし、歌手になれるかもしれない、そう思えるのも大事なことですから。もちろんそういうのを通り越して面白いマンガに仕上がっているのが一番すごいんですけど、発展する可能性を見つけたらちゃんと評価します!というのが「総合部門」です。

──最後に、TMSLabに興味を持った人へのメッセージをお願いします。

お客さんに対しては、TMSLab自体はIP創出スタジオであり、生まれたIPを育てていく小さなタレント事務所のように見ていただけるとうれしいです。事務所も所属IPもまだ生まれたてでよちよちしていますが、新連載含めて今年来年いろいろと仕掛けていくので、よかったら味見しに来てください! 新人作家さんは、強みを探して、伸ばすことができる場所を作ったので、将来に迷っている人にこそ来てほしいです。中堅、ベテランの作家さんもご自身の可能性を別視点から広げたいと思われている方とは相性のいい場所なんじゃないかなと思います。すでに特化型のアニメ、ゲームクリエイターの方は、ゲーム、アニメに発展できる原作設計からご相談にのりますのでぜひご一報ください。

──ロングインタビューお疲れさまでした。

ありがとうございます。いっぱいしゃべってHPが5くらいしか残ってないので、今日は早退しますね。

小澤繁夫氏

小澤繁夫氏

プロフィール

小澤繁夫(オザワシゲオ)

複数の出版社を経て、週刊ファミ通副編集長、オトナファミ、エンタミクス(KADOKAWA)等メディアブランドを事業責任者として立ち上げる。現在は株式会社トムス・エンタテインメント執行役員、セガサミーホールディングス株式会社・IP事業推進部部長、JadeComiX株式会社・取締役を兼任。

「原作工房TMSLab」連載作品

「美女と野獣の死亡フラグが立っている悪役に転生したけど、魔法使いと恋に落ちそうです!?」
漫画:生倉大福 原作:にゃいす 企画:TMSLab

「美女と野獣の死亡フラグが立っている悪役に転生したけど、魔法使いと恋に落ちそうです!?」漫画:生倉大福 原作:にゃいす 企画:TMSLab

「美女と野獣の死亡フラグが立っている悪役に転生したけど、魔法使いと恋に落ちそうです!?」漫画:生倉大福 原作:にゃいす 企画:TMSLab

呪いの魔法は、恋で解く。

夏の日のうっかり事故で、誰もが知っている『美女と野獣』の世界に転生した私。与えられたポジションは死亡確約の悪役。フラグ回避するには、この世界の“美女”と“野獣(もふもふ)”を最速でハッピーエンドに導くしかない! そんな私の前に現れたイケメン魔法使い。何かとワケアリな彼と協力していくうちに距離が縮まって…恋の予感!? 強い明るい不器用主人公が奮闘する、新ジャンル“名作転生”恋愛ファンタジー!

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「ラブコメと怪獣退治の不文律」
漫画:御池慧  原作:上代務・TMSLab

「ラブコメと怪獣退治の不文律」

「ラブコメと怪獣退治の不文律」

なんで私、昭和で怪獣とバトってんの?

気弱な女子高生“円城つぶら”は、ある日突然50年前にタイムスリップ。なぜか巨大ヒーロー“ジャスティスフレア”として怪獣退治することに!? 50年後の現代で新エピソードの配信を心待ちにしている幼なじみの“アンナ”、つぶらが片思い中の“ショウ”くん(ふたりとも特撮オタ)の期待を背負って「今日も戦え、戦うんだ円城つぶら!」ってなんそれ! 絶対無理──!! 空想科学だけじゃ解明できない、タイムスリップ怪獣退治ラブコメディ。

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「コムニスムス」
西島大介

「コムニスムス」西島大介

「コムニスムス」西島大介

1975年、カンボジア 14歳の僕は、最強2歳児の父親になった

1975年、ピュリッツァ賞を目指してカンボジアに乗り込んだ日本の少年ヒカル・コンデは、森を彷徨っていたある日、反政府組織の一団に遭遇。そこで見たのは、彼らを一瞬にして葬り去る幼児の姿。初対面のヒカルを「ちゃん」と呼び、父親として慕う「プティ」という名の女児。戦時下のカンボジアで、血の繋がらない親子のサバイバルが始まる—。

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「ワンハン部 それ100均でやろう!」
漫画:虎向ひゅうら 原作:TMSLab

「ワンハン部 それ100均でやろう!」漫画:虎向ひゅうら 原作:TMSLab

「ワンハン部 それ100均でやろう!」漫画:虎向ひゅうら 原作:TMSLab

100円ショップがあれば何でもできるっ

高校の入学式で出会った安藤あきら、瀬里川椎衣、惣田珊瑚。100均グッズがきっかけで意気投合した3人が始めたのは、100=ワンハンドレッド=ワンハン部! インドア系の椎衣、アウトドア系の珊瑚と一緒に100均グッズの魅力にはまっていくあきら。学校のイベントから身の回りのお悩みまでワンハン部がなんでも解決しちゃいます。あるある&使えるネタも顔を出す部活系ライフハックコメディ!

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「ハムカツっ」
漫画:花葉田しい 原作:TMSLab

「ハムカツっ」漫画:花葉田しい 原作:TMSLab

「ハムカツっ」漫画:花葉田しい 原作:TMSLab

職業、ハムチューバー。やるぜ、ハムカツっ!!

ハム園(ランド)はハムスターの動画配信者=“ハムチューバー”が住む町。住んでるみんなは転生してきた人間。この世界では“バズり”がすべて! 現世に戻りたい奴、死にたくない奴、動画撮ってアゲまくれ! ハムチューバーたちのギリギリな日常&活動を描くストリーミング・コメディ。

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「宇宙少女漂流記 THE ONLY WAY HOME」
漫画:SAA 原作:宇宙少女プロジェクト

「宇宙少女漂流記 THE ONLY WAY HOME」漫画:SAA 原作:宇宙少女プロジェクト

「宇宙少女漂流記 THE ONLY WAY HOME」漫画:SAA 原作:宇宙少女プロジェクト

地球から1兆5千億キロ。青木ヶ原女学院の7人、宇宙空間で極限サバイバル

「現在地は、地球から1兆5千億キロです」と船長代理アンドロイドのチェルシーさんに告げられた青木ヶ原女学院の7人。修学旅行で訪れた宇宙博で、展示中の“キャロットエンデバー号”内を見学していたはずの彼女たちは、いま、宇宙を、絶賛漂流中。なし崩し的に幕を開けた"宇宙少女漂流記"。その影には巨大な計画がうごめいているとかいないとか。

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