「一生悪をくじき弱きを救えるように」というセリフは魏無羨そのもの
──現在ドラマのアフレコは5分の2まで終えていると伺いましたが、魏無羨役を演じて、一番苦心したシーンについて教えてください。
精神的につらかったのは、今のところ蓮花塢のシーンですね。あとは単純に大きい声でガーッと叫ぶことも多いので、やっぱり大変でした。
──逆に一番楽しかったシーンについてはどうでしょう。
魏無羨は口が達者なこともあり、セリフの量はもちろんですが、とうとうと語るシーンも意外と多いです。そんな中で温晁など、敵対する相手に口上をかまして、言葉で黙らせるシーンは演じていて気持ちがよかったですね。あとは姑蘇藍氏の座学に参加したときに、先生である藍啓仁(ラン・チーレン)に口答えするシーン(笑)。ああいうところも小気味よくて楽しかったです。
──ドラマのほうでも印象的なセリフがたくさん出てくるかと思うんですが、特に心に残ったセリフはなんですか?
魏無羨が「一生悪をくじき弱きを救えるように」と自身の正義を誓うセリフですね。
──座学に来ていたみんなが、天灯に願いを託して空に打ち上げる、「陳情令」第7話「天灯に託す願い」でのシーンに登場していました。
あのセリフは、魏無羨そのものを表しているなと思っていて。彼の隣にいた藍忘機がそれを聞いたときに、魏無羨はこういう人なんだなって、その信念と人柄を強く感じるというのもよくて。すごく象徴的なセリフだなと感じました。
──藍忘機も魏無羨の言葉を聞いて、同じことを願ったんだろうなと感じられるのも、印象に残っています。
シーン込みで思い出しますよね。あとは蓮花塢が岐山温氏に攻められ、劣勢を感じた虞紫鳶(ユー・ズーユエン)が、魏無羨と江澄を船に押し込めて逃がすときの会話。江澄には「追手が来る前に逃げて」と紫の稲妻を放つ武器・紫電を渡すのですが、魏無羨に対しては「こんな災いを招くなんて」と攻めたうえで、「江澄を命に代えてでも守りなさい」って誓わせるんですよね。あれだけの苦境に立たされてなお、使命を課せられる魏無羨は、本当に大変だなって思いました。まあ彼なら言われなくてもそうしたと思うんですけど、そこも魏無羨の人生を表しているような気がします。
魏無羨になって、江厭離の蓮根と骨付き肉の汁物を食べたい
──街の子どもたちが仙師ごっこをするシーンで触れる「世家若君ランキング」では、1位藍曦臣(ラン・シーチェン)、2位が藍忘機、3位金子軒(ジン・ズーシュエン)、4位魏無羨、5位江澄というランク付けがされています。そこでお伺いしたいのですが、木村さんが1位にしたいと思う仙師は誰ですか?
もちろん、魏無羨に決まっているじゃないですか!
──即答ですね(笑)。
仙師が各々持ってる技がまたいいんですよね。武器もめちゃくちゃカッコいいですし。暁星塵(シャオ・シンチェン)の霜華剣(そうかけん)とか、虞紫鳶の紫電とか。あれはずるいですよ。
──そこもアニメと実写とでまた表現の仕方が違って、どちらもカッコよかったですよね。もし1日だけなれるとしたら、どのキャラクターになりたいかもお聞きしたかったんですが、やはり魏無羨になるのでしょうか。
本当はお金持ちの蘭陵金氏の人間になりたいとか、いろいろ思うところもあるんですけど(笑)。魏無羨になったら、義姉の江厭離(ジャン・イエンリー)に甘やかしてもらえるんでしょう?
──(笑)。そういえば木村さんは以前「魔道祖師」のインタビューで、江厭離が一番好きなキャラクターだと答えていましたね。
江厭離にお姉ちゃんになってもらう唯一の方法ということで。僕はじゃあ魏無羨になって、作中で江厭離がよく振る舞っていた、蓮根と骨付き肉の汁物を食べたいと思います。このスープ、実は作品に影響されて作ったことがあるんですけど、めちゃくちゃ美味しかったです。
──まさか、実際に作られたとは……!
中国の伝統料理らしく、レシピを調べるといろいろ出てくるんですよ。その中からこれかなと思うレシピをいくつかピックアップして。ちょっと時間はかかるかもしれないんですけど、難しい部分はまったくなくて誰でも作れますし、美味しかったのでオススメです。ただお姉ちゃんの作ったスープはもっと美味しいのかと思うと(笑)、普段から食べている魏無羨と江澄がうらやましくなりました。
描いているのは、人間1人ひとりの友情、愛情、憎しみといった普遍的なテーマ
──ドラマでは魏無羨役を肖戦(シャオ・ジャン)、藍忘機役を王一博(ワン・イーボー)がそれぞれ演じています。彼らのビジュアルについてはどんな印象ですか。
本当に、きれいな顔ですよね。映像を見ながらアフレコに挑んでいるときも、手を止めて見惚れちゃいそうになるくらいきれいだなって。この2人に限らないんですけど。あともともと持っている雰囲気というか、表情から伝わってくるものが、ものすごく魏無羨らしい、藍忘機らしいというのが、さすがですね。表情の1つひとつがまた、汚れていても嘘みたいに美しいというか、傷ついても美しいというか。本当にびっくりしました。
──今回ドラマの吹き替えに参加されて、新たに気になったキャラクターはいらっしゃいますか?
有能な医師の温情(ウェン・チン)かな。アニメ「魔道祖師」ではさほど描かれることがなかったんですけど、ドラマだとかなりメインどころの役を張っていて。ほかのキャラクターもアニメとは描かれ度合いが変わってきたりするので、そこもすごく面白いです。
──アニメ「魔道祖師」は日本でも「前塵編」「羨雲編」が放送されましたが、ドラマのように完結はしておらず、アニメ化されていないエピソードがあります。ドラマで演じて、アニメでも演じてみたいと思ったシーンは?
演じたいシーンはほぼ、前半の平和な頃なんですよ。(しみじみとうなずきながら)平和なときが一番いいよね。つらいシーンが続くとカタルシスを感じて、「早く温晁を倒したい!」みたいなモードになってしまうので。先日ちょうど温晁を倒すシーンを収録したんですけど、彼の最期もアニメとは全然違って、さすがにちょっとかわいそうになりました。
──温晁の愛人である王霊嬌(ワン・リンジャオ)も、ドラマだとめちゃくちゃ憎たらしい描かれ方をしていますよね。
役者さんたちは、すごいですよね。どうしたって、アニメのほうが(表現として)過剰に描きやすいと思うんですけど、温晁にしても、王霊嬌にしても、全然アニメに引けを取らない嫌な奴っぷりで。キャスティング含め、そういうところもよくできているなって。
──あとドラマのほうは魏無羨、江澄、江厭離の兄弟、義理の兄弟ではあるんですけど、すごく3人の絆、つながりを描いているなという感じがしました。
作品の時代背景というか、文化的にものすごく家族愛が強いんでしょうね。だからこそ、家族愛が一切ない場面を見ると、それもまた強烈に映るというか。家族は助け合うものというのが動機になって、物語を動かしていきますよね。
──最後にドラマ「陳情令」日本語吹き替え版を楽しみにしている方々へメッセージをお願いします。
ものすごく壮大なファンタジーではあるんですが、実際に観て感じたのは、人間1人ひとりの友情、愛情、憎しみといった普遍的なテーマを描いているということでした。それは「魔道祖師」と「陳情令」とで、魏無羨役を演じていて感じたことでもあります。作中の用語を覚えなくてはいけないだとか、物語の謎を把握しないといけないだとか、そんなことはまったく必要ないです。自然と作品の世界観に入っていける話の作りになっていると思いますので、興味がある方はぜひ、身構えずに観ていただけたらと。1人ひとりが織りなす人間模様でも、中国ならではの広大な景色でも、なんでもいいので、1つでも楽しんでもらえたらうれしいです。
プロフィール
木村良平(キムラリョウヘイ)
1984年7月30日生まれ、東京都出身。幼少期から子役として舞台・アニメなどに出演し、2009年「東のエデン」の滝沢朗役でTVアニメ初主演を務める。代表作に「黒子のバスケ」黄瀬涼太役、「ハイキュー!!」木兎光太郎役、「銀の匙 Silver Spoon」八軒勇吾役、「Free!」シリーズの遠野日和役、「ULTRAMAN」シリーズの早田進次郎役、「魔道祖師」魏無羨役などがある。
-
ポスト
16218
4699 - シェア 111
- ブックマーク