幸せな環境で生み出した新作アニメ
──ここまでも少しお名前が出てきていた「TIGER & BUNNY」ですが、TVシリーズは2011年放送なんですよね。現在放送中の「RE-MAIN」が30分のTVアニメとしては約10年ぶりなのですが、またアニメの脚本を手がけようというきっかけはあったのでしょうか?
10年の間にも原作もののオファーとかはいくつかいただいてはいたんですけど、やはりオリジナルをやりたいなという思いがありました。「タイバニ」以外でアニメをやるとしたら、そういう機会を自分で作ってやりたいなと思っていたので。そこに向けて動いていたのが理由の1つですかね。
──なるほど。実写とアニメの両方で発表の場を持っている方も少ないと思うのですが、発表する場を選ぶときは何を考えているんでしょうか?
自分が原作を作るときにも「実写でできるもので」とかそういうオーダーを受けることも割とあるんですけど、そこは取っ払ってとにかく話が面白く広がっていくことを重視しようと思ってますね。「テスラノート」であれば国をまたいで話が展開されますけど、実写であれをやろうとしたらやめてくれって言われちゃいます、予算的に。「テスラノート」はもとからマンガで発表することを考えていたので、実写ではできないことだからやってみたいという考えを持ちながら書きました。「タイバニ」の頃からありがたいことに「アニメを意識せずに書いて大丈夫です」と言っていただいていたし、僕もそのほうが自分を出せるなと思ってやってきていたのでアニメと実写の差はあまり意識してないんです。
──そうした後押ししてくれる環境もですが、選択肢がある分、物語を自由に考えられるというのは物書きとしてすごく幸せですね。
そうですね。すごく幸せなことだと思います。
監督業でもっと自分の想像を形に
──実写作品にはなりますが「小野寺の弟・小野寺の姉」「泥棒役者」で脚本のほか、監督にも挑戦されています。「RE-MAIN」でもシリーズ構成・脚本に加えて総監督、音響監督にも名前がクレジットされていて、脚本家の方がそこまでやられることってあまりないですよね。
もともとは舞台で作演出をやって自分の作品を発表していたので、自分が書いた本を自分が演出するというベースから物語を作っているんです。僕は演じる方の芝居まで想像して本を書くので、ディテールにこだわって芝居も限定して書いてしまうことがあって、初めて映像の脚本を書いたときには、プロデューサーから「なんでこの若手脚本家はこんなに画のことを指定してくるんだ」って怒られたこともありました。なので、逆に脚本だけのほうが自分にとっては特殊で、今の演出にも関わらせていただいている形の方が、自分がこれまでやってきたことに近いと言えます。
──なるほど。脚本以外にも参加することで、自分が本を書いたときに考えていたことを、より具体的に形にできるわけですね。
「テスラノート」でもアフレコ現場でのキャラクターづけまで立ち会わせていただきましたし、「この間のこの強さの言い方でお願いします」とか、芝居の隅々まで自分が思うような演技を直接ナビゲートできるので、ときおり音響監督のような立場で関わらせてもらえるのは幸せだなと改めて思いますね。
──ちなみに「RE-MAIN」では西田さんから音響監督に名乗りを上げたのですか?
いえいえ! 実は「タイバニ」のアフレコ現場でもご一緒した音響会社の方が、当時の自分の演技オーダー、というか、やり方を見てくださっていて「西田さんが音響監督やったらどうですか?」と言ってくださったんです。これまでにもショートアニメの「うわばきクック」で音響監督の経験はありましたし、舞台の演出・映画の演出をやってきて、実際に演者さんに演技をつける楽しみは知っていたのでお受けしました。
──そうだったのですね。アニメの総監督は初だと思うのですが、やられてみてどうでしたか?
大変ですが楽しいですね。ありがたいことに現場でも「総監督でここまでやる人いないですよ」と言ってもらえました(笑)。折角飛び込むなら全てやろうというのと、ボールの取り方、持ち方などの水球に関してジャッジできるのが経験者の僕しかいないので。各部署の才能あるスタッフの皆さんとともに全員で力を合わせて形にしていっているところです。打ち合わせと確認事項と考えないといけないことの量が尋常じゃなくてヒィヒィ言っていますが、細部にわたって自分がこだわっていることを伝えさせてもらっているので、なんの悔いもないというか。そういう作り方をさせてもらっている喜びはすごくあります。
──今後、西田さんがアニメにどんな関わり方をしていくのか期待しています! 「テスラノート」では原作・脚本という立場ですが福田道生監督とはどういったやり取りをされていますか?
それはもう、ものすごく細かいやりとりを。脚本家としてより原作者として、福田監督は向き合ってくださっている感じですね。福田監督が考えていることに対してのジャッジを僕に仰いでくださったり、キャラクターについての疑問などを聞いてくださったり。福田監督のコンテも全話見せていただいておりますが、それがものすごくカッコいいんです。
──とてもいい関係性で作業が進んでいるんですね。最後にアニメをご覧になる視聴者へメッセージをいただけますか?
福田監督の創り出す画とテンポでカッコいい「テスラノート」にしていただいています。アクションも3Dで迫力のある画にしてくださっているのでそこも見ていただきたいですね。
※記事初出時より、一部テキストに変更がありました。お詫びして訂正いたします。
- 西田征史(ニシダマサフミ)
- 1975年5月22日生まれ、東京都出身。20代の頃から舞台の脚本・演出を手がけ、「ガチ☆ボーイ」「アフロ田中」「泥棒役者」といった実写映画や、「怪物くん」「とと姉ちゃん」などのドラマで脚本を担当。アニメでは2011年放送の「TIGER & BUNNY」で初めて脚本を手がけ、以降は「うわばきクック」「RE-MAIN」を世に送り出した。2012年に発表した小説「小野寺の弟・小野寺の姉」は映画化、舞台化も果たし、それぞれで監督・演出も務めた。
2021年9月2日更新