「劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編」伏瀬×岡咲美保×杉本紳朗プロデューサー鼎談、制作陣がこだわり抜いて完成した初の劇場版 (2/2)

納得いくものができました(伏瀬)

──完成してみて、現在の心境はいかがですか?

伏瀬 「本当にいい出来になった」と思いましたね。ちゃんと単体で観て楽しめる映画になっていますし、納得いくものができました。これ、なかなか言えないんでね。本当に納得してなかったら言えないから。

岡咲 そうですね。私が完成を観て思ったのは……アフレコ段階でもうだいたい全部観ていたんですけど、やっぱり色が着いて、音楽やSEが入ると全然印象が変わりますね。自分で声をあててるけど、映像の中でしゃべっているリムルはなんか私とは違う気がして、すごく満足度は高いです。これをまた大きなスクリーンで観るのも楽しみですね。映画館は音響もすごいから、いよいよ自分の声って感じはしないかもしれない(笑)。劇場版ってこういうことだなと思うし、ひたすらヒポクテ草を食べていた頃を思うと、非常に感慨深いですね。

岡咲美保

岡咲美保

岡咲美保

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杉本 菊地(康仁)監督を筆頭にエイトビットのスタッフ陣がとてつもない作業量でめちゃくちゃ大変なのに、楽しそうに作っている感じがすごいあって。その楽しさがフィルムに出てますよね。本当にすごいスタッフ陣だなと思います。この話だけで数時間語りたい。ちなみに僕、ダビング作業をしているときに感慨深くて泣きそうになったんですよ。劇場版をやるというのはこの作品をアニメ化するときからの目標の1つだったんで。

岡咲 いい話ー!

杉本 タイミングごとによく泣きそうになっているんですけど。音が付いて、いろいろつらかったことが過去のものになっていって……たぶん公開日にも泣くと思います。それ以前に、初号試写とか完成披露上映会でも泣くかも(笑)。

岡咲 泣きポイントがいっぱいある(笑)。でも本当に、バランスのいい作品だなと思います。ストーリーに関しては特になんですけど、リムル役としての目線でも、作品ファンとしての目線でも満足なので、いろんな人を満足させられる映画になっているなって。今回はどちらかというとベニマルが主役に近いと言いますか、リムルはちょっと俯瞰して見るような役どころなんですけど……。

──今回のリムルは暗躍がメインで、最後においしいところを持っていく感じですよね。

岡咲 そうなんです! 一番アツく描かれているのはベニマルであり、ヒイロなのかなあと。

──ベニマル推しのファンにはたまらない作品というか。

岡咲 「待ってました」でしょうね! ベニマル役の古川(慎)さんはちょっとびっくりされていましたけど(笑)。

伏瀬 ベニマルって、活躍させるのが難しいキャラクターなんですよ。だってあんなの、最初からヘルフレアを使ってたらヒイロは一瞬で燃え尽きちゃいますから。

岡咲 確かに! そこで話が終わっちゃう(笑)。

伏瀬 まず、それを使えない状況を考えないといけない。最初に杉本さんから「ベニマル中心の話にしたい」と言われたときは、「待ってくれよ、ホントに」と正直思いましたから(笑)。

杉本 結果的には、すごくいい感じの活躍シーンを作れましたよね!

「劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編」より。

「劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編」より。

「劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編」より。

「劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編」より。

岡咲 なんで今回、ベニマルをフィーチャーしようと思ったんですか?

杉本 いや単純に、推すとしたらリムルの次点はベニマルになるのかな、と。

伏瀬 制作サイドから「ほかの大鬼族(オーガ)とか出せないですか?」「生き残りとかがいた設定にしても大丈夫ですか?」という意見が出てきたときに、「まあ生き残りはいても不思議じゃないですよね」という話をして。そこからやり取りを重ねていくうちに、だんだん「活躍させるキャラクターはベニマルかなあ」という話になっていった感じですね。

岡咲 確かに、大鬼族で誰か1人ピックアップするとしたら……。

杉本 クロベエにはならないですよね、やりたいけど(笑)。

伏瀬 クロベエにスポットが当たることは、この先もおそらくないでしょうね(笑)。

岡咲 「転スラ日記」ならあるかもしれないじゃないですか(笑)。

伏瀬 「このキャラを活躍させてください」とかって、言うほうは簡単なんですよ。今回の劇場版で言えばベニマルだけじゃなく、ディアブロもですね。「ディアブロはもう出さなくていいよね?」という話をしたら「いや、ディアブロは出してもらわないと困る」みたいな。

岡咲 ディアブロ、人気ですもん。

伏瀬 出したところで、戦う相手を出せないって(笑)。しかも、「どのタイミングで出すの? 今、ファルムスの攻略戦に行ってるのに」と言ったら「戻ってきたことにして……」とか言い出すし。

杉本 言うのはタダですからね、見たいし!

岡咲 実際、リムルが「お前、なんでいるの?」って突っ込むシーンもありましたもんね(笑)。

伏瀬 そういうセリフをわざと入れて、観た人のツッコミを代弁しておかないと。

今後、別のキャラクターにフィーチャーした話が作られるとしたら……

──今後、ベニマル以外のキャラクターをフィーチャーしたお話が新たに作られる可能性もあるのでしょうか。

杉本 可能性はありますし、やりたいですね。もちろん一番は本編のアニメ化をいかにして進めていくかというところにはなるんですが、それに対して、今回の劇場版のようなお祭り的なコンテンツは今後もやっていきたい思いはありますので。ちょっと今、先生がすごく渋い顔をされましたけど(笑)。

岡咲 またお話を考えるのが大変だから。

岡咲美保

岡咲美保

岡咲美保

岡咲美保

伏瀬 ほかのキャラでやるだけなら話は作れるんですけど、そこにリムルを絡めるとなるとねえ……。

岡咲 強いから。

伏瀬 強すぎるから(笑)。そう簡単にはアイデアが出てこないですよ。

杉本 個人的には、シズ編とかやりたいですけどね。

岡咲 やりたーい! 観たいです!

伏瀬 シズさんなら全然、余裕でお話も作れると思いますよ。ほどよい強さだから、敵キャラを作りやすい。しかも、シズさんをやるならディアブロも出せるし。それも今ほど丸くなっていない、尖っていた頃のディアブロを出せるんで、やりたい放題できますけどね。

杉本 ただ、そのお話だと岡咲さんの出番がなさそうですね。

岡咲 いいですいいです。いや、出られるなら出たいですけど(笑)、シズさんというキャラクターが深掘りされることによって、今のリムルの行動がより生きてくるところはあると思いますから。あと、シンプルにシズさんはファンが多いですし、レアキャラになりつつあるので、めちゃくちゃいいと思います!

岡咲美保

岡咲美保

プロフィール

伏瀬(フセ)

11月23日生まれ。2013年より「転生したらスライムだった件」を小説投稿サイト・小説家になろうに投稿。2014年には書籍1巻がマイクロマガジン社より刊行され、2015年には月刊少年シリウス(講談社)にて同作のコミカライズ連載がスタートした。コミカライズ版を原作としたTVアニメ「転生したらスライムだった件」は2018年に第1期、2021年に第2期が放送され、11月25日より「劇場版 転生したらスライムだった件 紅蓮の絆編」が公開。またTVアニメ第3期の制作も決定している。

岡咲美保(オカサキミホ)

11月22日生まれ。2017年に声優デビュー。2018年にTVアニメ「転生したらスライムだった件」で初主演を務める。ほか、主な出演作に「乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…」(メアリ・ハント役)、「ゾゾゾ ゾンビーくん」(イサム役)、「ロード・エルメロイⅡ世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-」(イヴェット・L・レーマン役)、「音楽少女」(西尾未来役)など。

杉本紳朗(スギモトノブアキ)

7月20日生まれ(一人だけ誕生日が遠くて残念と本人談)。バンダイナムコフィルムワークス所属。代表作は「A.I.C.O. Incarnation」など。