NONが2014年から2019年にかけてヤングマガジン(講談社)で連載した「ハレ婚。」は、過疎化や少子化対策のために“一夫多妻制(ハレ婚)”を取り入れた地方都市を舞台にした物語。夫1人につき4人まで妻を持つことができるその街で、複雑な結婚生活を営むことになった主人公・小春と夫の龍之介、ゆずとまどかという2人の妻との日々が描かれる。そんな“一夫多妻”をテーマにした異色のラブコメディ「ハレ婚。」が実写ドラマ化を果たし、現在TELASAなど動画配信サービスで配信中だ。
コミックナタリーではドラマ化を記念し、小春役の島崎遥香、龍之介役の稲葉友、まどか役の浅川梨奈、ゆず役の柳ゆり菜の座談会をセッティング。“一夫多妻”に対するそれぞれの考え方から、原作のビジュアル再現にこだわったというドラマの裏話まで、たっぷり語り合ってもらった。まるで“4姉妹”のような4人のやり取りをお楽しみに。
取材・文 / 増田桃子撮影 / 武田和真
愛がいっぱいある人は素敵だなと思う(島崎)
──「ハレ婚。」は、夫1人につき4人まで妻を持つことができるという“一夫多妻”をテーマにした物語です。かなり現実離れした設定ではありますが……。
稲葉友 現場でもその話になりましたね。「実際そうなったらどうする?」って。
柳ゆり菜 私は一夫多妻っていうと「大奥」のイメージが強いんですよ。誰が早く子供を産むかみたいな、そこで成り上がるしかなかった女たちの戦いみたいなイメージ……(笑)。ただTwitterで「一夫多妻制はよくないって言うけど、現実にはもう1人嫁がいてほしいと思う瞬間ってあるよね」みたいな話を見て、そういう意見もあるんだなと思って。
浅川梨奈 確かに。
柳 そうやって救われる人もいるんだなって思ったんですけど。でもやっぱり「大奥」のイメージが強いです(笑)。
──妻同士はライバル、という。
柳 そうですね。だから逆に「ハレ婚。」を読んでイメージが変わりました。
稲葉 僕も最初は、一夫多妻って聞くといろんな人と恋愛結婚を何回も繰り返すっていう印象だったので、そのエネルギーは自分にはないなって思ってました。でもさっき言ってたような人手が足りないとか、その人たちの間で関係が成立するのであれば、そういう生き方も一つの形としてありなのかなと。
浅川 海外では全然あることじゃないですか、第何夫人……とか。だからもし日本に一夫多妻制ができたらこんな感じなのかなって思いながら演じてました。でも私にはちょっと難しいかな。
稲葉 ありなしで言うと?
浅川 なし。
一同 (笑)。
浅川 それは即答でなしなのよ(笑)。ただ困ったときにもう1人妻がいたら……みたいな気持ちもわかるから、一概にありえないって否定するつもりはないけど。ただ個人的にはまどかの考え方と一緒で、愛した人は自分だけのものにしたいって思うので、一途な愛情が欲しいって思っちゃう。
──島崎さんはどうでしょう。
島崎遥香 私は……なってみないとわからない……。
稲葉 そりゃそうだ(笑)。
──例えば、一夫多妻とは逆になりますが、島崎さんが夫を何人も持てるとなったら、持ちたいと思いますか?
島崎 それは思います。
稲葉 いっぱいいたほうがいいんだ(笑)。
島崎 だってこの世に同じ人っていないじゃないですか。1人ひとり魅力も違うし、その人のここが好き、この人はここが好きみたいなのはあると思います。
──それは龍之介と考え方が近いのでは?
島崎 そうですね、ちょっと気持ちがわかるなって思います。
稲葉 ハッキリ言うと1人じゃ物足りないってこと?
島崎 うーん……物足りないかどうかはわからないけど、愛がいっぱいある人は素敵だなと思う。
「ハレ婚。」は女性ならではの悩みがリアル(浅川)
──では皆さん原作を読まれたときの印象を聞かせてください。
島崎 読み始めたらあっという間に終わってしまって、19巻もあるのに最後までスラスラ楽しめました。あとドラマでは描かれないんですけど、小春の妄想のシーンというか、頭の中で体操服になって話し合いしてるシーンが好きです。
柳 私もあっという間に読める作品だなって思いました。ストーリーもキャッチーだし、泣きが来たと思ったらすぐ笑いに行ったり、テンポよく読み進めていけるのもよかった。それに絵がすごくかわいい。ラブシーンとかもあるんですけど、女性の身体がすごく美しく描かれているので、そんなところもすごくキュンと来るんですよね。
浅川 作者さんが女性だからっていうのもあるのか、感情移入しやすいですよね。女性ならではの悩みがリアルで。今回、まどかをやらせていただくことになったとき、「ハレ婚。」を読んでたマネージャーさんから「まどかは大変だよ」って言われたんですけど、読んでなるほどなと納得しました。実際に自分がこの役を演じるんだと思うと苦しくて、泣きながら読んでましたね。
稲葉 シンプルに面白かったですね。早い展開の中で、人間関係が絡んでくるので、どんどん続きを読みたくなりました。あと個人的には、うららちゃんの恋物語がとてもかわいくて好きで。今回のドラマでは描かれてなくて残念なんですが、ぜひスピンオフとかでやってほしい。
柳 うららが一番好きって言ってたよね?
稲葉 うん、うららが一番好き(笑)。
浅川 もう、帰れ帰れ(笑)。
稲葉 ごめん(笑)。
──ご自身が演じたキャラクターと似ている部分や共感できるところはありますか?
島崎 小春と似てるところは、嘘がつけないところ。
一同 (笑)。
島崎 似てないのは、言葉遣いが汚いところかな……。「この野郎!」とか「クソ野郎!」とか言わないので(笑)、そこは似てないなって思います。いつもの自分よりは声を下げて演じましたね。あまりかわいらしくならないように。
柳 ゆずは内面的なところで言うと割と自分と近いなと思っていて。人をよく見てたり周りの空気を読んでしまうところ、あと思っていることと言ってることが実は逆だったりするのも共感できました。だからそういう意味での役作りはそれほど必要なかったんですけど、問題は見た目ですね……ギャル(笑)。
稲葉 ギャルis遠い(笑)。
柳 「え、私がギャル?」って。ギャルってどんなしゃべり方するんだろうって思って、YouTubeで「ギャル」って調べたもん(笑)。
一同 (笑)。
柳 よく手を動かしてるな、とか。語尾にハートマークがつくようなしゃべり方とか。
島崎 確かによくこうやってたよね(手を動かしながら)。
柳 そうそう、「あんたさあ」って。
──ビジュアル的にはかなりマンガのゆずに近いなと思ったので、意外でした。
柳 ありがとうございます。髪染めたり爪長くしたり、ビジュアルで受け入れてもらうためにというか、キャラクターが立つための努力はけっこうしたと思います。
浅川 原作を知ってる人には「まどかを浅川がやるの?」って驚かれたんです。たぶん外から見えてる私とは真逆なんだろうなと思うんですが、自分では根本的な部分では似てるんじゃないかなと思っていて。ただ私は嫉妬深さや独占欲を表には出さないタイプで、思っててもしまい込むんだけど、まどかは愛情をまっすぐ伝える一途な子なんです。だからまどかみたいに感情を出せたらいいなと思いながら演じてました。
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龍之介が“ただの変な人”にならないように(稲葉)