「ダーリンは71歳・高須帝国より愛をこめて」|2人の愛を綴ったエッセイマンガは…「俺物語!!」のパクリ?描かれ放題のダーリン・高須院長が西原理恵子に反論

「高須帝国の逆襲」でマンガの汚名をそそぐぞ!と思ってたのに……(高須)

──高須さんの2冊目のインタビュー本「高須帝国より愛をこめて」についても話を伺わせてください。前作「高須帝国の逆襲」だと、西原さんのマンガに対して反論する部分がありましたよね。

「ダーリンは70歳」より。西原をびっくりさせようと企む高須だが、扉の前に立っていたのは……。

高須 書きましたね。ホテルで彼女を待ってるときにびっくりさせようと思って、ドアのとこでパンツを脱いで待ってて、チャイムが鳴って出たらコンシェルジュの女性がいたと。そういう話をね、西原の「ダーリンは70歳」に描かれたんです。

西原 その歳で、パンツ脱いで笑い取ろうとするのもどうかと思うけど。

高須 でも実際はパンツは脱いでないんです! でも西原から「パンツはやっぱり脱がせた。そのほうが面白いじゃん」って言われてね……。

西原 本当に履いてなかったんですよ。だけど恥ずかしいから本当のことは描かないでって言われたんです。

高須 バカなことを……そんなことがあるわけがない!(笑)

──またここでも食い違いが(笑)。

西原 「わしのような偉い人がそんなことをするわけがない」って必ず言うんですよ。

──高須さんがインタビュー本を出すのは、「マンガに描いてるのは真実と違うぞ」っていう反論をしたかったというのが根底にあるんですか?

西原 言い訳したかったの?

高須 マンガでの汚名をそそぐぞ!ってことですね。

西原 インタビュー本のほうが売れてもお金は私に入るようになってるんですけどね。

──お金とか関係なく、ただ西原さんのマンガに反論したかったと。

高須 「聞いてくれ、そうじゃない、真実はこうだ!」って言いたいんだけど、彼女のほうが力が強いんだよなあ……。

──2冊目のインタビュー本となる「高須帝国より愛をこめて」でも、そういったマンガへの反論があるんでしょうか。

「ダーリンは71歳」より、西原の誕生日にイベントに出演する高須。

高須 そうですね。例えば「ダーリンは71歳」に描かれたエピソードとして、僕が西原の誕生日に、ナインティナインの岡村さんのイベント(「岡村隆史のオールナイトニッポン歌謡祭 in 横浜アリーナ」)にゲスト出演して歌ったということがあるんです。

西原 51歳のおばさんだって、誕生日は恋人と過ごしたいじゃないですか。だからそこでケンカしましたね。

高須 それをマンガで読んだんでね、自分の本では「西原に僕の芸を見せて喜んでもらおうというおもてなしの気持ちだった」って反論しました。(西原に向かって)あなたの誕生日に私があなたのために歌うっていったら最高じゃないの?

西原 私の誕生日に営業入れただけじゃん。

高須 営業か……。

西原 そうやって詭弁でごまかさないでよ。「君のために」とか何言ってるの?

高須 詭弁じゃないもん。真実だもん。「僕の歌を聴かせてあげよう」って、郷ひろみだったら喜ばれるのに、なんで僕だとダメなの。

──男女のすれ違いがありますね(笑)。

左から高須克弥、西原理恵子。

西原 この間も、銀座で外食する約束をしてたから待ってたのに、彼は泊まってたホテルの入口にあったレストランの看板見ただけで「スパゲッティ食う!」って言って、1人で食べちゃって。

高須 あの日は診察があって、朝から何も食べてなかったんだよ。

西原 だからおにぎり持っていって、「お腹がもたなかったらこれ食べてね」って言ったのに「いらない」って言ったでしょ。

高須 これからディナーを食べようというのに、おにぎり食わせられたら悲しいじゃない。

西原 じゃあなんでスパゲッティ食べたの?

高須 スパゲッティは……パスタは本場のイタリアンだと前菜なのよ。

西原 じゃあおにぎりも前菜でいいじゃねーかよ(笑)。

高須 おにぎりは前菜と違うんだよ。

西原 で、「お腹いっぱいになったから帰る」って言われて。ホテルに帰って私がずーっと口をきかないでいたら「なんで怒ってるの……?」って言いますからね、この人。

高須 なんで銀座行くのにおにぎり食わせるんだよ!

西原 じゃあなんでスパゲッティ食うんだよ!

「ダーリンは70歳」より。2人で居られる時間を大切にする高須と西原。

──(笑)。でも高須さんの本と西原さんのマンガで、おふたりの違う主張が見れるのは面白いと思いました。

西原 彼には彼なりの理論があるんでしょうけど、詭弁ですよね(笑)。でもこれが若いときだったら「もうこの人とはやっていけない」とかなるけど、歳いってるともういいのよ。「元気な証拠だからね」って思うようにしてますよ。

高須 (納得いかない様子で)いや、理不尽に怒られていて、謝罪するのは僕のほうじゃないと思う。だから理論立てて説明するんだけど、感情的に「黙れ、やわチン野郎」って言われちゃう。あれはいかんと思うな。

彼のインタビュー本は、ウザいところが出てなくていい(西原)

──でもケンカしても、マンガで面白おかしくネタにできるのはいいですよね。

高須 いやあ、彼女は天才的な芸を持ってますよ。すごいですよ。

西原 芸っていうか、このややこしい人との会話の中から、いい部分だけを一生懸命に抽出してるだけですよ。でもそんなに天才的な芸だっていうなら、もうちょっと売れたい(笑)。ずっとバント、バントのマンガ家人生なんで。

──西原さんはよく「商いは短く持ってコツコツ当てる」と言ってはいるものの、そろそろホームランがあってもいいだろうと。

西原 売れるためには子供も売って、そろそろ売り尽くしたから、今度は男を売り始めたっていう。私が死んだら墓碑銘は「なんでも売った女」的なのを入れてもらおうかな。

──西原さんは「高須帝国より愛をこめて」は読まれました?

左から高須克弥、西原理恵子。

西原 いや、まだ見てないんで楽しみですよ。1冊目を読んだときは、彼のいいところだけが出てるなと思いました。これは彼へのインタビューをライターの方がまとめてるんですけど、そのライターさんが保母さんみたいに彼の話をゆっくり聞いて、いらんこと削ぎ取るのがうまいの。だから彼のいつものウザいところが出てなくていいですよ(笑)。

高須 前作はね、彼女のファンが「西原の絵が表紙だから買おう」って手に取ったら、最初は「ちょっとしかマンガが載ってない! 騙された!」って思ったらしいんですよ。でも「全部読んでみたら面白かった」と言ってくれる人が多かったみたいです。内容の評判はいいので、これから火がつくぞ!と思ったところで回収されちゃったんだけど……。

──今回は絶版にならないように祈っております。

高須 もういっぺん絶版したらすごく話題になると思う。

担当編集 話題にはなります。話題にはなりますけど、さすがに僕の立場が……(笑)。

高須 こっちの本が売れたら西原のマンガも相乗効果で売れるらしいので、がんばって宣伝しますよ。

西原 「俺物語!!」の1割のお客さんが流れてくれればいいのにな。あの大きな魚影はどこにいるんだろうなあ……。

──あんまり「俺物語!!」って言ってると、河原和音先生とアルコ先生に怒られますよ(笑)。

西原 大丈夫大丈夫、「人生画力対決」に出てもらったときにもっとひどいこと言ってるから。「大和と猛男もそのうちやることやるんだろ」みたいな。

──(笑)。「ダーリン」も「俺物語!!」ぐらいヒットして、実写映画化するといいですね。

高須 2人の話を実写化すると、それはもう老人AVですけどね(笑)。

西原理恵子、高須克弥「ダーリンは71歳・高須帝国より愛をこめて」
発売中 / 小学館
「ダーリンは71歳・高須帝国より愛をこめて」

書籍
1080円

Amazon.co.jp

熟年バカップル恋愛を赤裸々に描いた「ダーリンは71歳」のスピンオフ本です。「尿漏れ」「ツイ廃老人」「やわらかメンマ」などなど、描かれたい放題だった高須院長が、思いっきり反論に転じたロングインタビュー本なんです。彼女・西原理恵子さんの描き下ろしマンガも多数収録。感涙名作シリーズとなった「りえくまちゃんとぼく」の新作も!

西原理恵子「ダーリンは71歳」
発売中 / 小学館
「ダーリンは71歳」

コミック 1080円

Amazon.co.jp

Kindle版 972円

Amazon.co.jp

西原理恵子「ダーリンは70歳」
発売中 / 小学館
「ダーリンは71歳」

コミック 1080円

Amazon.co.jp

Kindle版 972円

Amazon.co.jp

高須克弥(タカスカツヤ)
1945年1月22日愛知県一色町生まれ。昭和大学医学部卒業。同大学院の医学研究科博士課程を修了し、1973年には医学博士を取得した。1976年に愛知県名古屋市にて高須クリニックを開設。同院は「YES、高須クリニック」のキャッチコピーでも知られる。1978年からは「11PM」などのテレビ番組にレギュラー出演し、一般的に美容整形を認知させた。また国際美容外科学会会長、日本美容外科学会会長にも就任している。
西原理恵子(サイバラリエコ)
1964年11月1日高知県高知市生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。大学在学中よりアダルト雑誌でイラストを描きはじめ、1988年ヤングサンデー(小学館)にて「ちくろ幼稚園」でデビュー。破天荒な人生を叙情的に描くストーリーマンガの旗手としても知られ、「ぼくんち」で1997年第43回文藝春秋漫画賞を受賞。同作は2003年に観月ありさ主演で映画化もされた。2005年には「毎日かあさん(カニ母編)」で第8回文化庁メディア芸術祭漫画部門優秀賞、「毎日かあさん」「上京ものがたり」で第9回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した。