Webtoonから始まり、世界へ。CyberZが映像クリエイター集団BABEL LABELと手を組み、縦スクロールマンガスタジオ・STUDIO ZOON設立!代表取締役にビジョンを聞いた

2022年4月、スマートフォン広告代理店事業を手がけるCyberZが、縦スクロールマンガ、いわゆるWebtoon事業への進出を発表した。事業参入に伴って、新たにコンテンツ制作スタジオ・STUDIO ZOONを設立。企画から制作、販売までの体制を整えるという。CyberZといえばABEMAやCygamesを擁するサイバーエージェントグループの一社。それだけに、グループ内での連携によるメディアミックスも戦略の1つとして挙げている。アドバイザーとしてサイバーエージェントグループに参画した映像クリエイター集団・BABEL LABELの山田久人氏が参加したことも、その戦略を加速する表れだろう。

そんなSTUDIO ZOONが、編集者・クリエイターの募集を行なっている。盛り上がりを見せる縦スクロールマンガ業界で、STUDIO ZOONは何を目指し、どういった作品を届けていきたいのだろうか。そしてどういう人材を欲しているのだろうか。CyberZ代表取締役社長の山内隆裕氏とBABEL LABEL代表取締役の山田久人氏に、縦スクロールマンガ事業を進めるうえでの戦略とビジョンについて聞いた。

取材・文 / 太田祥暉(TARKUS)撮影 / ヨシダヤスシ

なぜ今、サイバーエージェントグループが縦スクロールマンガスタジオを設立するのか

──広告代理店業やeスポーツ大会のRAGEなどで知られるCyberZが縦スクロールマンガに参入するというリリースに、興味を持った方も多かったと思います。本日はおふたりからSTUDIO ZOONを立ち上げるうえでのお話を伺えればと思いますが、まずは自己紹介からお願いできますでしょうか。

山内隆裕 CyberZの代表取締役社長・山内です。サイバーエージェントに新卒で入社した後いくつかの子会社を立ち上げ、そのうちの1つがこのCyberZでした。CyberZはガラパゴスケータイの広告代理店事業として2009年に立ち上げたのですが、当時その業界では最後発だったんです。なので、スマートフォンの広告代理店事業に最先発として切り替えまして、業界ナンバーワンに上り詰めました。今CyberZでは広告代理店事業のほか、eスポーツ事業、それからライブ配信プラットフォーム・オープンレックの運営なども行っています。

山田久人 BABEL LABELの代表兼プロデューサーをしています。BABEL LABELは「新聞記者」などで知られる藤井道人と一緒に立ち上げたコンテンツスタジオです。学生の頃から始まって最初は数万円くらいの自主制作映画を作っていたのですが、結成10年を越えてだんだんと芽が出てきて、今年頭にサイバーエージェントグループに入ることになりました。

左から山内隆裕氏、山田久人氏。

左から山内隆裕氏、山田久人氏。

──おふたりはもともと、マンガがお好きなんですか?

山田 僕は手塚治虫が大好きなんですよ。特に好きな作品が「ザ・クレーター」です。手塚作品はいつか実写化したいなと考えているんですが、まだ実現できていませんね。

山内 いろいろ読み漁っているんですが、最近だと悪役令嬢ものや追放系がメインでしょうか。これらの作品はみんな社会で疲弊していて生まれ変わった自分を想像しているのかなと、なぜ今これが読まれているのか理由を考えながら読んでいます。

──なるほど、かなり読まれているんですね。そんなおふたりが縦スクロールマンガの存在を認識されたのはいつ頃でしたか。

山内 もともといろんなマンガアプリを読んでいた中で、2年くらい前から従来の横向きから縦読みに流れが変わってきたようには感じていました。

山田 縦スクロールマンガを知ったのは、映像作品の原作としてでしたね。「愛の不時着」が大ヒットした韓国のSTUDIO Dragonは、Netflixで「恋するアプリ Love Alarm」や「Sweet Home -俺と世界の絶望-」などいくつか作品を制作していますけど、その原作が縦スクロールマンガだったんですよ。そのほかにも、「梨泰院クラス」や「地獄が呼んでいる」など、縦スクロールマンガ原作の人気作が近年は大量に生まれています。そこから、縦スクロールマンガと映像制作の関係性を考え出したのが始まりだったと思います。山内さんと同じく2年くらい前の話でしょうか。

──そこからSTUDIO ZOONの設立に至るまでには、どのような流れがあったのでしょうか。

山内 もともとサイバーエージェントグループ全体としても、原作を開発していこうという流れがあったんです。そんな中で、今の我々が映像作品をはじめとしたメディアミックスの原作を開発するならば、縦スクロールマンガをやるべきではないか、という話になったんですよ。

──自社でIP(知的財産)を持っていると、ビジネスとして広がりが生まれますからね。

山内 ええ。グループ内にはABEMAというプラットフォームもありますし、アニメレーベルやゲーム制作スタジオ、グッズ販売事業もあります。IP事業はビジネス活性化のエンジンになるので、縦スクロールマンガを作るのはある種必然だったのかなと思います。CyberZではゲームをはじめとしたイベントも行っているんですが、その大元となるIP自体は持っていないことも多いんです。世界的なIPを持っていたらもっと会社の企業価値が上がるはず。CyberZ、ひいてはサイバーエージェントがさらに次の段階に行くため、自然と世界的なIPを作る流れへとなっていきました。

CyberZはエイベックス・エンタテインメント、テレビ朝日とともに国内最大級のeスポーツイベント「RAGE(レイジ)」を運営。写真は8月に行われた「RAGE Apex Legends 2022 Summer」の様子。

CyberZはエイベックス・エンタテインメント、テレビ朝日とともに国内最大級のeスポーツイベント「RAGE(レイジ)」を運営。写真は8月に行われた「RAGE Apex Legends 2022 Summer」の様子。

山田 映像を生業とする僕の立場から見ても、縦スクロールマンガはかなり魅力的なんです。まず、企画立案の段階からこれまでと違うことができる。今の日本の映画やドラマの作り方って、企画と脚本を作ってから制作費を募るという形なんです。でも、そのやり方だと、制作費と合致する内容のものしかできないんです。なので、縦スクロールマンガであらかじめ面白い作品を作っておけば、規模感が多少大きかったとしても予算を出してくれる人が集まってきますし、シリーズ化も見込むことができます。映像制作の未来を考えるならば、縦スクロールマンガで原作開発をするのもとても大事な選択肢の一つだと思います。

──コロナ禍になり全世界的にコンテンツ需要が高まったことは、縦スクロール事業に対する考えに何か影響はありましたか?

山内 Netflixのような映像配信サービスだけでなく、縦スクロールマンガが世界的に広がりましたよね。つまり、デジタルコンテンツに対して、時間とお金の掛け方が上がったわけです。それによって、アプリやマンガ自体のフォーマットが変わろうとしています。それは縦スクロールマンガを支持してくれている人が増えたということですから、CyberZとしても市場開拓する意義があると思いました。

映像クリエイター集団が参画するSTUDIO ZOONが目指すもの

──現在、ゲーム会社、アニメスタジオなど多くの企業が縦スクロールマンガスタジオを立ち上げています。STUDIO ZOONはサイバーエージェントグループが新たに立ち上げるものですが、どういった特徴を持ったスタジオにしようとお考えなのでしょうか。

山内 原作開発からマーケティング、メディアミックスまで、自社グループ内で一気通貫して行えるのは特徴だと思います。例えばサイバーエージェントにはアニメ事業部がありますし、山田さんのBABEL LABELもあります。ゲーム事業を展開するCygamesもグループ事業です。加えて、CyberZは海外でも広告代理店事業を行っているので、世界的に作品を大きくしていける土壌はあると思っていて。

──作品を自社グループ内でメディアミックス展開できるというのは、大きな強みですよね。

山内 でもその前にはまず、作品を産み出さないといけない(笑)。なので、いま縦スクロール制作に一緒に挑戦してくれる編集者や脚本家、プロデューサーを募集しています。それに異なる分野のクリエイターも広く募集していて、イラストレーター、アニメーター、ゲームクリエイターの方々にはぜひSTUDIO ZOONに参画してもらいたいんですよ。

渋谷にあるCyberZ東京本社の様子。

渋谷にあるCyberZ東京本社の様子。

──ゼロからオリジナルのIPを作りたい方を求めていると。

山内 ええ。CyberZならではのサポートも可能です。縦スクロールマンガのプラットフォームで配信をしますから、どれくらい読まれたのかすぐにわかりますよね。先行作品でヒットしたものは映像化されたときにどれだけ読まれていたのかも、レコードとして溜まっています。そういった点はまさにCyberZが広告代理店事業を行ううえで強みにしている部分なので、STUDIO ZOONで作品作りを行う後押しもどんどんしていきたいですね。日本国内はもちろん、世界的に愛される作品作りに貢献したいと思っています。

──もう1つの強みとして、BABEL LABELという映像クリエイター集団が近くにいることが挙げられると思います。近年ではTBSさんが縦スクロールマンガに進出したり、堤幸彦監督や本広克行監督、佐藤祐市監督が縦スクロールマンガで原作開発を行ったりしています。

山田 実は日本の実写映像制作では、コンテを書かないことも多いんです。なので、製作陣が作品を判断する材料は脚本という文字情報のみになってしまうことも少なくありません。そうなると、クライアントたちに、作品の細部まで伝えきれず企画が進まなくなることもあります。そこで、縦スクロールマンガであらかじめ原作を開発しておくことで、どういう作品を作りたいのかわかりやすくすることができる。それが縦スクロールマンガに映像制作者が進出する狙いだと思います。今回は私たちがSTUDIO ZOONへ深く関わることで、縦スクロールマンガのクリエイター側にも映像化を狙ったアドバイスができるように考えています。

山田久人氏

山田久人氏

──縦スクロールマンガは韓国発のメディアで日本は後発ですが、CyberZのマーケティング力を駆使すればSTUDIO ZOONも世界的なヒット作を作れるかもしれません。

山田 我々も十何年と映像を作ってきましたが、その中でわかったことは海外で日本の作品が観られていないことです。今後、日本の市場自体がどんどん小さくなっていくので、もっと海外のマーケットまで考えた作品を作らなければいけません。韓国では国の援助や企業のサポートもあって国内だけでなく海外まで見通した制作費で作品作りができているんですよね。韓国でのエンタメ制作スキームは参考にしなきゃいけないんじゃないかと。そこでBABEL LABELに協力してくれる企業を探していたんです。

──それがサイバーエージェントだったんですね。

山田 はい。日本と海外では制作フローも大きく異なりますから、海外で日本の作品がヒットしてもラッキーくらいにしか考えていない。そこを変えるために、原作となる縦スクロールマンガを作っていくことは大いにあると思います。その中から、「DRAGON BALL」のような世界的IPが生み出せればいいですよね。

──これは素朴な疑問ですが、IPを生み出すという観点から考えれば、従来の横向きに開くマンガでも原作開発は可能だと思います。また、アニメやゲームというメディアもあったかと思いますが、なぜ縦スクロールマンガという媒体を選ばれたのでしょうか?

山内 まずは事業としてですよね。先ほども申し上げたように、縦スクロールマンガは今まさに活発に変化し続けている媒体です。動きが大きい。なので、人と予算が集めやすいという経済的側面が理由として挙げられます。また、従来のマンガと違う点として、1コマが画面全体に広がるところがあります。そうなると、従来のマンガで1ページの中で小さいコマに収められていた表現もダイナミックに表せるんですよね。そう考えると、ファンタジーやアクションのような動きが激しいものと相性がいいと思うんです。加えて、普及率の高いスマホがメイン媒体なので、そのフォーマットならではの盛り上がる作品が生み出せるかもしれないと思い、縦スクロールマンガを選びました。

山田 もちろん従来のマンガからでも映像化はできます。でも、縦スクロールマンガはより映像化に適した媒体だと思っていて、今世の中で多くの人が読んでいる。それは日本になかった文化ですから、無視せずに取り組まなきゃならないなと考えています。今、山内さんがおっしゃったファンタジーやアクションものは、BABEL LABELとしてもぜひ映像化したいジャンルです。そのためには、魅力的な原作開発をしていかなくてはなりません。

──映像化を考えつつ、世界的に作品を発信していくために現在最適なメディアが縦スクロールマンガというわけですね。ヒットを生み出すためには、どのようなことをしていこうとお考えですか?

山内 いい作品を作るためには、まず世界基準の縦スクロールマンガを生み出せる制作集団とある程度の予算が必要です。そこで集った優秀な作家やマンガ家、編集たちとともに、世界基準の縦スクロールマンガづくりに挑戦していこうと思います。もちろん、1つ作ったら1つヒットするというわけでもないので、さまざまなバラエティに富んだ企画を生み出していければいいですね。やることはたくさんあるんですが、クオリティを第一にさまざまなトップクリエイターたちと制作していければ、必ずグローバルヒットにつながると確信しています。最終的には、メディアミックスを積極的に推進して、世界的に愛される作品を育てたいですね。それに挑戦したい人にぜひ、STUDIO ZOONへ参加してほしいと思います。

STUDIO ZOONが目指す先は、世界的人気IPの創出

──STUDIO ZOONとして、最終的にどういった制作集団を目指すのかビジョンをお聞かせください。

山内 STUDIO ZOONの作品であれば必ず面白いと認知される存在になりたい。そのために、サイバーエージェントグループのABEMAであったり、CyberZが得意とするYouTubeやTwitter、TikTok上での広告だったりで、作品の認知度を上げていく。その過程で、STUDIO ZOONと仕事がしたいクリエイターも増えていけばいいなと思います。

山内隆裕氏

山内隆裕氏

山田 今BABEL LABELは縦スクロールマンガ原作を含め、さまざまな映像企画を進めているんですけど、映像に携わるスタッフは、僕含めてですけど無意識に従来のやり方や考え方に引っ張られていることが多いんですよね。STUDIO ZOONでは映像分野ではなかった人……例えば編集者やマンガ家といったいろんな人が入ってくることで、シナリオができる前にキャラクターデザインを進めてみたり、世界観とキャラクターから企画を動かしていったりと柔軟に企画を考えていけるようになりたいです。そうして、メディアミックス展開も推進していければいいなと思います。

──逆に、クリエイターがSTUDIO ZOONで作品を発信することでのメリットは何があるとお考えですか?

山内 やはりサイバーエージェントグループ内でメディアミックスが行えることですね。あと、ゼロから立ち上げる事業ですから、すぐに活躍できると思います。編集者であれば、入ったらすぐに企画を通せますし、裁量権も与えられるでしょう。

──かなり自由度が高そうですね。そんな中で、おふたりはSTUDIO ZOONを今後どのように展開していくおつもりでしょうか?

山田 最終的には「スター・ウォーズ」のような世界的人気シリーズを生み出せればいいなと思いますが、世界でも活躍するサイバーエージェントグループでやるからこそ、日本のマーケットに縛られない作品作りをできればなと思います。

山内 そのためには、1年で100タイトルくらい作りたいですよね(笑)。今現在、縦スクロールマンガは世界的に注目を集めています。そこでたくさんの才能を集めて、世界に発信したい。そこでSTUDIO ZOONも存在感を高めていければなと考えています。CyberZがこれまでやってきたマーケティング力を駆使して、作品を広げていければいいですね。いい作品を作り出してメディアミックスをしていく。その繰り返しで、世界的なIPホルダーになれればと考えています。

──現在編集者やクリエイターを募集していますが、具体的にはどういった方にSTUDIO ZOONへ参加してほしいとお考えですか?

山内 CyberZ自体がチャレンジ精神旺盛な人が多いので、そこに賛同してくれる人だとうれしいですね。チームで活動することも多いので、部署間で連携して大きなものを作りたいと思えるような人だと活躍しやすいかなと思います。サイバーエージェントグループ全体でも風通しはいいと思うので、ほかの事業との連携もしやすいはずです。STUDIO ZOONで新しい世界的コンテンツを産み出したいと考えている人はぜひ、参加してください。

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CyberZでは、Web縦読みマンガ事業に興味のある国内外のスタジオ、出版社、作家とのパートナーシップを募集中。事業拡大に伴いCyberZで一緒にコンテンツ制作を行う仲間も募集している。マンガ・アニメ制作に興味がある、もしくはすでに経験のある方は下記に連絡を。

問い合わせ窓口:kido-risa@cyber-z.co.jp


プロフィール

山内隆裕(ヤマウチタカヒロ)

CyberZ代表取締役社長。2006年にサイバーエージェントへ入社し、2009年にCyberZを立ち上げる。現在はサイバーエージェント専務執行役員など複数社にて役職を務める。

山田久人(ヤマダヒサト)

BABEL LABEL代表取締役社長。大学生時代から映像制作をはじめ、大手制作会社を経て現職。「量産型リコ -プラモ女子の人生組み立て記-」や「八月は夜のバッティングセンターで。」などでプロデューサーを務める。