ストアではなく雑誌、という見せ方へのこだわり
──一方で、開発者の持田さんとしては、ほかストアがある中で、どういったことを念頭にソラジマTOONを作られたのでしょうか。
持田 これまでソラジマはさまざまなストアで作品を配信してきました。でも、ほかの会社さんの作品と一緒に並ぶので、ソラジマ作品が一堂に会する場所が存在しなかったんですよね。なので、まずはソラジマ作品のカラーがわかる場所にすることを意識しました。あと、本屋さん感をなくすことも最初に考えましたね。
──“本屋さん感”というのは?
持田 例えば、とあるストアさんでは作品のキービジュアルを縦型で表示しています。それは紙の単行本が縦であることに由来していると思うんですが、そうすると作品の情報が小さくなってしまうんです。どれだけキービジュアルを大きくしても、画面全体に出せないとなると、1列に2作品が載るレイアウトが限界です。対して、横型のキービジュアルにすると、1列丸々使うことができるので作品の情報を大きく紹介することができますし、ストアではなくメディアであるという印象を与えられるかなと。
前田 ストアではなく、雑誌として考えているんですよね。ソラジマTOONという雑誌があったらどういう形で表示していくか、という考え方で開発を進めてもらいました。
持田 実は現在リリースされているソラジマTOONはそのベータ版なんです。数カ月後には本当に雑誌だと思うくらいのデザインが実装されますので、お楽しみに!
前田 タテ読みマンガアプリではなく、雑誌だからこその試みもいろいろ企画しているので、ご期待いただけるとうれしいですね。
持田 先日新宿マルイメンさんとなんばマルイさんで「SORAJIMA展」というポップアップストアを開催したのですが、その際に販売したグッズなどもソラジマTOON上で購入できるようにしていきたいですね。毎週ユーザーさんに開いていただけるようなサービスを目指していきたいです。
SNSのトレンド入り、連載化にメディアミックス……思い描く未来像
──ついにソラジマTOONがリリースされた今、おふたりがソラジマTOONの未来像として思い描いていることをお教えください。
持田 月曜日の0時に読み切りを公開しているんですが、社内Slackで感想を上げてくれる人が徐々に増えているんですよ。その波が社外にも波及して、世界中に広がってくれるといいなと思っています。月曜日の0時には決まってSNSのトレンドに「#今週のソラジマ読み切り」って上がってくるようになったら、とてもうれしいですよね。
前田 週の始まりをソラジマの読み切り作品で楽しくしてほしいです。今は毎週1作は読み切りを必ず公開するようにしているんですが、これから頻度が上がってくるので、いつしか毎日公開になるかもしれません。それこそ、2030年度には365本公開を目指していますからね。個人的には読み切りの可能性をもっと広げたいと思っていて、読み切りからの連載化はもちろん、ショートムービー化やショートアニメ化などのメディアミックスもしていきたいです。
持田 あと、アップデートでUIが変わったときには、ソラジマTOONがいかに雑誌を目指しているのかも確認してほしいです。また、読者さんと作家さんの距離を近付けたいとも思っているので、いいね機能だけではなくファンレター機能も実装できればなと考えています。ぜひ、作品を読んで感じたことを率直に届けていただきたいですね。
前田 タテ読みマンガのサービスってありとあらゆる会社がリリースしていますけど、自社作品のものだけを掲載しているものに限ると意外と少ないんですよね。編集長としては、ソラジマの作品だけを載せていることにもこだわりを持っていて、読者の方にはぜひ連載作品をきっかけに、僕たちの新しいチャレンジも応援していただきたいです。いつしか、ただタテ読みマンガを読んでいるだけじゃなく、“ソラジマの作品だから読みたい”になってもらえればと思っています。かつて手塚治虫先生がマンガやアニメにおける表現方法を開拓したように、今後数年で必ずタテ読みマンガでイノベーションを起こす作品が生まれるはず。読者の皆さんにはその瞬間を、ソラジマTOONを通して確認していただけたらうれしいです。
プロフィール
前田儒郎(マエダジュロウ)
1992年生まれ。早稲田大学教育学部複合文化学科、ソルボンヌ大学大学院文化地理学科を卒業する。2015年から2019年にかけて日本食チェーン・おむすび権米衛のフランス事業開発責任者を経験。2019年にソラジマを創業し、代表取締役Co-CEO(最高執行責任者/最高経営責任者)を務める。
持田章弘(モチダアキヒロ)
1995年生まれ。東京理科大学理学部数理情報科学科に在籍中にDeNAで事業立ち上げを行い、その後CHAT NOVELのCTOに。ソラジマには2022年に入社し、現在はCTO(最高技術責任者)を務める。