高校生にしかない特別感を描きたい

──小学館のマンガ家を引き寄せる研究室だったんですね。水波さんの中で、Sho-Comiはどんな雑誌というイメージですか?

恋愛がメインで画面がキラキラしていて、ちょっと刺激的。特に刺激的という部分は、私自身が北川先生の作品のそういうところが好きだったから、同じように好きな子が読んでいるに違いないと思って。そういう読者を意識した作品作りをずっとしてきました。

──水波さんはデビューから19年、一貫してSho-Comiで描き続けていますが、別の雑誌で描いてみたい……例えばもっと大人向けの雑誌で、刺激的な部分全開で描いてみたいという思いはありますか?

「今日、恋をはじめます」カット

うーん、前はあったかもしれない。Sho-Comiの読者層に向けて描いていると、告白して両思いになって、初体験するかしないかのドキドキがメインになるんですけど、高校生だと体験した子・まだ体験してない子が入り乱れている感じが面白いところだと思うんです。中学生で経験してるとちょっと早熟すぎる印象で、特殊な感じになる。高校を卒業してから、大学生とかになるとそういう行為が日常になってきちゃうし、30代に迫ると、今度は婚活やら妊活やらって話になってきちゃう。高校時代が、特別感があって好きなんですね。

──確かに。高校生ならではの輝きというのが、描きがいのあるところなんですね。

それが今、子育てしている自分とマッチしなくなってきているので、もう「泡恋」がSho-Comi最後の連載かなとも思っているんですけどね(笑)。何度もそういうふうに「もうこれで最後」とか、なんならマンガももう描けないかもって思うタイミングがあったんですけど、不思議とこうして描き続けてるんです。「狂想ヘヴン」のときには体調を崩して、マンガ家を辞めようかって思っていたけど、担当が代わっていろんなチャレンジに満ちた「今日恋」を始められたり。「みせコド」が実写化することになったから、宣伝のためにはSho-Comiで描き続けたほうがいいねっていうことになったり。子供が産まれてからも、待機児童の多い地域だし保育園に入れなかったらもうマンガは描けないなって思ってたんですけど、クジ引きで一番に入園が決まったり(笑)。

──マンガの神様とSho-Comiの神様に導かれてきたんですね。

締め切り通りにちゃんと上げられる作家でもなかったので、毎回精神的に削られてましたけどね。

──Sho-Comiは月2回刊で定期的な休みがないので、この連載に出演していただいたほかの作家さんたちも、口を揃えて「過酷」とおっしゃっていましたよ(笑)。

そうなんですか? 皆さん番外編とかバンバン描かれているから、余裕でやってるのかと思ってました(笑)。「みせコド」の連載中に産休をいただいたんですが、連載再開後も、Sho-Comi史上初だという隔号掲載の措置を編集部がとってくださって。頭が上がらないですね。

──史上初なんですね!

担当編集 はい。お子さんがいて長期連載するって、おそらくSho-Comi史上初じゃないですかね。少なくともここ30年くらいでは水波先生だけだと思います。先生が伝説を作っていらっしゃいます。

本当に特別な措置をとっていただいていて。子育てしていると、作業できる時間が出産前と比べると大幅に減っちゃうので、すごくありがたいです。Sho-Comiは「速く描けない人は連載はできない」っていう感じの雑誌だったので、まだ自分がいさせてもらっていることにびっくりしています(笑)。

Sho-Comiが求めてくれる限りは

──来年でデビュー20周年を迎えますが、どんな心境ですか?

現在Sho-Comiで連載されている「泡恋」のカット。

そうですね……最初の10年は本当にマンガ漬けの10年で、誌面でお祝いをしていただいたり、10年もいられたっていう実感がすごかったんですけど、そこからの10年は私生活が激変して、休み休み描いてきたので、あんまり実感がないんですよね(笑)。作品が実写化されるとヒット作家の称号を得るようなイメージでいたし、周りからは私もそう思われているのかもしれないんですけど、実際は自分の感じ方は何も変わってないんです。ネームとか苦手なものはいつまでたっても苦手だし、締め切りは毎回憂鬱だし(笑)。それでも、結局はどんなに苦しくても自分が頭と手を動かして生み出し続けるしかないというのは、新人の頃も今も変わらないです。

──今後やってみたいことや、描いてみたい作品はありますか?

うーん、でもいまだに、カラーとかで描いていて一番楽しいイラストってSho-Comi世代に向けたものなんです。顔のバランスとかも描いていて一番楽しいのが高校生。そこは変わらないところですね。社会人になるとちょっとかわいさがなくなって、瞳を大きくすると読みづらさが出てきちゃうので、もしそれを描くなら絵柄の研究をしなくてはいけないなと思いますし。

──では今後も基本的には、引き続きSho-Comiというフィールドで活躍していけたらという感じでしょうか。

Sho-Comiが求めてくれる限りは、そうですね。好きで読んでいた雑誌でデビューできて本当にラッキーだったし、こんなに長くやらせていただいて、幸せなことでしかないですね。

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水波風南(ミナミカナン)
水波風南
11月12日埼玉県生まれ。1999年に少女コミック増刊号(小学館)にて「実のある“彼女”」でデビュー。初の長期連載となる「レンアイ至上主義」が280万部を超える大ヒットに。2001年に発表した「蜜×蜜ドロップス」はドラマCD化を皮切りにOVA化、ゲーム化された。2012年には「今日、恋をはじめます」が武井咲、松坂桃李主演により実写映画化。2017年には「未成年だけどコドモじゃない」が中島健人(Sexy Zone)、平祐奈、知念侑李(Hey! Say! JUMP)出演により実写映画化される。現在はSho-Comi(小学館)で「泡恋」を連載中。

2018年12月20日更新