「シキザクラ」ゲスト声優 東海オンエア としみつ&虫眼鏡 | 岡崎の見慣れた風景がアニメの中に「あの暴れん坊チキンまで? なんでここまで再現するの!?(笑)」

10月より放送中の「シキザクラ」は、東海エリアを舞台に、東海出身のスタッフ・キャストが中心となって作るオリジナルTVアニメ。11月20日より順次放送される第7話には、愛知県岡崎市を拠点に活動する6人組YouTuber・東海オンエアのとしみつと虫眼鏡が声優として参加する。

これに合わせ、コミックナタリーではとしみつと虫眼鏡にインタビューを実施。2人は本作の第一印象について、見慣れた風景の再現度に思わず笑ってしまうほどだったという。また苦戦したというアフレコのエピソードや、ほかの地域にはない岡崎の魅力、「シキザクラ」に期待する今後の展開についても聞いた。

取材・文 / 前田久

声優の存在を意識するきっかけは、日野聡さんでした(虫眼鏡)

──おふたりが“声優”という存在を意識したきっかけは、覚えてらっしゃいますか?

虫眼鏡 僕は本当に、いわゆる“アニヲタ”と呼ばれるような子供だったので、何か自然とその存在を知ったような気がします。……でも、そうですね。アニメを観ていて、「あのキャラとこのキャラの声は同じ人だ!」と気付いた瞬間だとか、「自分の好きなタイプのキャラはこういうキャラなんだ」と自覚した後、いろんな作品でそのタイプのキャラを同じ声優さんが演じていることに気が付いた瞬間があって、そういうときにびっくりしたというか、面白い!と感じた経験は、声優さんの存在を意識するうえで大きかったかもしれません。

──ちなみに、具体的にはどなたでその経験を?

虫眼鏡 日野聡さんです。今となっては、「よもや! よもや!」の。

──おお。となると、もしかしてきっかけになった作品は「灼眼のシャナ」ですか?

虫眼鏡 「シャナ」と、「ゼロの使い魔」でした。

──どちらも日野さんが主人公の男の子を演じていて、ヒロインが釘宮理恵さん。

虫眼鏡 そうです。おふたりのペアが大好きだったんです。

としみつ 僕も虫さんと同じで、子供の頃に「このキャラとあのキャラが同じ声優さんなんだ!」と驚いた経験は大きかったですね。でも、それよりも大きかったのは3歳上の兄の存在なんです。兄貴は僕よりかなりアニメが好きで、それに引っ張られて「シャナ」も観てましたし、「らき☆すた」とか「魔法先生ネギま!」とか「バカテス」(「バカとテストと召喚獣」)とか、そういったアニメを大量に観ていたんです。

──キッズ向けではない、ちょっとマニアックな作品に触れていた。

としみつ それでも、そこから虫さんみたいにそこまで深く声優さんに興味を持っていったたわけではなかったんですけど……ただ、「ネギま!」のオープニングって毎月変わったじゃないですか。

──同じ「ハッピー☆マテリアル」という曲を、違う声優さんの組み合わせで歌うバリエーションが6バージョンできて、6カ月連続でシングルがリリースされました。チャートでも上位に食い込んで、話題になりましたね。

としみつ そのバージョン違いのCDが全部うちにあって、よく聴いていたんです。実はてつや(※東海オンエアのリーダー。「魔法先生ネギま!」好きを公言している)より多く聴いてるんじゃないかな(笑)。声優さんを意識するという意味では、その体験が大きかった気がします。

──お好きなアニメ、人生に大きな影響を受けたアニメはありますか?

虫眼鏡 アニヲタには難しいですね、その質問。うーん……そう聞かれると……「エヴァ」か「〈物語〉シリーズ」かなと思います。「エヴァ」はTVシリーズ(「新世紀エヴァンゲリオン」)も「(ヱヴァンゲリヲン)新劇場版」も全部観てますけど、「新劇場版」のほうが好きです。「〈物語〉シリーズ」はアニメを観終わったあと、お話の続きが知りたくて原作……あの講談社BOXの赤い本を、「けっこう冊数があるなあ」って苦しみながら揃えたりしました(笑)。

──講談社BOXは文庫で出ているライトノベルやマンガの単行本と比べると高めのお値段ですものね。子供の頃にそれはすごい。としみつさんはどうですか?

としみつ 僕はゴリゴリの(週刊少年)ジャンプっ子で、影響を受けた作品は「トリコ」(※)……と言っておくべきかも知れないんですけど(笑)、正直に話すと、「NARUTO」と「BLEACH」が自分の中の2大巨頭です。もちろん、「トリコ」も大好きなんですが。「BLEACH」は、作品から感じられるゴリゴリの厨二病的なカッコよさに、子供心にゾクゾクしてました。「NARUTO」は主人公のナルトの生きざまというか、心を曲げないところにカッコよさを感じて、生きるうえでの影響を受けましたね。

※動画内でたびたび言及しており、作者の島袋光年からサインも受け取った。

──虫眼鏡さんは島﨑信長さんとラジオをやられていますし、としみつさんはリサイタルズとして木村昴さんとコラボされています。アニメ・声優業界との関わり方を、どうお考えなのでしょう?

虫眼鏡 やっぱり自分がちっちゃい頃からずっと好きだったものなので、お仕事として関わっている意識はもちろんありつつも、本当に、ただのファンみたいな感覚です。「えっ、僕なんかがそこに関わらせてもらっていいんですか!?」っていう気持ちが強くて。それは今回の、「シキザクラ」で声優を務めさせていただくお話もそうですね。「ラッキーだな」と思いながら、ずっとやらせていただいています。

部屋とスタジオで、台本が顔を変えてくるんです(としみつ)

──なるほど。では、本日の本題ですが、そんなおふたりが今回関わられた「シキザクラ」というアニメの第一印象はいかがでしたか?

としみつ 地元である岡崎が舞台になることにまず驚きました。完成した映像を観ても、想像以上に見慣れた岡崎の風景がアニメで再現されていて、もう「すごい」を通り越して、思わずクスッときてしまったくらいでした。「なんでここまで再現するの!?」って(笑)。

アニメ「シキザクラ」第7話より、暴れん坊チキンの登場シーン。暴れん坊チキンは岡崎市のからあげ専門店で、東海オンエアの動画でもたびたび名前が挙がる。

虫眼鏡 わかるわー。暴れん坊チキン(※岡崎にある唐揚げ専門店)がアニメになるのは、普通に考えたらおかしいもんな(笑)。僕は最初に企画を聞いたときは、ついに東海地方からアニメをやるんだ、やってくれるんだと思って、東海が舞台で大丈夫かなっていう若干の不安はありつつも、うれしかったです。

としみつ やっぱうれしいですよね。しかもそんな、自分が今も住んでいる街が舞台になっているアニメで、声優をやらせていただける。自慢できます。

──出演されるのは第7話です。こちらの台本を読まれて、どんなご感想を持たれました?

遠藤(CV:虫眼鏡)とコアラ幻覚(CV:としみつ)。

虫眼鏡 ゲスト声優をやらせていただけるといっても、セリフはひと言、ふた言だと思っていたんです。ところが台本を読んだらけっこうしっかりセリフがあって、しかもまあまあ重要な役なので、正直なところビビりました(笑)。さらにちょっと癖のあるというか、演じるのは難しいのでは……?みたいなキャラだったので、とにかく最初は感想も何も、ドキドキする感覚が強かったですね。

としみつ 僕も最初の感想は、「けっこうガッツリとした内容がきたなあ」という感じでしたね(笑)。それはもちろん、とてもうれしいことなんですけど、同時にプレッシャーでもあって。また僕の役も、コアラ幻覚という、虫さんの演じた遠藤とはまた違う癖のある役で……。

──驚かれたでしょうね。実際のアフレコはいかがでした?

としみつ 僕は声優をやらせていただくのは完全に初めてだったので、完成していない状態の絵に声をあてるとは思わなかったんです。これがまず、めちゃくちゃ難しかったです。またその映像を観ることで、部屋で開いた台本と、スタジオで開く台本が一気に顔を変えてくるんですよ。これにもけっこうビビりました。ミスったら、完成する映像がとんでもないことになるな、と。もともと意気込んではいたんですけど、そこでスイッチがさらにガン!と入ったような感じがしたのを覚えています。

──「顔を変えてくる」というほど、印象が変わるのは、具体的にはどんなところが?

後方がコアラ幻覚。

としみつ 例えば、断末魔の声を上げるにしても、セリフ1つから受ける印象と、動きもセットになって受ける印象が違うんです。絵がつくと、同じセリフの言い方に、無限のパターンがあるように思えてくる。もう、本当に、何もかもが家で台本を読んでいたときの感覚と違うんですよ。

虫眼鏡 家で台本読んでるときは気持ちよく読めるっていうか、「俺、うまいかもしれんわ」と思いながら読んでいたんです。

としみつ わかるー!(笑)

虫眼鏡 でも、いざ収録のためのブースに入ってみると、絵も動くし、セリフを入れる尺(映像の長さ)が決められてるじゃないですか。「この時間までに言い切らなきゃいけない」「余らないようにしゃべらなきゃいけない」と、演じるうえでは余計なことを考えなきゃいけなくて、それで最初のほうはもう、てんやわんやになってしまって。普通にすら読めなかったです。急に読むのが難しくなる感じがありましたね。

──それは普段の動画制作で、ちょっと演じるような要素のあるものを撮影するときとはまったく違いましたか?

遠藤

虫眼鏡 そうですね。アニメのアフレコでは、「このキャラクターの裏に虫眼鏡がいるな」と思われてはいけない。自分ではない人になったつもりでしゃべらなきゃいけないので、そのセリフの解釈がすごく難しかったです。収録現場では、監督さんたちにいっぱい助けてもらいました。

としみつ 僕らが撮るコント系の動画って、どこまでいっても、そこにいるのはあくまで“僕”なんですよ。役があったとしても、ふざけちゃうし(笑)。でも今回に関しては、コアラ幻覚になりきるというか、役を憑依させなければいけなかった。それって動画制作どころか、人生の中でそうそうない経験でしたね。

──完成した映像を拝見したのですが、違和感はなかったような。

としみつ それはもう、僕らが子供のときから、声優さん以外の方がゲスト出演するアニメを観てきましたからね。大変申し訳ないんですけど、そういうものの中には、「なんだこれは!!」っていうぐらい棒読みのものが……(笑)。

虫眼鏡 いやー、ホントにね。すごく人気のある、今でもよく観られている某アニメとか、「なんでこれ、録り直さないんだろ?」ってずっと思ってるもの(笑)。

としみつ その気持ちを昔から味わってるから、今回「シキザクラ」を観る人に、そういう印象だけは与えちゃいけないと思っていたんです。

虫眼鏡 でも完成した映像を観ると、やっぱりほかの声優さんの演技は本当にキャラがしゃべっているような感じがちゃんとするけど、自分のキャラは「めっちゃ僕やん!」とは感じてしまいました。もしかしたら自分の声だからかもしれないですけど、きっとほかの方が観ても、そこは全然違うと思いますね。

としみつ そうですね。自分も「これじゃただのとしみつの声じゃん!」と突っ込まれたら負けだと思ってがんばりはしたんですけど、やっぱり声優さんの芝居はそれで追いつけるレベルじゃないんです。声が役に合わせて変わっているだけじゃなくて、性格、中身まで役になりきっている感じがする。憑依という言葉じゃ足りないくらい。憑依の上の何かですよ。