武者サブがコミックアプリ・マンガワンとWebマンガサイト・裏サンデーで連載している「先生で○○しちゃいけません!」は、保健の由井ちゃん先生が正しい性知識を教えてくれる“性教育エロコメディ”。同作には現役の養護教諭でありながら、性教育インフルエンサーとして活動するコンドームソムリエAiが監修協力として携わっている。
「先生で○○しちゃいけません!」の5巻発売に合わせ、コミックナタリーではその魅力を掘り下げる特集を展開。「彼氏とエッチするのが怖い」「性欲のせいで勉強が手につかない」「彼女が妊娠してしまったかも」といった作中で描かれる思春期の子供たちによる性の悩みと、それに対する由井ちゃん先生の回答を紹介する。また武者サブとコンドームソムリエAiによる対談もセッティング。マンガ家であり思春期の子を持つ親の武者サブ、リアルな学校現場に立つ教育者であり性教育インフルエンサーのコンドームソムリエAiに「先生で○○しちゃいけません!」に込めた思いを聞いた。
綺麗で優しい保健の由井ちゃん先生は、生徒からの人気も絶大で、みんながよからぬ妄想をしそうになるほど魅力的。経験豊富そうな彼女を頼って、生徒たちは今日も彼女のもとへ性の悩みを相談しにやってくる。しかし実は由井ちゃん先生、性経験どころか交際経験もゼロ。悩める生徒の支えになりたいという真摯な思いから「性教育は人が幸せになるための知識」をモットーに、実体験では語れない分、膨大な知識で生徒に寄り添い導いていく。
オナニーのせいで勉強が手につきません!3-D 宇佐美慎也(1巻収録 第4話より)
初エッチって
気持ちよかった?3-B 草壁ゆりあ(1巻収録 第5話より)
オレ親父に
なるかもしれません!2-A 西野虎牙(3巻収録 第12話より)
生理がつらいなんて
言えません!3-D 鶴巻貴音(3巻収録 第14話より)
エロと性教育のセット売りはいいアプローチ
(コンドームソムリエAi)
──まずは、この作品がどのように誕生したのかを教えてください。
武者サブ 先代の担当編集さんがいくつか企画を提案してくださったんですけど、その中に保健の先生が生徒からの性の悩みに答えてくれるというアイデアがあったんです。直感的に面白そうとは思ったんですけど、そのお悩みというのがエッチのマル秘テクニックみたいなことだったら描ける自信ないなあ……と迷っていて。でも一緒に持ってきていただいた関連書籍を見たら、全然エッチなんてことはなくって真面目に性を取り扱っているものばかりだったんですよね。性教育って大事だなって改めて思ったと同時に、自分の子供が思春期になったタイミングだったのでもっと掘り下げてみたいなと興味が湧いたんです。
──Aiさんは単行本1巻の発売にあたって監修協力に入られたんですよね。現役の養護教諭でありながら、性教育について情報発信されている立場として本作をどうご覧になりましたか?
コンドームソムリエAi 保健の先生が出てくる学園ものっていっぱいあると思うんですけど、けっこうヒマそうに見えたり、もしくは「先生いないね。じゃあ保健室使っちゃおっか」みたいに都合よく使われてたりして、具体的に何してるのかってあまりわかってもらえてないじゃないですか(笑)。だから保健の先生を主役に据えて、実はいろんな仕事をやってるんだよって描いてくれるマンガはなかなか貴重だなと思いました。それに私から見ても、このマンガで生徒たちが持ってくる相談って本当によくあるケースなんですよ。「こんな保健の先生がいたらいいな」っていう理想の由井ちゃん先生に、現実であるあるな設定を盛り込んでいくのが面白いなと思いました。
武者サブ ありがとうございます。
──武者サブ先生は、本作を描くうえで“スケベ心を刺激しながら、とっつきやすく”ということを心がけていると単行本のあとがきでおっしゃってましたね。
武者サブ そうですね。だからAiさんに監修を最初お願いしたときも「性教育マンガだとしてもこんなエッチなのはダメ!」って怒られちゃうんじゃないかとヒヤヒヤしてたんです。
Ai そんなことしないですよ!(笑) 性教育に関する本や資料ってたくさんありますけど、真面目に説明すればするほど思春期の子たちって遠ざかっていきますからね。私もかつて桂正和作品や高橋留美子作品で描かれるおっぱいを見て思春期の欲求を満たしてきましたし(笑)、若者たちが欲するエロとセット売りして性教育を行うのはとてもいいアプローチになってるなと思ってます。性に対する興味、関心を呼び水に、正しい性教育に導くというアプローチに関しては私も同じです。授業で興味を持った生徒たちが「コンドーム」ってSNSで検索したときに、エロコンテンツに紛れて正しい情報を届けられたらいいなってことでコンドームソムリエの活動を始めましたから。
由井ちゃん先生は“否定しない”キャラクターに(武者サブ)
──実際に物語はどんなふうに作っていってるんですか?
武者サブ 基本1話完結で毎回テーマが変わるということもあって、そのとき世間で話題になってるものからヒントを得ることも多いですね。担当編集さんと「こんなニュースがありましたね」とか「誰々のあの発言が話題になってますけど、どう思います?」みたいにお話していく中でストーリーを膨らませていく感じです。
Ai ストーリー作りは武者サブさんにお任せしています。普段教育者としてやってる自分がネタの提供から監修に入ってしまったら、無意識に説教くさくなってしまうかなと思っていて。私がチェックするのは、養護教諭としての由井ちゃん先生の行動が非現実的な表現になっていないかぐらいです。
──性というセンシティブな題材を扱うにあたって、やはり表現は気を使うことが多いですか?
武者サブ そうですね。あまりにエロが強すぎると不快感を与えたり、性癖を歪ませたりする可能性もありますし、その人が触れてきたコンテンツによってエロの許容範囲も全然違うと思うので。編集さんの意見も聞きながら、危ないシーンはなるべく削ぎ落とすようにはしています。具体的に言うと、汗が多いのやアブノーマルなプレイはNG。あとは由井ちゃん先生が嫌がることをしたり可哀想な思いをするのは、意味があるとき以外は描かないようにしてますね。
Ai そこに関しては、サブさんと編集さんがすごく気を付けてくれているなっていうのを感じます。あと武者サブさんにお願いしているのは、「最後にはちゃんと病院に行ってね」ってなるべく補足してもらうこと。保健の先生ってあくまでも教員なので、専門医レベルの見立てができるわけではないんですよ。だからこそしかるべき機関につなぐってことも「コーディネート」っていう養護教諭の大事な仕事で、由井ちゃん先生に相談した生徒が最終的には専門機関に行くことを助言されているというのを1コマでも手書きの数行でもいいので可能な限り入れてもらうようにしていますね。
武者サブ それと由井ちゃん先生のキャラクター的な部分で、生徒たちの悩みを否定せずに聞いてあげるってことも心がけてます。Aiさんとお話ししてても思うんですけど、保健の先生って本当に優しいんですよね。2巻ではマキちゃんという女子生徒が出てくるんですけど、彼女のお母さんは少しヒステリックな性格でして。確かにマキちゃんのお母さんが言っていることもわかるんだけど、あんなふうに怒っている姿を見たら子供は困ったことがあっても親に相談しにくいよなあとも思うんです。これは自分も気を付けなきゃいけないなあと常々心がけてることでもあって、センシティブな性という題材を扱うからこそ由井ちゃん先生は相談しやすい存在であるようにしています。
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快楽を求めてのセックスもアリ、という一言に救われた(Ai)