コミックナタリー PowerPush - スーパーダッシュ&ゴー!

スーパーダッシュ&ゴー!発の注目新人 新世代の作家・高畠エナガがこれからを語る

アイザック・アシモフの推理モノに感銘を受けた

──この度ミラクルジャンプに移籍ということで、ひとまずは番外編の「人魚達の花籠」が掲載されました。

ミラクルジャンプに掲載された「人魚達の花籠 番外編」扉ページ。

ミラクルジャンプもちょうどお休みの期間に入ってしまうので、スーパーダッシュ&ゴー!で連載していた「人魚の花籠」の続きを載せるわけにもいかず……。今回は番外編ということで、ちょっと軽い読み味の、誰が読んでもイチから楽しめる話を描きたかったんです。

──本編の「人魚の花籠」と人魚と人間が同居しているという世界観は同じですが、番外編の「人魚達の花籠」は学園で起きた事件を解決していくという、まったく違うお話でした。

推理モノって、1回描いてみたかったんです。アイザック・アシモフのSFで推理モノの話があるんですが、架空のファンタジーでも推理モノは描けるんだって知って、高校生のときに感銘を受けたんです。それで、いつか描いてみたいなと思っていたので。

──やはり日常とファンタジーが融合しているのがエナガ節という気がしています。

「人魚達の花籠 番外編」より。「人魚の花籠」同様、人魚と人間が当たり前に同居する世界が描かれている。

人魚には水着とかではなく服を着せて、人間と共存している世界を描きたかったんです。うーん、「少し不思議」みたいな感じが好きなのかな。

──「少し不思議(SF)」ってことですね。

昔、コミックボンボンで「メダロット」という作品があったんですけど、普通の世界なのにメダロットというロボットが主人公のそばに当たり前にいるんです。現実の中に、こういった不思議な存在がいるというのは、「メダロット」に影響されているのかな、と。

とにかく読みやすく、トーンは添えるくらいに

──エナガさんの画面って、トーンが多いのが印象的なんですが、「人魚達の花籠」では、トーンが少し減って、ベタが増えている印象でした。

「人魚達の花籠 番外編」では、ベタを基調とすることに挑戦した。

今回はベタと線画を基調にして、そこにトーンを置くという手法を取りました。このほうが、どんな印刷形態でも見栄えがするんですよね。グレースケールだけだとやっぱり、印刷したときにコンディションが全然違ってくるので。トーン主体だとクオリティが左右されてしまうので、ベタを基調にしたほうが映えるなと、今回やってみて思いました。

──いろいろと試行錯誤されてるんですね。

はい。これならイケるという手応えが、やっと今回ありましたね。あと、トーンは10%、20%の濃さに限定して、あまり濃いものは使わないようにしました。「Latin」の頃はもう、目の下の影とかバリバリ入れてたんですけど、いざ読むときに情報量が多すぎると見にくくなっちゃうのかなと思ったんです。なので今回は、トーンはもう添えるくらいにして、とにかく読みやすい、わかりやすいようにしようと注意して作画しましたね。

スーパーダッシュ文庫からノベライズを出す話も

──来年春に月刊誌として新装刊されるミラクルジャンプでは、完全新作を連載するということも告知されました。

春からミラクルジャンプで連載する新作はファンタジーを考えてます。ちょっと気合入れてるんで、まだ先ですが楽しみにしてもらいたいですね。

──「人魚の花籠」本編の続きは、今後どこかで発表される予定はあるんでしょうか。

「人魚の花籠」カット

それは絶対読めるようにはします。まだどこかとは言えませんが、必ず。まあ長すぎないように、単行本5、6巻くらいできたらいいなと思っています。サクッと読んで、サクッと終わる感じでできたら。あとスーパーダッシュ&ゴー!のWEBサイトでも、短編集収録作の後日談や外伝を描いていく予定です。

──いまは「猫又荘の食卓」の番外編が公開されてますね。

「猫又荘」は季節ごとにいろいろネタが思い付くので、どんどん描けるなと思ってます。いま公開中の番外編みたいに、グレースケールでサッと描くタッチは気に入ってるので、またやりたいですね。スーパーダッシュ文庫からノベライズを出すという話もいただいてます。それはやはりライトノベル発のマンガ雑誌ならではの企画ですし、楽しみですね。

スーパーダッシュ&ゴー!

スーパーダッシュ文庫発のマンガ雑誌・スーパーダッシュ&ゴー!を前身とする完全無料のWEBマンガサイト。毎月10日、25日に更新される。

「Latin 高畠エナガ短編集1」2012年4月25日発売 / 630円 / 集英社
「Latin 高畠エナガ短編集1」

壊れかけのアンドロイドと青年の奇妙な同居生活。喧嘩ばかりのなか、互いの過去を知り、心を通わせていくが……。表題作「Latin」を含む4編を収録! 新世代漫画家・高畠エナガが放つ珠玉のデビュー作品集!

「100─HANDRED─ 高畠エナガ短編集 2」2012年12月19日発売 / 630円 / 集英社
「100─HANDRED─ 高畠エナガ短編集 2」

地表の98%が砂漠となった未来……。太古の人類が遺した“箱"の真実を開く「鍵」を受け継ぐ少年が用心棒に雇ったのは、100もの内蔵兵器を体内に隠し持つ赤い手の少女型アンドロイドだった……。最先端コミック作家高畠エナガの可能性が膨張する作品集第2弾!! 表題作を含む4編を収録!!

高畠エナガ(たかばたけえなが)
高畠エナガ

1989年生まれ。大阪府箕面市在住。成安造形大学卒。中学2年生よりGIFアニメでネット上での創作を開始。高校2年生より“会長エナガ”のペンネームでウェブ上にマンガを発表。中でも大学4年生の時に発表した「ZELBESTY」はその画力、キャラクター共に多くの読者から絶賛される。「ZELBESTY」は後に大学の卒業制作の同人誌として発行。また「デジタル・コミック大賞2008」では準大賞を受賞する。スーパーダッシュ&ゴー!2012年6月号(集英社)より「100-HANDRED-」を短期連載。同誌2013年2月号からは「人魚の花籠」を連載する。2014年春よりミラクルジャンプ(集英社)にて完全新作を連載予定。