コミックナタリー PowerPush - スーパーダッシュ&ゴー!

スーパーダッシュ&ゴー!発の注目新人 新世代の作家・高畠エナガがこれからを語る

集英社のライトノベルレーベル・スーパーダッシュ文庫によるマンガ誌・スーパーダッシュ&ゴー!(集英社)は、人気ライトノベルのコミカライズのみならず、高畠エナガ、藤ちょこ、星屑七号といった気鋭の新人マンガ家を多くデビューさせてきた。

中でもデジタルネイティブの新世代・高畠エナガは、初の単行本「Latin」が、新人ながらCOMIC ZINの単行本売上ランキングで1位を獲得し脚光を浴びた。コミックナタリーは、この期待の新人エナガにインタビューを敢行。また惜しくも休刊し、紙からWEBへと発表媒体を移したスーパーダッシュ&ゴー!のラインナップも併せて紹介する。

取材・文/坂本恵

高畠エナガ インタビュー

中学生の頃はGIFアニメを作ってネットに投稿してました

──1989年生まれということは、いま24歳ですよね。マンガを描き始めたのはいつ頃なんでしょうか。

えっと、小学6年生ですね。友達がノートにマンガ描いてて、それに影響されて「俺も描こうかな」みたいな感じで。思い返せば絵とか全然ヘタなんですけど、やっぱ楽しかったですね。仲間うちで読んでもらったりして。

──どんなマンガを描いてたんですか?

小学校で歴史の授業があったので、その歴史人物がバトルするマンガ描いてました。ペリーが主人公で、ライバルが織田信長で……なんか足利三人衆っていうキャラが出てきてそいつらと戦ったりとか(笑)。

──ははは(笑)。

でもちゃんと完結させたんですよ。あとガンダムにハマってたのでガンダムのマンガ描いたり、「無限の住人」にハマったころは、「無限の住人」的な侍が戦うマンガ描いたりとか。中学生の頃はGIFアニメが流行ってたので、作ってネットに投稿したりしてましたね。それから高校生2年生のときに新都社というサイトで「Vippers」というマンガを投稿し始めたんですが、やっぱりすぐ感想が来るのが面白かったです。

──反応が返ってくるのが。

(左)石田スイ「東京喰種」1巻、(右)ONE原作・村田雄介作画「ワンパンマン」1巻

そう。あとほかの人も面白いマンガいっぱい描いてるし。「東京喰種」の石田スイさんや「ワンパンマン」のONEさんも、新都社出身ですしね。みなさん不思議とヤングジャンプに集まってきてるんですが。

──そのあたり、横のネットワークもあるんですね。

意外と狭いんですよ、ネットって言っても。ミラクルジャンプNo.15に載ってる「ダンザイオー」の成瀬乙彦くんも、中学生の頃にネットで知り合ったんです。ずっとすげえなーと思ってて、彼の高校生のときの卒業制作展も見に行ったほど好きなんですよ。

──この号、エナガさんの「人魚達の花籠」が載っている号ですね。

そうなんです。一緒の雑誌に載る日が来るんだなあと、感慨深いですね。

松本大洋さんの「ピンポン」に影響を受けました

──新都社で投稿をはじめたあとは?

コミティアには4回ほど出店しました。大学の卒業制作で描きはじめた「ZELBESTY」を、いまも地道に描き続けています。

「ZELBESTY」表紙

──「ZELBESTY」って割と王道な少年マンガだと思うのですが、エナガさんはどんなマンガを読んで育ってきたんでしょうか。

幼稚園児の頃まで遡るんですが、親がジャンプを読んでたのでジャンプっ子でしたね。その頃は「ジョジョ」とか「ROOKIES」が連載してたんですけど、幼稚園児なので難しくて全然分からなくて。でも「とっても!ラッキーマン」なんかは子供向けで分かりやすかったので、そこからジャンプに入った感じです。それと並行して、自分用のマンガがほしくて、コロコロコミックを読み始めました。小学校6年生くらいの頃にコミックボンボンに移り変わって、その後ガンダムにハマってガンダムエースを購読し始めて。高校生くらいになると松本大洋先生の「ピンポン」にめっちゃハマって。「ピンポン」はいまでも根幹にありますね。

──「ピンポン」から影響を受けたのは、どういう部分ですか?

「ZELBESTY」のバトルシーンでは横長のコマ遣いが多く見られる。

描き方や演出はすごく影響されてます。淡々とした感じも受け継いでるかな。あと志村貴子さんの「青い花」も高校生のときに読んで、会話の演出みたいなところは影響されてると思います。「ZELBESTY」の頃になると、モチーフというかモデルにしたのは弐瓶勉さんの「BLAME!」とか。あとスケール感みたいな表現の仕方としては「火の鳥」や「カムイ伝」も参考にしてました。見開きで横長のコマ遣いはそのあたりからですね。

──確かにコマの遣い方は斬新です。

「カムイ伝」からは視線誘導も勉強しました。バトルもので移動するときはこう動く、こう見せたらいいとか、そういう流れを参考にしてアクションを描いてましたね。

ジャンプブランドに憧れてたんです

──そんな「ZELBESTY」が編集さんの目に止まり、デビューすることになったわけですよね。スーパーダッシュ&ゴー!はスーパーダッシュ文庫というライトノベルのレーベルから派生したマンガ雑誌ですし、やっぱりコミカライズ作品が多いですが、そういう場を選んだのはどうしてだったんでしょう。

スーパーダッシュ&ゴー!創刊号

うーん……集英社だったから、ですかね(笑)。僕、ジャンプっ子だったので、ジャンプブランドに憧れがあったんです。こう言っちゃうと語弊があるかもしれないんですが、ゆくゆくは同じ集英社のほかの雑誌で連載したいなという気持ちもあったので……。

──けっこう計画的なんですね(笑)。

やっぱり、将来的には誰が読んでも楽しめるマンガを目指していきたいんです。メジャーに行きたいとずっと思っているので。なのでマンガ好きの人だけが読むような雑誌じゃなくて、広く一般に向けた場所で描けたらなあという気持ちがあります。

スーパーダッシュ&ゴー!

スーパーダッシュ文庫発のマンガ雑誌・スーパーダッシュ&ゴー!を前身とする完全無料のWEBマンガサイト。毎月10日、25日に更新される。

「Latin 高畠エナガ短編集1」2012年4月25日発売 / 630円 / 集英社
「Latin 高畠エナガ短編集1」

壊れかけのアンドロイドと青年の奇妙な同居生活。喧嘩ばかりのなか、互いの過去を知り、心を通わせていくが……。表題作「Latin」を含む4編を収録! 新世代漫画家・高畠エナガが放つ珠玉のデビュー作品集!

「100─HANDRED─ 高畠エナガ短編集 2」2012年12月19日発売 / 630円 / 集英社
「100─HANDRED─ 高畠エナガ短編集 2」

地表の98%が砂漠となった未来……。太古の人類が遺した“箱"の真実を開く「鍵」を受け継ぐ少年が用心棒に雇ったのは、100もの内蔵兵器を体内に隠し持つ赤い手の少女型アンドロイドだった……。最先端コミック作家高畠エナガの可能性が膨張する作品集第2弾!! 表題作を含む4編を収録!!

高畠エナガ(たかばたけえなが)
高畠エナガ

1989年生まれ。大阪府箕面市在住。成安造形大学卒。中学2年生よりGIFアニメでネット上での創作を開始。高校2年生より“会長エナガ”のペンネームでウェブ上にマンガを発表。中でも大学4年生の時に発表した「ZELBESTY」はその画力、キャラクター共に多くの読者から絶賛される。「ZELBESTY」は後に大学の卒業制作の同人誌として発行。また「デジタル・コミック大賞2008」では準大賞を受賞する。スーパーダッシュ&ゴー!2012年6月号(集英社)より「100-HANDRED-」を短期連載。同誌2013年2月号からは「人魚の花籠」を連載する。2014年春よりミラクルジャンプ(集英社)にて完全新作を連載予定。