アニメ「佐々木と宮野」春園ショウ(原作)×松岡禎丞(平野大河役)×島﨑信長(鍵浦昭役)|すべては「平野と鍵浦」から始まった “ゆるキュン”な世界に漂うリアルな空気感の理由

松岡さんと島﨑さんの掛け合いは、2時間じゃ足りない(春園)

──7月に発売される「佐々木と宮野」9巻の特装版には、オリジナルエピソードのOVAが付属します。こちらには平野さんと鍵くんのやりとりも収録されるとお聞きしたのですが、演じるにあたって改めて大事にした点や意識したことはありますか?

OVAオリジナルエピソード「恋に気づく前のちょっとした話。」より、平野。

松岡 基本的にキャラクターの世界観を自然体で表現するよう心がけていて。無理にがんばろうとすると、それが視聴者の方にも伝わってしまうので。「佐々木と宮野」はドラマCDから続投させていただいていることもあり、一番最初の僕らの演技や空気感がベースになっているファンの方々も中にはいらっしゃると思うんです。いかに最初のイメージを壊さず、そのままの世界観を持ってくるかを意識しました。あと平野さんはあまりギャーギャー騒ぐタイプではないので、常に自然な会話になるよう気を付けて。

島﨑 そうだね。アニメのキャラクターって、だいたい強い個性を持っているじゃないですか。そこがアピールポイントだったりチャームポイントだったりするわけですけど、そこばかりフィーチャーして演じるとすごく平べったくなって、生気が感じられなくなってしまう。なので、キャラクターをその世界に生きている1人の人間として、多面的に表現できたらとは常々思っていますね。ただTVアニメの「佐々木と宮野」では、ほぼ声だけの出演だったので、「平野さん、ラブ!」っていう鍵くんの気持ちを凝縮して演じました。あの一瞬の出番で多面的に演じようとすると埋もれてしまうので。OVAでは会話のシーンに尺を割いてもらえたので、「大好き」って気持ちを凝縮させるのではなく、“ちゃんとそこに存在する鍵くん”として自然に演じようと思いながら、アフレコに挑みました。

松岡 がっつり掛け合えてよかったよね。帰りにテンションが高くなって、一緒にご飯を食べにいって。

島﨑 面白かったね。コロナ禍で分散収録が多い中、久々に役でこんなに会話したって感じたし。

──春園先生もOVAのアフレコ現場にいらしたそうですが、2人の掛け合いを聞いて、いかがでしたか?

春園 もうあと2時間くらいは聞いていたかったです。

──今の尺では足りないと(笑)。

OVAオリジナルエピソード「恋に気づく前のちょっとした話。」より、鍵浦。

春園 全然足りないですよ! 尺があれば鍵くんはもっと、問題行動を起こしているはずです(笑)。そのときの台本にメモが残してあったんですけど、島﨑さんが鍵くんのリアクションとして、こういうセリフを入れたほうがいいんじゃないかと提案されていたことがあって。先ほど松岡さんも自然な演技を意識されているとおっしゃっていましたけど、「佐々木と宮野」のアニメって自然な会話がすごく多いんですよ。役者さんが提案してくださった細かいアドリブが随所にちりばめられているから、より自然な会話劇が生まれたんだなって。特に平野さんと鍵くんの会話は、おふたりの掛け合いがすごく息ぴったりだったので、余計自然に感じました。

松岡 ああ、ありがたい。

島﨑 アドリブと言っても面白いことを考えなきゃいけないわけではなくて。「うん」って相槌を入れて返したほうが自然だし、その後の会話の流れにもつながる。そういうつなぎとしてのアドリブが「佐々木と宮野」は多いんだよね。

「佐々木と宮野」4巻の「おまけ」より。

春園 マンガだとコマの流れがあるので、会話が途切れてしまっても違和感がなかったりするんですけど、実際に音声で収録されたシーンを聴くと、違和感のある流れがけっこう出てきて。脚本のチェック段階ではなかなか気付けないですし、やっぱり役者さんは生きた演技をされているんだなって。ドラマCDのお話に戻ってしまうんですけど、そのときもマンガを超えたセリフがあるなって感じたんです。「佐々木と宮野」4巻におまけマンガとして収録した「平野と鍵浦」のハロウィンエピソードで、鍵くんが「平野さん、平野さん」って声を掛けて、猫耳カチューシャを平野さんにつけようとするシーンがあって。

島﨑 ありましたね! 僕もよく覚えています。平野さんに猫耳をつけようとするって、尋常ではないじゃないですか。

──なかなかチャレンジャーですよね。

春園 マンガではコマの中に平野さんと、「平野さん、平野さん」って呼びかける鍵くんのセリフだけが登場しているんですけど、音声で聴いたら、鍵くんのかわいさがそのセリフに全力で詰まっていて。音声が付いたことでセリフが広がりを見せていたんですよね。私はそれを“平野さん、平野さん事件”として、後世に語り継ぎたいと思っています。

島﨑 いやいや、まず原作やシナリオの流れがあって、そこから想像を広げて演じさせてもらえているので。逆にマンガってすごいなと思いますよ。マンガだとコマとコマの間にあったことを、読者がそれぞれ一番いいと思うもので想像したり、補完したりするじゃないですか。それって最強なんですよ。アニメだと具体化されて描かれるので、みんなが想像を膨らませて楽しむ部分をなんと埋めようと必死ですよ、僕たちは。


2022年4月27日更新