楽園 Le Paradis [ル パラディ]|竹宮ジンがナビゲートするガールズラブの“楽園”

ついにGL初挑戦! 宇仁田ゆみ「モコ」

──第27号からは、宇仁田ゆみさんのGL連載「モコ」も始まりました。なんと、GL初挑戦ということです。

「モコ」より。

私、宇仁田さんが百合を描くというイメージがこれまでまったくなかったです。飯田さんからお話を伺ったときも「いやいやまさか、そんな……?」と思ったくらいで。

飯田編集長 ご本人も、今まで描こうと思ったことはなかったようです。でも、「いい機会だから描いてみたら?」と提案したところ、「あ……はい」と緊張気味に。

実際第1話を拝読したら、まったく違和感がなかったです。すんなり、百合マンガとして読めました。

──冒頭の始まり方からして、すごくナチュラルですよね。女子高生・紅美が、同級生の雪をなんとなく観察してるところから始まって、だんだん2人の距離が縮まっていく。

「女の子を女の子が好きになる」ということを、ことさらに特別なこととして描いていない、どこにでもありそうな感じで描いているのが素晴らしいですよね。1ぺージめくるごとに「わ、わかるー!」と悶えました。

ガールズラブの“楽園”描き下ろしイラスト

宇仁田ゆみ

宇仁田ゆみ

水谷フーカ

水谷フーカ

鬼龍駿河

鬼龍駿河

──絵柄もモノローグも一見淡々としてるのに、2人の心がどんどん近づいていって、胸がときめきました。

この作品は「百合は読まない」という人こそ、すんなり読めちゃうと思うんです。「こういうのもあるんだ」というところから入っていただくといいのかもしれない。鬼龍さんの「乙女ループ」もそういうジャンルの作品なので、あわせて読むといいのかも。「百合か?」「百合じゃないのか?」「百合になった!」「戻った!?」の繰り返しだから……。

飯田編集長 まつりの気持ちに奈緒がまったく左右されないからね(笑)。

命がいくつあっても足りない? かずまこを「純水アドレッセンス」

──楽園創刊号から「ディアティア」を連載されていたかずまこをさんも、ガールズラブでデビューされた作家さんです。楽園コミックスで、年の差ガールズラブをテーマにした「純水アドレッセンス 完全版」 が刊行されていますが、さらにその続編となる新刊「純水ルミネッセンス」が出ることに。カッコよすぎる保健医・松本と、純粋でまっすぐな女子高生・ななおのラブを、思いっきり堪能できます。

「純水アドレッセンス」より。

かずまさんは、とにかくセリフ選びにキレがありますよね。松本がしゃべるたびに「こ、殺される!」「命がいくつあっても足りない!」と悶えちゃいます。

──松本は「きれいなおねえさん」なんですけど、ななおの不器用なアプローチを受けると、スッと「攻め」スイッチが入るのがたまらないですよね。

「エロくないぞ!」「エロいわよ」のくだりとか、本当に最高ですよね(笑)。こんな先生が学校にいたら毎日ドキドキですよ。

──実際、ななおの毎日のドキドキが、余すところなくモノローグに表れていて、読んでいて楽しいです。「遠目にも綺麗な人がいると思ったら私の恋人だった」とか。

「純水アドレッセンス」より。

キラッキラですよね。私は年の差モノの場合、年下のほうがぐいぐい行くのが好きなんです。でも、ななおはぐいぐい行きはするものの、全然リードできてないのがかわいいですよね(笑)。大人と子供の、差の描き方が絶妙。若いときに読んだらななおの気持ちがとてもわかったと思いますし、大人は大人で松本の気持ちで読めるし、1冊で2度美味しいマンガです。

──1冊読みきってから、「純水アドレッセンス 完全版」表紙のウェディングドレスを着た2人を見ると、格別の感慨がありますよね。

これまで百合を読んだことない人が最初に手に取るのが「純水アドレッセンス」だとしたら、その人の百合に対するハードルは恐ろしく上がってしまうはず。完成度の高いシリーズです。

ガールズラブの“楽園”描き下ろしイラスト

中村明日美子

中村明日美子

かずまこを

かずまこを

蒼樹うめ

蒼樹うめ

百合も読めるし、全体としてめちゃくちゃ面白い楽園

──ここまででご紹介した以外にも、楽園にはまだまだGL作品やGLの単行本があるんですよね。

飯田編集長 1冊中に1編GLが入っているような単行本ベースも合わせると、30冊以上はありますね。水谷フーカさんの「この靴しりませんか?完全版」や、林家志弦さんの「思春期生命体ベガ」など、1冊まるごとGLの単行本もたくさん出ています。

こんなにたくさんの百合作品が読めるのは素晴らしいことですし、百合専門誌ではないところに掲載される百合作品も、本当に増えましたよね。「百合」とされるものの幅も広がってきて、「あ、こういうのも描いていいんだ」と気付かされる毎日です。そのなかでも「楽園」という雑誌には、強い個性を持った作家さんの強いマンガが集まっている。ものすごく個性的な1編1編が「楽園」という箱の中にきれいに収まっているんです。

──楽園を1冊読むと、不思議とバランスがいいですよね。

「百合が載ってるから楽園を読んでほしい」というより、「百合も読めるし、全体としてめちゃくちゃ面白いから楽園を読んでほしい」という気持ちです。続きものの作品であっても、ヒキがしっかりしてるから、1編1編読み切りのようにも楽しめて、満足度が高いです。贅沢な時間を過ごしたい方、ぜひこの機会に手にとっていただければ。

楽園 Le Paradis [ル パラディ]第27号
発売中 / 白泉社
楽園 Le Paradis [ル パラディ]第27号

コミックス 950円

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中村明日美子、蒼樹うめ、木尾士目、シギサワカヤ、水谷フーカ、かずまこを、黒咲練導、迂闊、鶴田謙二、ハルミチヒロ、kashmir、位置原光Z、panpanyaほか豪華執筆陣に加え、幾花にいろ新連載第2話掲載!

シギサワカヤ「君だけが光」
2018年7月31日発売 / 白泉社
シギサワカヤ「君だけが光」

コミックス 810円

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“ダメ社会人ガールズラブ”をテーマにした異色のシリーズ全10話と、高校時代の出会いから社会人になっての再会までを描いた「プレパラート」全話を収録した著者初のガールズラブ作品集。

かずまこを「純水ルミネッセンス」
2018年7月31日発売 / 白泉社
かずまこを「純水ルミネッセンス」

コミックス 810円

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年の差ガールズラブの最高峰コミックス「純水アドレッセンス完全版」の続編5本と、BL同人誌を軸に芽生えた女の子同士の恋愛を描く異色GL「楽園まで、あと…」を全話収録したガールズラブ作品集。

竹宮ジン「想いの欠片」がボイスドラマ化

声優陣によるボイスドラマを楽しめるサービス・A-koeにて、7月27日より竹宮ジン「想いの欠片」のボイスドラマが配信スタート。ヒロインの高岡ミカ役は赤﨑千夏、年下の美少女・原田マユ役は田中あいみ、マユの友人・伊藤サキ役は稗田寧々、「カフェPiece」のマスター・松本タカコ役は髙瀨友が演じる。

竹宮ジン(タケミヤジン)
竹宮ジン
6月13日生まれ。大阪在住。2007年に創作百合ジャンルで同人活動を始め、2009年にコミック百合姫(一迅社)にて商業デビュー。同年、楽園 Le Paradis [ル パラディ](白泉社)にて、「想いの欠片」で商業初連載を果たす。2018年7月、「想いの欠片」がA-koeにてボイスドラマ化。同年8月より、コミック百合姫で初の連載を開始する予定。現在白泉社より6冊、一迅社より10冊の単行本が発売中。