「すごいな。凡人は私だけだな」と思っていた(ゆかな)
──ここからは劇場総集編3部作についてお伺いします。劇場総集編3部作で久々にメインキャストが揃っての収録だったと思いますが、特に印象が変わったキャストはいますか?
折笠 皆さん印象はあまり変わらないかな?
ゆかな はい。「よりブラッシュアップされたな」と思う人はいっぱいいます。「コードギアス」はもともと、各ジャンルのトップみたいなキャストが揃っていたんです。
──中二病や正義感といった、個性という意味でのジャンルですね。
小清水 個性強めな人ばかり(笑)。
折笠 みんな濃ゆいとは思っていました。
ゆかな そうそう。私はそんなトップのみんなの背中を見て「すごいな。凡人は私だけだな」って思っていて。
一同 いやいや。
ゆかな 昔、櫻井(孝宏)さんにもツッコまれたんですけれど、本気でそう思ってたんですよ。どうやら割とみんな、同じようなことを感じてたみたいで。
名塚 「反逆のルルーシュ」1、2話の収録が終わったら、3話目からはもう台本を読むだけで皆さんの声が聞こえてくるくらい、個性的な声のキャストばかりでした。それが10年以上経って会ったら、皆さんさらに癖が強くなっていて……(笑)。
小清水 (扇役の)真殿光昭さんに、アドリブの息遣いで「『千草』って感情を出してください」という指示があったときとかね。それを忠実にやった結果「『千草』と言ってないのに千草感のある息になりました」と言われてて(笑)。さすがでした。
名塚 ロイドさんの「おぱ」ってリアクションとかもね。台本には「おぱ」とは書いていないのに、どういった発想からあんなに素敵にキャラクターの個性を広げられるんだろう。
ゆかな (ロイド役の)白鳥哲さん、朝からすごく思い詰めた顔でいらして「おぱ」だから。どこから出たのか気になります!
とにかく上げて落とす「コードギアス」(小清水)
──皆さんは久しぶりに改めて同じキャラクターを演じるにあたって、変化を感じたことや配慮されたことはありますか?
小清水 カレンの場合、ストーリーの立ち位置もさることながらTVシリーズでは裸要員だったんですよ。
ゆかな そ、そう言えば……シャワーとか……。
小清水 当時はよくシャワーだったり服が脱げていたりしたけど、劇場総集編3部作ではその役割がディートハルトに移っていた。時を経て需要が女子の裸でなく、男子になっていたんです。
ゆかな そう言えば「興道」の収録のとき、ディートハルトのシャワーシーンだけまだ原画で、すごく力が入っているのがよくわかりましたね。
小清水 「新規でこういうシーン入れるんだ」って驚きました(笑)。カレンのキャラクター自体は、体育会系な脳というかレジスタンスとしての活動に集中する気持ちが強くなりました。
──カレンはお母さんとの話などが描かれなかった分、そうなりますよね。名塚さんはどうでしたか?
名塚 結末を知っているだけに、それを全部忘れ、今そこで起きていることや聞いたことだけを信じて生きるということに集中して臨みました。あとTVシリーズを始めるときに、谷口さんから「ナナリーは目が見えない分、匂いや音、感触を大事にして生きている」と言われていたのですが、それを思い返して。当時ももちろん全力で演じていましたが、今だからこそ、その言葉をより深く理解できた部分もあったので、もう一度演じられるなんて贅沢だなと感じました。
ゆかな C.C.に関しては、総集編としてエピソードを選抜する中で、それらのつなぎとして作られた新規カットの多くでルルーシュとC.C.の2人で話すシーンがありました。そのほかの場面でもルルーシュの本心に以前より寄り添うお芝居を求められたので、心理的な距離感がTVのときとは少しずつ変わっていきました。
──折笠さんはいかがでしたか? シャーリーは劇場総集編3部作で大きく運命が変わったキャラクターですが……。
折笠 まず「『コードギアス』が映画になって、全部改めてアフレコするよ」と聞いた段階で「またあれを……」と本当に気が重かったんです。それで「興道」のアフレコに行ったら、劇場総集編3部作ではシャーリーが死なないということを聞かされて「ええ!?」って。しかも谷口さんから「死なない分、ルルーシュとの距離が近い」「(ルルーシュのことを)一方的に恋人だと思っていてください」と言われて。
ゆかな おっしゃってましたね。戸惑ってらっしゃるのが感じられました。
折笠 TVシリーズからいろいろと変わったので、「もう、真新しい気持ちでやろう!」と思っていました。でも「コードギアス」だからどこに落とし穴があるかわからない。「シャーリーが死なないんだ、やったー!」という私の高揚感すら利用して何かしてくるかもしれないって(笑)。だから何が起きても動じないよう、疑心暗鬼になりながらも収録を進めました。劇場総集編3部作の収録が終わってようやく「よかった、シャーリーが生きてる」「『復活のルルーシュ』というよりむしろ私としては『復活のシャーリー』でしょ!」と人知れずうれしかったです。
──それでは「復活のルルーシュ」の話を聞いたときは純粋に楽しみになったと?
折笠 いえ、私は相変わらずの疑心暗鬼。
名塚 私も疑心暗鬼というか、そもそも出られるかわからないのでスケジュールの問い合わせが来てようやく「新作も出られるんだな」と安心しました。でも「あれ? ナナリーとして出るのかな?」と不安になって。兼役とかもしていたし……。
ゆかな 「コードギアス」はたしかに、心を守るために防衛線を張りたくなってしまいがちですね。「新作ですか。ええ楽しみです」って。
小清水 私も初めて新作の話を聞いたときに「カレンはせっかくTVシリーズで幸せに終わったのに、次は絶対に不幸になるよ」とゆかなさんに言ったのを覚えてます。
ゆかな 言ってましたねー。
小清水 とにかく上げて落とす「コードギアス」だから、「薬漬けになったお母さんを助けてやっと幸せになったけど、新作では母ごと殺されるんじゃないの」なんてこそっと言って。
──皆さんの「コードギアス」に対する印象がすごく伝わりました(笑)。
カレンとC.C.の間に女子の友情を感じた(小清水)
──ただ「復活のルルーシュ」では特に誰も不幸にはなりませんでしたよね。台本を読んでの第一印象はいかがでしたか?
名塚 私は「またナナリーが囚われた。皆様、またご迷惑をおかけしてすみません」って。
一同 (笑)。
折笠 そう言えばスザクも囚われてた!
名塚 ヒロイン2人揃ってすみません(笑)。そんな印象を持ちながら読み進めました。
折笠 シャーリーは平和だったので、私は台本を読んでホッとしました。あと台本と一緒にたくさんの資料が届いていて「世界観がかなり細かくてすごいな」「みんなこんな世界に行くんだ」なんて客観的に面白そうと思っていました。
ゆかな 私は自我を失ったルルーシュの世話をする序盤のC.C.の様子に、これは「(かつての)マオに対するくらいの感じなのかな」「それともマオの件を経てC.C.なりに何か学んでの流れなのか」なんて思いつつ、新たな方々の世界にも興味津々でした。「ナム・ジャラ・ラタック」とか。
──序盤のC.C.は、TVシリーズでは考えられないほどの甲斐甲斐しさを見せていました。
ゆかな 今回のC.C.は超然としていたTVシリーズとは違ってルルーシュに対してより素の感情で相対しているんですよね。例えば真母衣波のコックピットで「もう策がない」と諦めかけるルルーシュに対して銃を突きつけるシーンは、まだ絵がなかったこともあり最初はキリッと演じました。でも、「泣いてしまうくらいのお芝居で」との指示をいただいたので、あのようになりました。
──「復活のルルーシュ」のC.C.は、ルルーシュに対してだけ見せる表情がありますよね。カレンたちに再会した辺りからいつものC.C.に戻りますけど。
小清水 今回、カレンとC.C.の間には女子の友情がありましたね。最後の別れのシーンとか寂しかったもん。
ゆかな リュックを引っ張るシーンね。当初あのシーンは一緒に録れない予定だったんですけど、私が深夜まで残って、どうにか2人一緒に収録させてもらえました。
小清水 「一緒にやりたいです」ってお願いして。
ゆかな 短いシーンですが、今回初めてC.C.とカレンの関係が1対1になった気がしたんです。だから大事にしたかった。TVシリーズの頃は、カレンにとってC.C.はゼロの邪魔なおまけみたいなところがあったと思うんですが、今回は個人として認識してくれていた気がして。
小清水 そうそう。さっきケンカができる存在という話があったけど、カレンにとってC.C.は罵詈雑言を浴びせてケンカをしても変わらない関係でいられる安心感があるというか。気が付いたらすごく好きな存在になっていたからこそ、私は最後のC.C.との別れのシーンが一番つらかったです。
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台本読んで「あ、お兄様に再会した。どうしよう」って(名塚)