TVアニメのオープニング映像はあえて意識しないように
──冒頭のカットが流れてタイトルが出た後は、街の風景などとともに王位継承者の面々やコントロールのメンバー、ノルマンディー公といったキャラクターが映されていきます。その後、サビの手前に印象的なカットがありますね。切り刻まれたような画面に、映像が二重に映されるというか……。
ここではアンジェたちの生活の二面性や、過去と現在の違いを表現しました。アンジェの子供の頃の姿と現在の姿、プリンセスが社交界で王女として振る舞う姿とスパイ活動中の姿などを同時に描いています。
──気になっていたのですが、あの切り刻まれたような画面は、何かの文字の形になっていたりするのでしょうか。
あれは文字の形ではないです(笑)。実は似たようなアイデアとして、例えばアンジェやプリンセスのシルエットを映して、そのシルエットの内側と外側で別々の映像を流すような演出も考えました。ただシルエット自体にお客さんの視線が行っても困るなと思って、結局没にしています。
──あくまで映像に注目してほしかったということですね。ちなみに、TVアニメのオープニング映像もご覧になっていると思うのですが、こちらは意識されたのでしょうか。
あのオープニング映像は本当に完成度の高い素晴らしい作品なので、逆に意識しないようにして、あくまで今回の主題歌である「LIES & TIES」に合わせて絵コンテを作るようにしました。意識すると本当に影響を受けてしまうんで(笑)。
──確かにTVアニメのオープニング映像も本当にカッコいいですよね。
そうですね。だから意識しないようにはしていても、やはり無意識に影響を受けていたことはありました。最初にコンテをまとめたとき、最後にCボールが壊れて煙を噴出させるような映像を入れようと思ったら、すでにTVアニメのオープニング映像に似たカットがあって。結局この案は没にして、代わりに誰が主人公なのかということをしっかりお客さんに印象づけるため、最後のカットは正面からアンジェを映したものに変更しました。
オイルランプの光とは違う光を入れたかった
──これまでお話を聞いていて、オープニング映像と本編の調和をとても大切にしている印象を受けました。逆に、本編の雰囲気とは違うカットや、本編では観られないようなカットを入れている箇所はあるでしょうか。
基本的にはオープニング映像は作品の名刺代わりだという考えで絵コンテを作ったのですが、自分の趣味というか、TVアニメを観て「個人的にこういう絵が見てみたい」と思った映像もさりげなく入れてはいますね。作品世界の雰囲気を壊さない程度にですが。
──もしよろしければ、具体的な箇所を教えてください。
それこそ、先ほど言及したラストのカットでアンジェの背後、壁の向こうに青い光を入れているのですが、ここはこだわったポイントです。基本的に「プリンセス・プリンシパル」の世界の光というと、オイルランプのオレンジ色の光の印象が強いと思うんですけど、「別の色を入れていいですか」と橘監督に聞いて、入れさせてもらいました。
──確かにアルビオン王国の夜景には今までなかった色かもしれませんが、一色入ることでとても鮮やかな印象の画面になっていますね。
TVアニメにも「Crown Handler」の本編にも出てこない色なのかもしれないけど、ああいう青くてきれいな光を取り入れてみたかったんです。
──本記事が公開されるときにこのオープニング映像も同時公開されますが、ご覧になる方に向けて、改めて映像のここに注目してほしいというポイントはありますか。
やはりオープニング映像は本編やエンディング映像と合わさって、はじめて1つの作品だと思うんです。ですから、特定のポイントというよりも、全体的に作品世界と調和しているように見えればいいなと思っております。
第2章ストーリー
19世紀末ロンドンを舞台に、共和国のスパイ集団であるチーム白鳩に課せられる新たな任務を描く「プリンセス・プリンシパル Crown Handler」。第2章では共和国が王国に先んじて開発した新兵器“ケイバーライト爆弾”が、何者かによって盗み出されてしまうことから物語は始まる。一方、王国では王位継承権第三位のリチャード王子が、新大陸から帰国。しかし帰国パレードの最中、何者かによって狙撃される。混乱が始まる情勢下、チーム白鳩はケイバーライト爆弾とその制御装置の捜索と奪還を命じられることに。アンジェ、ドロシー、ちせは爆弾窃盗にかかわったとされる男の家に向かうが……。
- 下田正美(シモダマサミ)
- アニメーション監督、演出家。代表作に「セイバーマリオネットJ」「藍より青し」「ゼーガペイン」など。