作品が面白くなっていく過程を一緒に体験できる

──「NEXTブレイク漫画ランキング」毎回楽しみに拝見してます。

このランキングは、もちろんこれからヒットするであろう作品を書店員さんと一緒に推していこう、という企画なんですけど、耳の早い人には「もうこの作品読んでるよ」という感じで答え合わせするように楽しんでいただければ。

──なるほど、確かにそういう楽しみ方もありますね。

またまだ巻数の浅い作品に今からハマっておくと、これからその作品が続いてどんどん面白くなっていく過程を一緒に体験できてすごく楽しいと思うんですよね。愛着も湧きますし。例えば「のだめカンタービレ」や「ハチミツとクローバー」を3巻くらいから読んでいたらすごくワクワクするじゃないですか。

──リアルタイムで作品の成長過程を楽しめるわけですね。

そうです、そうです。またランキング以外にも、マンガの特集って毎月やっていて。西森博之先生の特集みたいに作家さんを10ページくらい割いて掘り下げていく企画から、「聖☆おにいさん」や「魔人探偵脳噛ネウロ」「バクマン。」などを紹介する「バディマンガ特集」のようにいろんな作品を集めた特集まで。例えば自分の好きなマンガが載ってて記事を見たときに、その周辺の面白そうなマンガが目につくじゃないですか。そこで「読んでみようかな」っていうきっかけ作りをできたらいいなと思ってこういう特集を定期的にやっています。

回し読みしてコミュニケーションのツールにしてほしい

──オトナファミって、マンガやゲームの情報が厚いのに読者層は男女半々というのが意外ですよね。こういうのって自然とエッチな記事が増えて、気を許すと男が読むメディアになっちゃうじゃないですか。

そうなんです。よっぽどセレクトや見せ方に気を付けないといけないんですよ。僕の持論に、「ブームを作るのは女性、それを持続させるのは男性」というのがあって。一般に認知されたいと思ったら、女性に認められるものじゃないとダメだと思うんですよね。確かにグラビアアイドルの際どい写真を載せれば男性読者が付くし、韓流アイドルばかりを載せれば女性読者が付くかもしれないけど、そういうことはしないで、とにかく間口を広げることをしようと思って。オトナファミは家族や友人と回し読みしてるって言ってもらえると、すごくうれしいんです。

──回し読み推奨って、すごく懐が深い雑誌ですね。

確かに雑誌の複数人読みって致命的なんですけど（笑）。でも、例えばお母さんがオトナファミを昼間に買ってきて、夕方くらいに中高生の子供が帰ってきて読んで、夜お父さんが帰ってきて読むっていうのが理想なんです。リビングにあってみんなで回し読みする雑誌。それって紙メディアだからできることなんですよね。複数で読んで、この雑誌でコミュニケーションをとってもらえたらうれしい。

──確かにそれはネット媒体ではできない。紙メディアの強みですね。

今日び、情報を取るだけだったらもうネットでいいじゃないですか。ナタリーさんでいいじゃん（笑）。でも紙は自分のペースでまとめて読めるっていうのがメリットなので。だからオトナファミではいろんな情報を素材として集めて、それを料理することで新しい価値観を生み出したい。その料理もフレンチのコースじゃなくて、どんな人でも食べられる料理を作りたいですね。ただいい素材を持ってきてボン、と出しても、それは商品じゃなくて、素材の力に頼ってるだけだから。お金を出して買ってもらわないといけないものですから、きちんと料理したものを出したいですね。逆にナタリーさんみたいにネット媒体だと無料で楽しめるから見てくれるっていう読者もいると思うので、その点はうらやましいです。

──まあ、それにはある種の軽さも生まれるので、メリットもデメリットもありますけどね。褒め合うみたいになって気持ち悪いですけど、僕はオトナファミの持ってる総合誌の強みがうらやましいですよ。チェリオの特集なんて、ナタリーではできないですから。チェリオナタリーは成り立たないですからね（笑）。

ははは（笑）。ただ定番フード特集だけのために雑誌を買ってくれる人はいたりいなかったりなので、毎回ものすごい博打ですけどね。