「ONE PIECE」シリーズの劇場版第15弾「ONE PIECE FILM RED」が、8月6日に封切られる。原作者である尾田栄一郎が総合プロデュースを手がけた本作。音楽の島・エレジアで開かれるライブを舞台に、世界中を熱狂させる歌姫で、赤髪のシャンクスの娘であるウタと、麦わらの一味、そしてシャンクスによる物語が描かれる。
ナタリーでは「ONE PIECE FILM RED」の公開を記念して映画、コミック、音楽の3ジャンルで特集を展開する。第2弾となるコミックナタリーの特集には「ONE PIECE」の原作メディア担当編集者で、映画の製作にも深く関わっている集英社の高野健が登場。谷口悟朗監督の参加や、ウタの歌唱キャスト・Adoの起用理由、製作時の尾田の裏話、これまで原作ではなかったルフィのとある気になる発言など映画にまつわる話題から、最終章に突入した原作の今後までを語ってもらった。なお第1弾となる映画ナタリーの特集ではルフィ役の田中真弓、ウタのボイスキャスト・名塚佳織、シャンクス役の池田秀一が登場しており、第3弾となる音楽ナタリーの特集ではAdoのインタビューをお届けする。
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取材・文 / 宮津友徳
“でかくて強い敵”じゃないキャラを出したい
──2018年7月にスタートした原作の「ワノ国編」がクライマックスを迎え、最終章に突入します。また原作25周年に合わせてさまざまな施策を実施したり、映画が公開されたりと「ONE PIECE」は現在大きな盛り上がりを見せていますね。
そうですね。ただ、映画の公開に関して言うと、最終章突入にタイミングがバッチリ合ったのは、狙ってはいたけど割と偶然の産物でもあります。そこの調整はさすが尾田さんという感じでした。
──そうなんですね。前作の劇場版「ONE PIECE STAMPEDE」が2019年8月公開で、ちょうど3年ぶりの新作という形ですが、製作はいつ頃スタートしたんでしょう?
話自体はけっこう昔からあって、それこそ2019年の終わりぐらいにはもうなんとなく「次の映画はどうしようか?」っていう話題は出ていたんですよね。その中で「シャンクスとルフィを描きたい」「今までと違うキャラクター、ヒロインを出してみたい」ということになって、ウタというキャラクターが出てきて。そこから製作を始めていきました。
──尾田先生も、映画の第一報が出た際に「映画で伝説のジジイ描くのもう疲れたんだよ!笑 ちょっと女子描かせてくれ!」とコメントされていましたよね(「ONE PIECE FILM」シリーズ最新作、2022年8月6日に公開!監督は谷口悟朗)。
はい。これまで映画では“でかくて強い敵”みたいなキャラを出し続けていたので(笑)。
──尾田先生は今回総合プロデューサーを務められていますが、主にどのように作品に関わっているんでしょうか。
目に見える範囲は基本的には全部やっているみたいなイメージです。脚本もコンテも見られますし、今回で言えば音楽を大事にしている映画なので、どういうラインナップの音楽を入れるかっていう話し合いにも入ってもらっています。
──では映画の内容に関しても尾田先生の意向が大きく反映されていると。
とは言え、完全ワンマンというわけではなくて。尾田さんって人の意見をすごく汲み入れてくれる人なんです。「こういうのがいいんじゃないか」「ああいうのがいいんじゃないか」っていう意見をスタッフで出し合っていると、尾田さんが「こうするのがいいんじゃない?」って、バッチリとハマる意見を出してくれて。それで決まっていくという形が多かったですね。
「Adoさん、僕の娘なのかな?」って(笑)
──今回、谷口悟朗さんが監督を務めるというのも、意外だと感じる人が多いのではないかと思います。
そうですね。ただ谷口監督は「ONE PIECE」を初めてアニメ化してくださった人ですし(※)、その後「ONE PIECE」も成長して、谷口監督も本当にいろいろな作品を手がけられて巨匠と呼ばれるような方になっているので。尾田さんも谷口監督のことは信頼していますし、「こんなすごい人に監督やってもらえるんだ」って喜んでいましたね。
※谷口悟朗は1998年にアニメイベント「ジャンプ・スーパー・アニメツアー'98」で上映された「ONE PIECE 倒せ!海賊ギャンザック」で監督デビューを果たしている。
──そもそも、どういった経緯で谷口悟朗さんが監督を務めることになったのでしょう。
まず谷口監督にお願いしたいという話が、プロデューサー、ひいては尾田さんからもありました。そのうえで音楽を扱う映画にしたいという話になりまして。そうなると、やっぱりライブなどの演出がすごく重要になってくるんです。どういうふうにしたらウタっていうキャラクターを魅力的に見せられるかという話をして、谷口監督は演出が素晴らしい方なのでバッチリハマったという形ですね。
──映画を鑑賞した際、ライブシーンがたくさん出てきて、ウタがそれぞれまったく違う顔を見せるなと思っていたんですが、本作ではウタを魅力的に見せるという部分を重要視しているんですね。
そうですね。やっぱりスタッフ全員、「ウタをみんなに好きになってほしい」というのはめちゃくちゃ考えていました。お楽しみコンテンツとして現在YouTubeでウタの日常を見せる「ウタ日記」というVlogを配信していますが、その助けになってるといいなとは思います。
──ウタはボイスキャストを名塚佳織さん、歌唱キャストをAdoさんが担当しています。Adoさんの起用はどのように決まったのでしょうか。
ウタの歌を誰にお願いするかという話になったときに、「歌声を聞いて、一発で覚えられるような声に癖がある人がいいよね」っていう話になったんです。最初は「オーディションをしようか」って話も出ていたんですが、Adoさんの名前が挙がって「ダメ元で当たってみようか」とオファーしました。Adoさんという案が出てからは「もうこの人しかいないよね」という雰囲気になっていましたね。たぶん1年ちょっと前、2021年の5月ぐらいにはAdoさんで決まっていたと思います。
──尾田先生が「ONE PIECE Magazine」などで公開している、作業時に聴いている音楽のプレイリストを見ると、新旧さまざまな楽曲を聴いていて非常に音楽好きという印象を受けます。Adoさんに決まったときの尾田先生の反応はいかがでしたか?
すごく喜んでいました。“Oda”を反対から読むと“Ado”になるので、最初は「僕の娘なのかな(笑)」みたいな冗談を言っていたりもして(笑)、「ぜひ歌ってほしいよね」と言っていたので。
──今回中田ヤスタカさんをはじめ、Mrs. GREEN APPLEさん、Vaundyさん、FAKE TYPE.さん、澤野弘之さん、折坂悠太さん、秦基博さんと、そうそうたる方々が楽曲提供しています。アーティストの皆さんはどうやって決まっていったんですか?
その辺は谷口監督と尾田さんと僕の3人で話して決めていきました。まず「この場面でこういう曲がほしい」というのを谷口監督と尾田さんで話してもらって、最終的に「7曲必要です」となったんです。そこから谷口監督と尾田さんに各楽曲はどういうイメージかというのを伺って、リストを作っていきました。その後3人でああでもない、こうでもないと話して、決まった方にお声がけさせていただいたという形です。
──では「こういうシーンで使う予定で、こういった楽曲でお願いします」という形で、曲のイメージも固まった状態で発注したんですね。
そうですね。音源のデモが届いてからは、一切苦労がなくて、もう本当にただただ楽しい時間でした(笑)。皆さん自分の声でデモ音源を作ってくれるので、それを聴いた後は尾田さんも僕も「これ聞いちゃっていいの? これをAdoさんが歌ったらどうなるの?」みたいなことを話して、ずっと喜んでいました。
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映画で描かれるルフィとシャンクスの関係