「ONE PIECE FILM RED」“歌姫”ウタの誕生秘話から、“今が一番熱い”原作の今後までをジャンプ編集部原作メディア担当編集者・高野健が語る (2/2)

映画で描かれるルフィとシャンクスの関係

──ネタバレにならない範囲で映画の中身についてもお伺いできればと思います。これまでの「ONE PIECE」の映画よりも、少し大人向けの作品のようにも感じたんですが、そのあたり、映画作りの中で何か意識されたことはあったりするんでしょうか?

あんまりそこを意識はしていなくて。劇中でルフィやウタの現在と幼い頃も描かれているので、ノスタルジックな雰囲気もあるんですよね。もしかしたらそういうノスタルジーさが大人に響くのではという部分で、大人向けと感じ取る方もいるのかなと少し思いました。ただ、我々としては単純に「これは面白いだろう」って考えながら作っているので、当然子供たちにも見てもらいたいですね。ウタは歌姫という設定で、歌姫ってみんなで作り上げていくものだと思うので、いろんな層に届くといいなとは思っています。

「ONE PIECE FILM RED」より、幼少期のルフィとウタ。

「ONE PIECE FILM RED」より、幼少期のルフィとウタ。

──シャンクスの娘はすべて尾田先生の発案という形なんですか?

そうですね。25周年映画なのでついに「ルフィとシャンクスを」というのが発想の根底にあります。原作の本筋にも関わるようなことって我々の方ではいじれないので、尾田さんが言ってくれたからその設定が出てきたという部分です。

──シャンクスとウタだけではなく、シャンクスとルフィが映画の中でどう関わるのかというのもファンは注目している部分だと思います。

そうですね。シャンクスってルフィにとっての“海賊”なんです。原作の第1話で、シャンクスはヒグマにバカにされても笑って許すんですが、ヒグマがルフィに手を出そうとしたときに「おれは友達を傷つける奴は許さない!!!!」って怒ってくれるんですよね。そういうこともあって、ルフィの中ではシャンクスは憧れの海賊であり、海賊そのものなんです。今回の映画でどのように描かれるのか楽しみにしてほしいです。

「ONE PIECE FILM RED」より、シャンクス。

「ONE PIECE FILM RED」より、シャンクス。

──映画では、ルフィがこれまで原作で言ってこなかったような発言をしますよね。もちろん映画と原作は別ものではあると思うんですが、尾田先生が総合プロデューサーということで、その発言に少し意味を感じてしまって……。

映画だからと言って、ルフィの人格が原作と変わるっていうことは絶対にないので、あのシーンの発言はやっぱりルフィの考えが言葉になったんだと思いますよ。なので当然、原作でもルフィは同じようなことを思っているんじゃないかと。

──ちなみに尾田先生ももう作品を観られているんでしょうか。

観てますね。最初に言ったように、この映画ってウタが世界の歌姫であるという説得力が大事なんです。尾田さんも「ライブがすごい」って言っていて。もちろん1つのストーリーとしても楽しめますけど、ウタのライブとしてもめちゃくちゃ楽しめると思うので。そこは尾田さんお墨付きですね。

「ONE PIECE FILM RED」より、ルフィとウタ。

「ONE PIECE FILM RED」より、ルフィとウタ。

「ONE PIECE FILM RED」より、ウタ。

「ONE PIECE FILM RED」より、ウタ。

とにかく「ONE PIECE」は今が一番熱い時期

──映画から話題が変わりますが、原作の最終章についても伺わせてください。このインタビューが公開された時点では、すでに最終章の連載がスタートしています。最終章の序盤はどういう展開が予定されているか、話せる範囲で教えてください(インタビューは7月上旬に行われた)。

まずは世界情勢がどういうふうになっているのかを見ていく形ですね。休載復帰明けのエピソードを見てもらって分かる通り、もう世の中が動きまくっていますし。

──尾田先生は原作97巻の質問コーナー・SBSで、「『ワノ国』を出航できたら、世界的展開、誰も読んだことがないような大興奮の物語、『ONE PIECE』史上“最も巨大な戦い”を描くことになります」とおっしゃっていましたよね。

「ONE PIECE」の連載再開に合わせて公開された尾田栄一郎のコメント。

「ONE PIECE」の連載再開に合わせて公開された尾田栄一郎のコメント。

そうですね。尾田さんはすでに休載明けに公開するコメントを書いているんですが、その中で“25年間このときのために仕組んできた”ということを言っているんです。その言葉通り、もうここからは本当に怒濤の展開で、「こんなに面白いことがあっていいの?」っていうような、今までマンガで感じたことないぐらいの興奮が味わえるんじゃないかと思います。ぜひぜひ本誌で毎週追ってもらえれば。

──では最後に映画公開に向けて、「ONE PIECE」ファンの方々にメッセージをお願いします。

今回の映画は音楽が素晴らしいというのはさることながら、ストーリーもかなり重厚ですし、みんなが気になっているであろうシャンクスも登場します。原作とのリンクもあるのか?という部分も楽しみにしてもらいつつ、この映画がどういうふうに終着しているのかを観ていただければ。原作についても本誌を見ていただいたらわかる通り、やばい展開が始まっていますし、103巻もちょうど映画の公開タイミングで発売されます。103巻ではルフィがついにというか……すごい戦いが展開されていて。とにかく「ONE PIECE」は今が一番熱い時期です。映画、原作ともに注目していただけたらなと思っています!

プロフィール

高野健(タカノケン)

2016年、集英社に入社。同年より少年ジャンプ編集部に配属される。これまでの担当作に「ゆらぎ荘の幽奈さん」「鬼滅の刃」「悪魔のメムメムちゃん」「PPPPPP」など。