「凪のお暇」完結記念! コナリミサトと佐伯ポインティが9年間の連載振り返り&舞台裏トーク (3/3)

2人の「凪のお暇」トークはまだまだ!
読者からの質問にも答えたイベントレポート

取材・文 / コミックナタリー編集部

「凪のお暇」の完結を記念し、7月5日に東京・青山ブックセンター本店でコナリミサトと佐伯ポインティによるトークイベントが開催された。

左からコナリミサト、佐伯ポインティ。

左からコナリミサト、佐伯ポインティ。

青山ブックセンター本店では「凪のお暇」の原画展も開催された。

青山ブックセンター本店では「凪のお暇」の原画展も開催された。

約9年間の連載を終え、コナリは「本編はたぶん9カ月くらいしか時間が経過していないはず。凪のおかげでいろいろなことを考えるようになって、(連載の)初めと終わりで自分自身の価値観も変わるようになった」と振り返る。佐伯に完結した今の心境を問われると「最終巻が発売してやっと終わったんだなという実感が芽生えた。私、5秒に1回くらいエゴサするんですけど(笑)、皆さんの感想を見るにつれて『終わったんだな』と認識している感じです」と明かした。

コナリミサト

コナリミサト

また佐伯に「最終回に向けて、それぞれのキャラクターにどういうふうに決着をつけていったのか?」と聞かれたコナリは「(キャラクターに)情が湧いているので、最終回が終わった後も健やかに生きていてほしいなと。『1人ひとりとっての幸せとは何か?』と、ケリをつけてあげようと思いながら描いていました」と語る。佐伯の「どういうふうに終わらそうというのは前から決めていたんですか?」という問いに、コナリは「けっこう最初から決まっていました。慎二とゴン、どっちとくっつくかという話ではないと思っていた」と返答。佐伯も「(最終回で)凪が同じ容姿の大島さんのためにあえて空気を読まない発言をして、目標にしていた大型免許にも受からず、普通の車でドライブするというのが『凪のお暇』らしいなと、みんな感じたと思います」と読者の気持ちを代弁する。

佐伯ポインティ

佐伯ポインティ

またラストシーンについて「橋(の絵)で終わるのが珍しくて。集中線もあって……」と佐伯が触れると、コナリは「橋ってどの橋も集中線みたいになってるなって思ってたんですよ。なので最後にああいうふうに描いてみました。あと最後に『fin』って描いてるんですけど、最初『完』と描いてネームを出してたんですね。だけど漫☆画太郎先生のマンガがそれで終わることが多いんですよ。だから『被った!』と思って(笑)。画太郎先生のファンに怒られちゃうから『fin』にしました(笑)」と裏話を披露。また最終話で描かれた橋は、ドライブが好きな弟の一番好きな橋をモデルにしていることも明かされた。

イベントでは、事前に読者から募集した質問に答えるコーナーも展開。「描いていて楽しかったシーン、しんどかったシーンはありますか?」という質問に、コナリは「過去の凪のビジュアルが描くのが好きで。私、サラサラロングヘアが好きなんですよ。『らんま1/2』でもあかねちゃんがバサッと髪の毛を切られてしまうシーンが、本当にショックで……」とロングヘアへの思い入れを語る。

左からコナリミサト、佐伯ポインティ。

左からコナリミサト、佐伯ポインティ。

一方の“しんどかったシーン”については「全部通してしんどかったんですけど……。描いていてというよりも、最後のほうで、キャラたちの各々の落としどころをどうやって見つけていくか考えているときはつらかったですね」と吐露。佐伯が「思い悩んだ感じ?」と聞くと、「嘘がないように描きたいなと。このオチに持っていくために登場人物に無茶をさせる、みたいなことはしたくなかった」と説明する。佐伯は「ゴンさんと(凪)のラストシーンも好きでした、『切ねえ……!』って。しかも出会った場所ですし。2人のセリフ自体はすごく平易な言葉じゃないですか、でも2人の顔は見えないみたいな。『ビターだな……!』って思いました」と感想を述べた。

「凪のお暇」原画展の様子。

「凪のお暇」原画展の様子。

その後も「凪のお暇」について、コナリ自身について、読者から寄せられた質問に答えていく。中にはコナリと佐伯に向けた人生相談も。「部署異動があり、仕事の内容が変わってしまい、人間関係もギクシャクしていて孤独な状態です。自分に向いていない仕事を割り当てられたときはどうすればいいでしょうか?」という相談に、佐伯は「向いていない仕事を割り当てられたとき、自分はできてこなかったんで。直接は言わなかったですけど、無理難題なことをお願いされたときは『それはちょっと割り当てセンスが……(笑)』って思ってました(笑)」と述べる。「僕は他責思考なんですよ。でも大事なのはバランスで。他責思考すぎる人は自責を感じたほうがいいと思うし、自責思考の人は自責すぎるなと。もう少しそのバランス取ったほうがいいなと思います」と回答。コナリが「自責が強い人が他責に寄せていくためのオススメの考え方ってありますか?」と聞くと、佐伯は「本当にこれって自分のせいなのか?って疑う。自責の人って自分のせいにするのがうまいけど、事実とは異なることもある」と説いていった。

左からコナリミサト、佐伯ポインティ。

左からコナリミサト、佐伯ポインティ。

最後に会場の来場者からも質問を募ると「一昨日、10年付き合っていた彼氏に別れを切り出されてしまったのですが、おふたりにエールをいただきたい」という要望が。佐伯は「コナリさんも9年の連載を追えて、ゼロから新連載が始まる。コナリさんが新連載を始めるときに、『よし、始まったな! 負けてらんねえぞ!』って思えたらいいですよね」とコメントする。コナリも「がんばりましょう! 私も新連載で描きたいものは決まっていて、始められるようにがんばりますので。でも、のんびりしましょうね、せっかくですので」と来場者へエールを贈った。トークイベント後はコナリのサイン会を実施。来場者はコナリと言葉を交わしながら、うれしそうな表情でサイン本を抱きしめ会場を後にした。

プロフィール

コナリミサト

7月22日生まれ。ハイティーン向けファッション雑誌・CUTiE(宝島社)でマンガ家デビュー。代表作にドラマ化された「珈琲いかがでしょう」(マッグガーデン)、「ひとりで飲めるもん!」(芳文社)など。2016年からは月刊エレガンスイブで「凪のお暇」を連載し、2025年に完結。単行本は累計550万部を突破。同作はTBSでドラマ化されたほか、第65回小学館漫画賞では少女向け部門を受賞するなど話題を呼んだ。

佐伯ポインティ(サエキポインティ)

マルチタレント。1993年生まれ、東京都出身。早稲田大学文化構想学部卒業後、株式会社コルクにマンガ編集者として入社。2017年に独立し、猥談系YouTuberとして活動をスタート。2018年には日本初の完全会員制「猥談バー」をオープンした(現在は閉店)。2024年7月からは「佐伯ポインティの生き放題ラジオ!」をPodcastで配信中。Spotifyの日本デイリーチャートでは最高順位1位を獲得。趣味はカプセルトイ、特技はおしゃべり、チャームポイントは“大笑顔”。