コミックナタリー Power Push - 聖モエスの方舟 / 榎本ナリコ

地球の命運賭け少女は宇宙へ ヤマトに捧ぐスペースオペラ劇

月刊サンデーGX(小学館)で連載中の「聖モエスの方舟」は、地球の危機を救うため、宇宙へと飛び出した少年少女たちのSF群像劇。描くは青年マンガ界きっての叙情派、榎本ナリコだ。榎本の代表作「センチメントの季節」の読者は、その新しい作風にきっと目を疑うことだろう。

コミックナタリーは新境地「聖モエスの方舟」の魅力を探るべく、榎本とGX編集長の小室ときえ氏による対談をセッティング。その源泉について語ってもらった。「宇宙戦艦ヤマト」に魅せられた元祖腐女子たちが、鼻息も荒く己の萌え、そして燃えを語り合う様をご覧いただきたい。

取材・文/増田桃子 撮影・編集/唐木元

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「モエス」は「ヤマト」へのオマージュ作品

──本日は「聖モエスの方舟(以下「モエス」)」2巻の発売を記念して、榎本さんと月刊サンデーGXの小室編集長にお話を伺えればと。

インタビュー写真

小室 今日は榎本さんと「宇宙戦艦ヤマト(以下「ヤマト」)」の腐女子トークができると聞いて来たんですけど。

榎本 ついでに「モエス」のプロモーションを(笑)。

──さっそく話題に挙がりましたが、「モエス」2巻の帯には松本零士先生が推薦文を寄せています。これはやはり、榎本さんが「ヤマト」ファンだから?

小室 ファンもファンですし、「モエス」は「ヤマト」へのオマージュから生まれた作品なんです。そもそものきっかけは連載前に、榎本さんや島本(和彦)さんを誘って食事会を開いたんですよ。その席で榎本さんがひたすら「デスラー! デスラー!」って連呼してて、私も負けじと「古代! 古代!」って盛り上がってしまって。

榎本 あの島本さんが、げんなりして帰っていったんですよ。私たちの腐ったトークに付いてこられなくて。

小室 それでお互い「ヤマト」に影響を受けて育ってきたという認識が芽生えまして。ちょうど榎本さんがGXで連載されてた前作「世界制服」のスピンオフをやろうという話が立ち上がっていたので、せっかくなら私たちが大好きな「ヤマト」へのオマージュにしてはどうかと。

──榎本さんはデスラーのどこに惹かれてファンになったんですか。

榎本 星を背負って戦う男萌えなんです!

小室 どういうこと(笑)。

榎本 それまでアニメで描かれてきたのは勧善懲悪な世界観ばかりじゃないですか。相手が宇宙人であろうと魔物であろうと幽霊であろうと、とにかく人間が正しくて、人間を脅かす存在は悪、っていう。でも「ヤマト」は敵の概念を覆したんです。敵であるデスラーも、地球人と同じ宿命を背負った人間だという。そこが魅力でしたね。

小室 大人ですね……。私は単純に「私の古代君キャーっ!」っていう子供でした(笑)。

榎本 私だって、子供の頃は古代ファンでしたよ。ただ大人になって改めて「ヤマト」を見直したら、デスラーに敵味方の価値観を崩壊されてしまったんです。その萌えを共有したくて、デスラーファンの友達を探しまくったんですよ。結局できなかったけど。

小室 できなかったんだ。

榎本 デスラー好きはいるんです。けど「総統も素敵ですよね。古代ファンですけど」とか言うの、みんな。古代ファンは山ほどいるのになぜ!? デスラーも美形なのに。

嗚呼、憧れの松本零士せんせい

小室 その勢いだとヤマト同人もやってたんじゃないの?

榎本 やってませんよ!

──同人誌でのカップリングは何だったんですか?

榎本 だからやってませんって! この話やめましょう(笑)。

──それほどに入れ込んだ「ヤマト」の零士先生に推薦文を描いていただいたとあれば、ファン冥利につきますね。

小室 ちょうどこの12月から実写版「ヤマト」が劇場公開されるタイミングだったので、これを逃す手はないと。それとなく「零士先生にお願いしてみたら?」と担当の田嶌君を焚きつけたんです。だから実行犯は田嶌君。

榎本 原稿の刷り出しや単行本を零士先生に送付されたって聞いて、もう……ほんと死にたくなったんですけど。

「聖モエスの方舟」2巻の帯

小室 でも、こんな素敵な帯文とイラストを書いていただいて。

榎本 てっきり推薦文だけ書いていただくものとばかり思っていたのに、見てください、松本先生の似顔絵が描き下ろしなんですよ! 「ここまで望んでいいものだったの? それならハーロック描いてもらえばよかった……」って(笑)。零士先生、本当にありがとうございます! すみません、ごめんなさい、申し訳ありませんでした!

小室 榎本さん、ハーロックがお好きなんですね。

榎本 すべての松本キャラの中で誰に一番萌えるかって聞かれたら、デスラーより実はハーロックなんです。「宇宙海賊キャプテンハーロック」はマンガ連載が始まったときから大好きで、アニメになったときなんかもう、初回は正座して見ましたよ。

小室 正座!

榎本 あまりにもハマってしまい、当時小学4年生くらいでしたけど、「ハーロックからの手紙」を自分で書いて自分宛てに投函したくらい(笑)。ハーロックから手紙が来るの、楽しみに待ってたんですけど、なぜか届かなかったんですよねえ……。

小室 お母さんに検閲されちゃったんじゃないですか。大事な娘に、なんか怪しい差出人の手紙が……とか。ハーロックがお好きということは、カップリング的にはトチローと?

榎本 いえ、私ハーロックに関してはカップリングとかしないんです。普通トチローだろ? とは思いますけど。あの人は私の中で受け星人だから。受けの星の元に生まれた受け星人だから。ああー、いまスタッフの男性陣がすっごい引いていくのがわかります。

「聖モエスの方舟」(2) / サンデーGXコミックス / 2010年11月19日発売予定 / 定価560円(税込) / 小学館

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あらすじ

謎の流星群により、男子の出生率が極端に低下して約60年───普通の少女・モエナは、何故か名門の「聖モエス学園」に入学するが、学園はなんと士官養成のための宇宙戦艦だった!

そして初めての宇宙空間での実習中、モエナたちは謎の“敵”により奇襲される。モエムは独断で迎撃に向かうがミスを犯し、モエムに続いた永麗(エイレイ)が危機に陥る。そして永麗の親友・燃世(モエヨ)は、身を挺して永麗をかばい、戦死してしまい……!!

榎本ナリコ(えのもとなりこ)

榎本ナリコ

11月5日生まれ。1997年に週刊ビッグコミックスピリッツ(小学館)にて「センチメントの季節」でデビュー。同作は繊細な絵柄と思春期を迎えた少女たちの揺れる心理を巧みに描き出してヒットを記録する。他の代表作に「聖モエスの方舟」「世界制服」「リボン—RE-BORN—」「歌集」「こころ」(いずれも小学館)や、「ふしぎなジジ・ガール」(一迅社)、「時間の歩き方」(朝日新聞出版社)などを持つ。また別名義に野火ノビタを持ち、同名義で発表した「大人は判ってくれない 野火ノビタ批評集成」(日本評論社)は第3回Sense of Gender賞において特別賞を受賞した。