コミックナタリー Power Push - 「モブサイコ100」

ONE×立川譲監督対談 優しさを根っこに、ビックリ箱のような驚きをお届け!

愛すべきバカばっかり(立川)

立川 「モブサイコ100」って個性的なキャラがたくさんいるのに、なぜかどのキャラも嫌な感じが全然しないんですよね。「こいつヤな奴だな」とか思ったりしちゃいそうなのに、みんな嫌いになれなくて。愛すべきバカばっかりというか、それが不思議だなと。

テレビアニメ「モブサイコ100」より。

ONE エクボも初登場時は結構嫌な奴だったんですよね。それがモブのパートナーになる“異物”のような存在が欲しいなと思って、常に人魂で付きまとってくる変なキャラクターとして描いていったんですけど……どんどんいい奴になっていきましたね。

立川 いい奴ですよね(笑)。

ONE でもそれも“周りに影響を与えている主人公”として描いている部分があるんです。エクボはモブと絡んだ結果、いい奴に変わっていった。キャラクターの間のやり取りに関して言えば、例えばモブと霊幻、モブと律、モブとテルがいたら、きちんと関係性を描き分けようとしています。このキャラとこのキャラが一緒にいるときはこういう空気になるとか、それぞれ替えのきかない関係性を描こうと思っています。

“倍返し”の作画監督・亀田祥倫

──今回、キャラクターデザインとしてアニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST」などでも知られる亀田祥倫さんの名前がクレジットされていますが、亀田さんは作画にも関わられているのでしょうか。

立川 ええ、作画監督としても参加してもらっています。

──アクションシーンなど動きのあるカットは、亀田さんが関わられていることで期待しているアニメファンも多いと思います。

テレビアニメ「モブサイコ100」より。

立川 亀田くんが参加してくれていることによって、彼の色に変わっていく場面も多いですね。1話の霊幻のシーンはかなりコミカル色が強いというか、メリハリの効いた動きが足されています。

ONE 表情の変化がすごかったですよね。顔が変わりまくるので、観ていてとても楽しかったです。「ああ、霊幻ってこういう顔するな」と思いました。

立川 亀田くんは僕が何かしら指示を入れると「倍は表現しないと」と思っているようで。今さらですけど“倍返し”で返してくるんです(笑)。100点が欲しくて要望を出すと、150点で返ってくる。だから本当に100点が欲しいときは、80点くらいのものを求めるとちょうどいいのかなと思っています(笑)。

ビックリ箱を開けたときのような驚き(立川)

──ティザーPVにも亀田さんらしい動きの表現が出ていた印象です。

立川 そうですね。ティザーPVは亀田くんが全部1人で描いているので、その雰囲気がすごい出てますよね。

──音楽もカッコよくて。

立川 あ、ティザーPVの音楽は劇伴の音楽とはまた別なんです。本編用の音楽は川井憲次さんに作っていただいていて、あの楽曲はPV用に作られたものなんです。本編の音楽もすごくカッコいいですよ。霊幻が登場するシーンは“インチキテーマソング”みたいな曲が流れたり、昭和テイストのする楽曲が入ってきたり。不思議な楽器の音色とか、超能力を使うシーンはオリエンタルな雰囲気の楽曲とか、いろんなジャンルのものがあるので、そこも面白いと思います。

(奥から)立川譲、ONE。

ONE 僕もまだ本編の楽曲は聴いていないので、どんなふうに音楽が入るのか楽しみです。

──ONEさんはマンガを描かれるときに何か音楽は聴かれるんですか? 例えばアクションシーンを描くときは、戦闘に合った楽曲を流してみたりとか……。

ONE いや、スピッツとかばっかり聴いてます。

──(笑)。

立川 聴いてる曲も優しい(笑)。確かに2巻の表紙とか、ちょっとスピッツ(のジャケット)っぽいですもんね。

──言われてみたらそんな気がしてきました(笑)。それでは最後に、アニメ「モブサイコ100」の放送を楽しみにしている読者へ、おふたりからメッセージをいただければと。

ONE 外国の方からの「楽しみ」という反応も多いですよね。

立川曰く、スピッツのジャケットっぽい表紙の「モブサイコ100」2巻。©ONE/小学館

立川 そうなんですよ、プレッシャーですね(笑)。「モブサイコ100」は、もちろん大事なところは尺を取って見せていますが、すごくテンポを大事にしているので、一度観始めたらトイレに立てないぐらいリズミカルにお話が進んでいきます。頭を空っぽにしていても一緒に笑ったりハラハラしたりできる王道的なエンタメ作品でありながら、これまでのアニメとは違う新しい表現も追求していているので、ビックリ箱を開けたときのような驚きとともに楽しんでもらえたらうれしいです。

ONE アニメならではの動きとか、演出や音楽含めて、原作の「モブサイコ100」とは別のエンタメとして新鮮に楽しめる予感がしています。僕も毎週欠かさず観るので、読者の皆さんと一緒に楽しみたいなと思います。

テレビアニメ「モブサイコ100」
ONE

自己表現がヘタな超能力少年・影山茂夫、通称・モブ。普通の生き方にこだわり、超能力を封印しているモブだが、感情が昂り、その数値が100になったとき、彼の身に何かが起こる!

インチキ霊能力者、悪霊、謎の組織……モブを取り巻く様々な人に囲まれて、彼はいったい何を思い、何を選ぶのか?

放送日時

TOKYO MX:2016年7月11日(月)24:00~
読売テレビ:2016年7月11日(月)26:29~
BSフジ:2016年7月12日(火)24:30~
テレ朝チャンネル1:2016年7月20日(水)24:30~
※テレ朝チャンネル1では同日24:00から放送開始事前の特番を放送

スタッフ

原作:ONE(小学館「マンガワン」連載中)
監督:立川譲
シリーズ構成:瀬古浩司
キャラクターデザイン:亀田祥倫
美術監督:河野羚
色彩設計:中山しほ子
撮影監督:古本真由子
編集:廣瀬清志
音響監督:若林和弘
音楽:川井憲次
アニメーション制作:ボンズ

キャスト

影山茂夫(モブ):伊藤節生
霊幻新隆:櫻井孝宏
エクボ:大塚明夫
影山律:入野自由
鬼瓦天牙:細谷佳正
暗田トメ:種﨑敦美
花沢輝気:松岡禎丞
米里イチ:藤村歩
ツボミ:佐武宇綺

ONE「モブサイコ100(12)」 / 2016年6月17日発売 / 小学館
ONE「モブサイコ100(12)」
596円
Kindle版 / 596円

©ONE/小学館

ONE(ワン)
ONE

自身のサイトでWebマンガ「ワンパンマン」を公開し人気を博す。「ワンパンマン」は村田雄介を作画担当に迎えたリメイク版が、となりのヤングジャンプ(集英社)にて連載化。2015年10月にはテレビアニメも放送された。2016年には小学館のマンガアプリ・マンガワンと、裏サンデーにて連載中の「モブサイコ100」のテレビアニメ化も決定。ボンズ制作により、7月に放送がスタートする。

立川譲(タチカワユズル)

アニメ監督、演出家。「BLEACH」「キルラキル」「進撃の巨人」など人気のアニメ作品の絵コンテや演出を担当している。2013年には自身が原作、脚本、監督を手がけたアニメ「デス・ビリヤード」が全国の映画館などで公開された。2014年に放送されたアニメ「残響のテロル」では助監督を務めている。2015年1月には自身が原作、監督、シリーズ構成を担当したアニメ「デス・パレード」がオンエア。2016年7月には監督を務めるテレビアニメ「モブサイコ100」の放送がスタートする。