コミックナタリー Power Push - 「モブサイコ100」

ONE×立川譲監督対談 優しさを根っこに、ビックリ箱のような驚きをお届け!

モブっぽさを感じる、モブ役の伊藤節生

──霊幻役の櫻井さんやエクボ役の大塚明夫さんなど、ベテランの方や実力派の声優さんが多く登場していますが、モブ役の伊藤節生さんはまだ新人の方ですよね。キャスティングの決め手はどういったところにあったんですか。

テレビアニメ「モブサイコ100」より。

立川 主人公のモブは、ハッキリした色のついていない声優さんにやっていただきたいなと思っていて。これまで声優界でバリバリやってきた人というよりは、モブと同じように、いろんな人の影響を受けながら道が開けていく方がいいな、というイメージが最初からあったんです。オーディションをして何人もの声優さんに声をあててもらったんですが、一番自分のイメージに合ったのが伊藤くんの声でした。

──まだPVでも櫻井さん演じる霊幻の声しか登場していないので(取材は6月中旬)、モブがどんな声でしゃべるんだろうとワクワクしています。

立川 もうね、いい意味で癖のない声なんですよ。周りのキャストさんも濃い方ばかりですが、アフレコでもブレずにやっている印象ですね。櫻井さんとか大塚さんとか、有名なキャストさんに囲まれているので、最初は緊張してガチガチになっちゃうかなとも思ったんですけど、意外とそういうわけでもなく。もしかしたら天然なのかもしれないです。

ONE アフレコを見学していたときにも感じたんですけど、どこかモブっぽさがありますよね。

「モブサイコ100」より。©ONE/小学館

立川 そうなんですよ。結構モブと近いものがあるんじゃないかなと思います。櫻井さんもちょっとミステリアスな雰囲気がある方なので、霊幻のようなインチキ臭いことをさせたらハマるんじゃないかなと思って、キャスティングさせていただきました。

──エクボ役が大塚さんというのも、「ああ、そう来るか」と思いました。

立川 大塚さんは個人的にすごく好きな声優さんということもあるんですけど、教祖のときと弱体化したあとの芝居分けという意味でも、ベテランの声優さんに演じてもらってみんなを引っ張っていただこうかなと思って、選ばせていただきました。

“優しさ”を感じる作品にしたい(ONE)

立川 超能力をテーマに作品を作ろうとすると、例えば超能力を使える主人公が力に溺れていくとか、そういった設定をつけちゃいそうですけど、主人公のモブが「生きている上で超能力はまったく必要ない」と言っているのが面白いですよね。それはこのマンガの特徴だしいいところだなと。周りの人間は超能力を欲しがったり、利用してのし上がってやろうとか、私利私欲のために使ってますけど、キーパーソンになる霊幻とモブの2人が“力がないヤツ”と“力は必要ないと言ってるヤツ”なので、よくこれでストーリーが転がるなって(笑)。ONEさんがお話を作る上で意識していることって、どういった部分にあるんですか?

(奥から)立川譲、ONE。

ONE 「モブサイコ100」に関しては“優しさ”を感じる作品にしたいなと思っていて。構想時は“優しさ”とか“人のつながり”を描こうというコンセプトで考えていたんです。結果として超能力で戦う展開にはなったんですけど、初めは超能力の要素が入る日常系のギャグマンガを描こうと思っていました。

立川 確かに、アニメでもONEさんの言う“優しさ”みたいなものは、どこかで感じられるようにしないといけないと思っています。ONEさんが大事にしている部分はそのままに、僕らは描けるところを足していこうと。……ちなみに、モブってONEさん自身がモデルになってるわけじゃないんですよね?

ONE そう……ですね、僕ではないです(笑)。

テレビアニメ「モブサイコ100」より。

立川 スタッフ同士の本読みでも何度か話が出てるんですけど、ONEさんってすごく純朴そうというか、“いい人”オーラが出てるんですよ。逆に僕のほうは……誰に言われたんだっけな。キャラクターデザインをやってる亀田(祥倫)くんだったかな……とかに、「立川さんはインチキ臭い」って言われるくらいなんですけど(笑)。そのときに「ONEさんっていい人オーラが顔に出てますよね」という話になって。確かにONEさんって心が曲がっていない感じがすごく出ているので、ひょっとしてモデルは自分自身なのかなと、ちょっと思ったんですけど……。

ONE 僕はいい人ぶってるだけなので。

立川 (笑)。

ONE いい人ぶろうとしているだけなんですけど(笑)、僕と違ってモブは本当に嘘のない“いい人”として描いています。モブは主人公としての理想像なのかもしれないですね。こういうときに自分だったら逃げちゃうけど、主人公には立ち向かっていってほしいなとか、ここで自分は諦めちゃうところでも、主人公には諦めないでほしいとか。そういった理想がモブに詰まっているところがあるのかもしれないです。

テレビアニメ「モブサイコ100」
ONE

自己表現がヘタな超能力少年・影山茂夫、通称・モブ。普通の生き方にこだわり、超能力を封印しているモブだが、感情が昂り、その数値が100になったとき、彼の身に何かが起こる!

インチキ霊能力者、悪霊、謎の組織……モブを取り巻く様々な人に囲まれて、彼はいったい何を思い、何を選ぶのか?

放送日時

TOKYO MX:2016年7月11日(月)24:00~
読売テレビ:2016年7月11日(月)26:29~
BSフジ:2016年7月12日(火)24:30~
テレ朝チャンネル1:2016年7月20日(水)24:30~
※テレ朝チャンネル1では同日24:00から放送開始事前の特番を放送

スタッフ

原作:ONE(小学館「マンガワン」連載中)
監督:立川譲
シリーズ構成:瀬古浩司
キャラクターデザイン:亀田祥倫
美術監督:河野羚
色彩設計:中山しほ子
撮影監督:古本真由子
編集:廣瀬清志
音響監督:若林和弘
音楽:川井憲次
アニメーション制作:ボンズ

キャスト

影山茂夫(モブ):伊藤節生
霊幻新隆:櫻井孝宏
エクボ:大塚明夫
影山律:入野自由
鬼瓦天牙:細谷佳正
暗田トメ:種﨑敦美
花沢輝気:松岡禎丞
米里イチ:藤村歩
ツボミ:佐武宇綺

ONE「モブサイコ100(12)」 / 2016年6月17日発売 / 小学館
ONE「モブサイコ100(12)」
596円
Kindle版 / 596円

©ONE/小学館

ONE(ワン)
ONE

自身のサイトでWebマンガ「ワンパンマン」を公開し人気を博す。「ワンパンマン」は村田雄介を作画担当に迎えたリメイク版が、となりのヤングジャンプ(集英社)にて連載化。2015年10月にはテレビアニメも放送された。2016年には小学館のマンガアプリ・マンガワンと、裏サンデーにて連載中の「モブサイコ100」のテレビアニメ化も決定。ボンズ制作により、7月に放送がスタートする。

立川譲(タチカワユズル)

アニメ監督、演出家。「BLEACH」「キルラキル」「進撃の巨人」など人気のアニメ作品の絵コンテや演出を担当している。2013年には自身が原作、脚本、監督を手がけたアニメ「デス・ビリヤード」が全国の映画館などで公開された。2014年に放送されたアニメ「残響のテロル」では助監督を務めている。2015年1月には自身が原作、監督、シリーズ構成を担当したアニメ「デス・パレード」がオンエア。2016年7月には監督を務めるテレビアニメ「モブサイコ100」の放送がスタートする。