コミックナタリー Power Push - 「モブサイコ100」

ONE×立川譲監督対談 優しさを根っこに、ビックリ箱のような驚きをお届け!

アニメ化が決まって、まず、ちょっと悩みました(立川)

──そもそも、ONEさんはアニメ化が決まったときはどんなお気持ちでした?

(奥から)立川譲、ONE。

ONE ビックリしましたね。最初にアニメ化を知ったのは、編集長から送られてきた「『モブサイコ100』のアニメ化が決まりました」っていうメールだったんですけど、ちょうど原稿に追われていた時期だったので、そのときは「ありがとうございます」とだけ返信をして。ひと晩明けたあたりから「……あれ? 昨日なんか『アニメ化』とかっていうメールが来てたな」と思い出して。

立川 あはは(笑)。冷静になってから「あれ?」って。

ONE 肉声でちゃんと確認しないと、と思ってすぐに電話で確認しました(笑)。そのあとから「えっ、本当にアニメ化するのか?」って、じわじわと驚きが大きくなっていって。はじめは信じられなかったですね。フタを開けてみたらすごく力の入った、ありがたい環境で作っていただけていて、とてもうれしかったです。

──監督は「モブサイコ100」にどういった印象をお持ちだったのでしょうか。

立川 アニメ化の企画が決まった際に、初めて単行本の6巻くらいまで読んだんですけど……。まず、ちょっと悩みましたね(笑)。

ONE ふふふ(笑)。

テレビアニメ「モブサイコ100」より。

立川 どういうふうに映像化したら正解なのかと。アニメ化したときのビジョンがパッと浮かばなかったんです。誰もが「アニメになったらこうなるんだろうな」と、想像できる作品ではないと思うんですよね。でもだからこそ、自分自身も悩みながら、面白い作品を作るためにいろいろなことにチャレンジしていけるんじゃないかと興味が湧きました。

「モブサイコ100」は懐が深い作品(立川)

──実際に監督を務めていて、特にこだわっている部分はどこですか?

「モブサイコ100」1巻 ©ONE/小学館

立川 先ほども少しお話しましたが、映像面でいうと、やっぱり初めて読んだときに自分が感じた、原作のなんとも言えない空気感みたいなものはすごく大事にしたいなと思っています。ONEさんの独特なコマ割りや絵の入れ方も好きなんですけど、そういったところも原作とは少し違った表現になりつつも、アニメでもなるべく同じ雰囲気になるよう工夫をして。原作で印象に残るコマを、どうやったらアニメーションでも表現できるかを考えたり、新しい試みにも挑戦していますね。

──すごく大掴みな言い方になってしまいますが、そういった新しい表現に取り組みやすそうな作品ですよね。

立川 そうなんですよ。懐が深い作品だなと思います。表現するほうからしてみれば楽しみが多いですね。

ONE 僕もスタッフの皆さんには「主人公のキャラクターを原作通りに描いていただければ」とだけお伝えしていて。僕としては、原作に縛られるよりも好きにやっていただいたほうが逆にありがたいくらいで。例えばモブとテルが戦うシーンとか、マンガでは端折っていたり簡略化していた部分に、アニメではオリジナルの演出が加わっていたりして面白いんですよ。僕自身、毎回楽しみにしています。

ギャグシーンでかなり笑いました(ONE)

──ギャグのテンポの良さが原作マンガの魅力のひとつだと思っているんですが、そういったところをアニメに落としこむのは難しそうだなと感じます。

「モブサイコ100」より。©ONE/小学館

立川 難しいですね。会話のテンポや間の取り方は、ギャグシーンのときは特に大事にしています。でもそういう部分って個人の好みもあると思うので、こればっかりは視聴者の反応を待たないとわからない。でも役者さんの芝居を聞いてると、皆さんに笑ってもらえるんじゃないかなと感じていますけどね。

ONE 第1話のアフレコを見学させてもらったんですけど、僕はギャグシーンでかなり笑いました。むしろ、声がついてるほうが笑えましたね(笑)。櫻井(孝宏)さんの演技とかも、視聴者を笑わせにかかっている感じが伝わってきて、すごく面白かったです。

立川 キャストの皆さんの味付けもいいですよね。シュールな笑いのシーンは個人的にも気に入っているので、皆さんにも笑ってもらえるといいなと思っています。

──ONEさんは実際にキャストの皆さんの演技を聞かれてどうでしたか?

ONE 絵が動いて声が入るとこんな感じになるんだ、と衝撃を感じましたね。自分が描いたマンガの映像化ではあるんですけど、初めて観るもののような感覚がありました。マンガを描くときにはキャラクターの声もまったく想像してなかったですし、描き始めてしばらくの間は、モブ以外のキャラの年齢も具体的に決めてなかったくらいなので。アニメになるとそういったところもかなり具体的になっているし、キャラクターが掘り下げられているなと思います。

テレビアニメ「モブサイコ100」
ONE

自己表現がヘタな超能力少年・影山茂夫、通称・モブ。普通の生き方にこだわり、超能力を封印しているモブだが、感情が昂り、その数値が100になったとき、彼の身に何かが起こる!

インチキ霊能力者、悪霊、謎の組織……モブを取り巻く様々な人に囲まれて、彼はいったい何を思い、何を選ぶのか?

放送日時

TOKYO MX:2016年7月11日(月)24:00~
読売テレビ:2016年7月11日(月)26:29~
BSフジ:2016年7月12日(火)24:30~
テレ朝チャンネル1:2016年7月20日(水)24:30~
※テレ朝チャンネル1では同日24:00から放送開始事前の特番を放送

スタッフ

原作:ONE(小学館「マンガワン」連載中)
監督:立川譲
シリーズ構成:瀬古浩司
キャラクターデザイン:亀田祥倫
美術監督:河野羚
色彩設計:中山しほ子
撮影監督:古本真由子
編集:廣瀬清志
音響監督:若林和弘
音楽:川井憲次
アニメーション制作:ボンズ

キャスト

影山茂夫(モブ):伊藤節生
霊幻新隆:櫻井孝宏
エクボ:大塚明夫
影山律:入野自由
鬼瓦天牙:細谷佳正
暗田トメ:種﨑敦美
花沢輝気:松岡禎丞
米里イチ:藤村歩
ツボミ:佐武宇綺

ONE「モブサイコ100(12)」 / 2016年6月17日発売 / 小学館
ONE「モブサイコ100(12)」
596円
Kindle版 / 596円

©ONE/小学館

ONE(ワン)
ONE

自身のサイトでWebマンガ「ワンパンマン」を公開し人気を博す。「ワンパンマン」は村田雄介を作画担当に迎えたリメイク版が、となりのヤングジャンプ(集英社)にて連載化。2015年10月にはテレビアニメも放送された。2016年には小学館のマンガアプリ・マンガワンと、裏サンデーにて連載中の「モブサイコ100」のテレビアニメ化も決定。ボンズ制作により、7月に放送がスタートする。

立川譲(タチカワユズル)

アニメ監督、演出家。「BLEACH」「キルラキル」「進撃の巨人」など人気のアニメ作品の絵コンテや演出を担当している。2013年には自身が原作、脚本、監督を手がけたアニメ「デス・ビリヤード」が全国の映画館などで公開された。2014年に放送されたアニメ「残響のテロル」では助監督を務めている。2015年1月には自身が原作、監督、シリーズ構成を担当したアニメ「デス・パレード」がオンエア。2016年7月には監督を務めるテレビアニメ「モブサイコ100」の放送がスタートする。