コミックナタリー PowerPush - 宮城理子「ミカド☆ボーイ」
執事の次は昭和スパイ!「メイちゃんの執事」作者、あこがれの神山健治監督と異色対談
「009」は劇場に2回見に行きました(宮城)
──宮城さんは神山監督の「009 RE:CYBORG」は、劇場に2回観に行かれたんですよね。
宮城 はい。普段、同じ映画を劇場で2度観ることはまずないんですが、「009」は2回見ました。私、初めて買ったマンガも「サイボーグ009」なんです。
神山 「009」は原作付きの作品の中では、いちばん苦戦した作品です。ファンの年齢層も広いですしね。ファンの思いというものが、ひとつではないので。
宮城 ほかのみんなは時が経っているのに、ジョーはひとりだけ記憶をなくして当時のままでしたよね。
神山 ジョーはすごく純粋なんです。彼の「正義とは何か」っていう、ピュアな思いを残したいなというのもあり、そうしました。記憶がなかったら、もう1回ピュアな気持ちで立ち向かえるんじゃないかなと思ったので。
宮城 私、いま「正義」というものにすごく興味があるんです。マンガやアニメではよく使われる言葉ですけど、「正義」というものを真剣に考えたいなと。「ミカド☆ボーイ」でもこの先ヒデが正義や戦争について考えていくシーンを描きたいなと思ってます。
少し忘れかけていたことを思い出しました(神山)
神山 それをまた、少女マンガの土俵でやろうというのがすごいですね。
宮城 私マーガレットで20年描いてるんですが、気づいたらもうベテランとか言われちゃって。たまに表紙を描かせていただいたりもするんですけど、でもこの雑誌で私が看板を張ってはいけないと思うんです。雑誌が老けるから。だからもっと若い作家さんに王道を行ってもらって、私は隅のほうにこっそり。和菓子のように(笑)。
神山 たまには和菓子もおいしいよ、という(笑)。
宮城 ここ数年はそんな感じに移行してます。
神山 マーガレットのメインの読者層は、10代の女の子ですか?
宮城 中高生ですね。特に14歳くらい。
神山 14歳ですか、なるほど。「ミカド☆ボーイ」を読ませていただいて、全然そんな感じはしなかったです。自分がもし中高生でこれを読んでいたら、ちょっと背伸びできる情報も入っていて、でもこの男の子たちに感情移入できるなと思いました。自分と近い年齢でいけば、彼らを指揮している神田とかに感情移入してしまうはずなのに、ちゃんと主人公たちに気持ちがいく。これはぜひ参考にさせていただこうと思いましたね。自分が最近少し忘れかけていたことを思い出させていただきました。
制服は反抗の象徴だった(神山)
宮城 ありがとうございます。アニメ制作では、最近は10代向けというのは少ないですか?
神山 最近はそうかもしれないですね。アニメを見る人の年齢層は上がってきていますから。でも実はいま、10代向けの作品を作っているんです。なのでなおさら「ミカド☆ボーイ」を読んで思うところがありました。
宮城 10代向けの作品、作られるんですか!
神山 はい。でももう10代の人と自分の感性が、さすがにズレがあるんですよね。「009」でジョーに制服を着せて思ったんですが、僕が制服に対して持っている印象が、若い人とはやぱり違っているんです。僕らの世代は、制服って体制とか学校に対しての反抗したいものの象徴だったじゃないですか。着せられている制服を脱ぎたい。
宮城 そうですね。
神山 でも今の子たちはたぶんもっと違うんです。特に女の子は、制服に対する嫌悪感なんてないですよね。日曜日まで制服を着たりしてる。
宮城 むしろ制服着れるうちが花ですから。でもその感性のズレも大事なんじゃないでしょうか。100%合致してもいけないと思うんですよ。
神山 なるほど。合わせすぎてもだめなんですね。
宮城 彼らにとって新鮮味がないので。かと言って全くズレちゃうと読んでくれないし。なんかこう、ちょっと違和感があるんだけど受け入れてもらえるような作品がいい気がします。
神山 そこをどう可視化していくのか、非常に興味があります。どう若い読者さんに届けていくのかということも含めて、早く続きが読みたいですね。
宮城 ハードル上がりすぎてどうしよう(笑)。2巻以降もがんばりますね。
神山健治(かみやまけんじ)
1966年生まれ。埼玉県出身。高校卒業後、アニメの自主制作に関わった後、背景美術スタッフとしてキャリアをスタート。美術出身の演出家として注目を集める。「ミニパト」で初監督。「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズでは、国内外に熱狂的なファンを獲得。続く「精霊の守り人」では一般層・高年齢層にも大きな評価を得る。「東のエデン」では、初の完全オリジナル作品として高視聴率をマーク。「攻殻機動隊S.A.C. SOLID STATE SOCIETY 3D」は“誰も観たことがない3D立体視”をテーマに、興行収入2億円を超える大ヒットを記録。2012年には石ノ森章太郎「サイボーグ009」を原作としたアニメ映画「009 RE:CYBORG」の監督を務めた。
- 「009 RE:CYBORG」 / 2013年5月22日発売 / バップ
- 豪華版 Blu-ray BOX / [Blu-ray BOX] / 10290円
- 通常版 / [Blu-ray Disc] / 6090円
- 通常版 / [DVD] / 5040円
あらすじ
昭和12年4月。世界大戦前夜の東京の片隅で、ひとりの少年がこの国の運命を左右するかもしれない大事件に巻き込まれようとしていた!! 本編の主人公・柴田英人(ヒデト)は名門中学に入学を決めた秀才。前途洋洋な人生のハズが、入学式当日に謎の少女の誘いにより、「神田商会」という怪しい会社に迷い込んでしまう。そこで、タダならぬ雰囲気をまとう神田という男に帝国少年諜報部「ミカド ボーイ」にスカウトされるのだが……。少年スパイがオトナの世界の闇を暴く冒険活劇漫画!!
VOMICも配信中!
柴田英人(CV:朴ロ美)※ロは王へんに路
銀(CV:小松未可子)
神田吾郎(CV:立木文彦)
桃子(CV:林真里花)
2013年で創刊50周年を迎える少女マンガ誌。毎月5日、20日発売。
宮城理子(みやぎりこ)
「しあわせな冬の日のために」で新人賞を受賞以来、 「花になれっ!」「ラブ▼モンスター」(▼はハートマーク)などを執筆し、マーガレット(集英社)で活躍中。2006年から 連載が始まった「メイちゃんの執事」は 水嶋ヒロ・榮倉奈々主演でドラマ化され話題に。同作は宝塚歌劇で舞台化もされた。2013年からは、マーガレットにて「ミカド☆ボーイ」を連載している。