「魔道祖師」紗久楽さわ×彩景でりこ|滾る設定、エモい人間関係、キャラの絆萌えといった“BIG LOVE”のオンパレード! 中国発大河ブロマンスファンタジーの沼とは

紗久楽さわ×彩景でりこ対談

「聖闘士星矢」でいう小宇宙みたいな(笑)。慣れ親しんだものがあったから、スッと入れた(彩景)

ドラマ「陳情令」ビジュアル

──おふたりは「魔道祖師」の実写ドラマ「陳情令」をご覧になって、「魔道祖師」に興味を持ったそうですね。まずは「陳情令」を知ったきっかけを教えてください。

紗久楽さわ 私は海外のファンアートから知りました。絵柄が好きな方々をTwitterでフォローしていたら、ある時期から中華服を着た長髪のキャラクターの投稿がかなり増えて、なんの作品だろうと思っていたんです。それがだいたい墨香銅臭先生の作品のキャラクターで。そこから「陳情令」に辿り着き、ちょうどWOWOWで放送されるときだったので観始めました。

彩景でりこ 私もTwitterで知ったのがきっかけでしたね。BL原作のドラマが始まるとTLに流れてきて。それに友達が先に「陳情令」を観ていたので、自分もWOWOWで追いかけました。ビジュアルがすごく美しくて、観ているだけで癒されましたね。第3話くらいかな。過去の因縁を描くシーンで温寧(ウェン・ニン)というキャラが登場するんですけど、黒目がちのすごくカワイイ子が出てきたなって思って。

アニメ「魔道祖師」の場面カットより。

紗久楽 彩景先生はのちのちの境遇込みで、温寧が好きそうだなって思ってました(笑)。

彩景 バレてる(笑)。ミーハーなんですけど、温寧を軸に観ていた感じですね。過去と未来が交錯する物語の展開も面白くて、どんどん引き込まれていきました。

紗久楽 私は「自分が求めていた美しい中華ファンタジードラマはこれだ!」ってなりましたね。CLAMP先生の「聖伝‐RG VEDA‐」あたりを映像化したら、こういう煌びやかな感じなんじゃないかって。私は世代ではないんですが、20、30年くらい前に日本で流行った、少女マンガ的要素をチラチラッと感じました。

彩景 あー、わかる! 私は田村由美先生の「BASARA」が頭をよぎったんですよね。「BASARA」は赤の王・朱里と更紗の恋愛模様だけじゃなくて、もっと壮大なストーリーが主軸にあるじゃないですか。大河系のドラマチックな世界観のなかに、恋愛要素もあって、そっちも見守るというか。「陳情令」もブロマンスは要素のひとつとして取り入れられてるだけで、そこがメインってわけじゃない。

アニメ「魔道祖師」の場面カットより。

紗久楽 「陳情令」を観て、私は墨香銅臭先生が気になって仕方なくなりましたね。何に影響を受けて、物語を書かれたんだろうって。影響を受けたものが特になかったらなかったで、乙女がときめくものは世界共通なんだっていう驚愕の事実が露見するわけですが(笑)。伺う機会があれば、ぜひご本人に聞いてみたいですね。

──おふたりの視点から「魔道祖師」の世界観を見たときに、面白いと感じた設定はどんなところですか。

紗久楽 「三国志」や「水滸伝」といった、中国の武侠・義侠小説の系譜を継ぐ作品としても見応えがあるし、さらにものすごく入り組んだ人間ドラマやミステリーっぽさも加わって、滾るしかないっていう(笑)。古典を踏まえつつも、キャラクターの関係性は今でいう「絆萌え」みたいな方向にきれいにまとまっているから、本当によくできてるなって思いましたね。

アニメ「魔道祖師」中国語版のオープニング映像より。

彩景 好きのオンパレードですよね。五大世家(ごだいせいか ※1)のしきたりとか、細かい設定が丁寧に作られているところもよくて。例えば清河聶氏(せいがニエし)の祖先はもともと肉屋で、よく刀を使って肉をさばいていたから、メインの武器が刀になったとか。家の業じゃないですけど、何かしらの所以があって、家ごとの能力や戦い方に繋がっているのが好きですね。

紗久楽 それぞれの衣装や旗も特色があっていいですよね。あと仙師(せんし ※2)は金丹っていう、自らの霊力と精神を結びつける核を体内に宿しているんですけど、修行を積んで金丹を鍛えることで、空を飛んだり寿命を延ばしたりできるようになるのが面白くて。仙人的な存在はいつ見ても憧れていいですね!

彩景 少年マンガにも、似たような感じの設定があったりしますよね。「聖闘士星矢」でいう小宇宙みたいな(笑)。慣れ親しんだものがそこかしこにあったから、スッと入れたんだなって今気付きました。

用語解説

※1. 五大世家…血筋や家柄によって分かれた修行の場を仙門(せんもん)といい、そのなかでも特に優れた雲夢江氏(うんむジャンし)、姑蘇藍氏(こそランし)、蘭陵金氏(らんりょうジンし)、岐山温氏(きざんウェンし)、清河聶氏(せいがニエし)の5つの名家を指す。なお各仙門の総称を仙門百家という。↑戻る

※2. 仙師…仙術を使って、妖魔や邪気から人々を守る者たちのこと。修行者として鍛錬にいそしむ。↑戻る

「ごめんね そして ありがとう」簡単で一番響く言葉(紗久楽)

アニメ「魔道祖師」字幕版のオープニング映像より、姑蘇藍氏。

──おふたりにはアニメ「魔道祖師」も観ていただきましたが、率直な感想を聞かせてください。

彩景 私は字幕版から入ったんですけど、絵がすごくきれいで、特に水墨画みたいに描かれたオープニングやエンディングの映像が、めちゃくちゃ好きだなと。

紗久楽 わかります。ちゃんと中国の古典的な絵画の手法を取り入れているのを見て、自分もこういうのがやりたいって思いました。抹額など紐類の動きや、衣装のたなびき方の細かさにも驚き恍惚としましたし、髪の毛の描き分けがすごいんですよ。ピンク・赤・緑って単純に色分けするのではなく、ほぼ全員が黒髪ロングなのに、バリエーション豊かに品のある描かれ方をしているのが萌える。よだれが出ます。

彩景 華やかですよね。前髪の垂らし方にしても、細やかなこだわりを感じますし。個人的にはおじさん枠というとアレですけど、岐山温氏の宗主・温若寒(ウェン・ルオハン)や、蘭陵金氏の前宗主である金光善(ジン・グアンシャン)とか、あのへんの人たちがイメージより若いなって感じました(笑)。仙師だから見た目が老けない設定なんですよね。

アニメ「魔道祖師」の場面カットより、手前から藍忘機と魏無羨。

──アニメでは13年前に命を落とした魏無羨(ウェイ・ウーシエン)が、献舎の術(けんしゃのじゅつ ※3)で蘇るところから物語が始まります。メインキャラクターである魏無羨と藍忘機(ラン・ワンジー)の人物描写についてはいかがですか。

紗久楽 最初のほうはなかなか一緒にいないので、この2人はどこで出会って、どうやって距離を縮めていくんだろうって、すごく気になりました。過去の回想シーンで初めて出会ってからも、藍忘機はしばらくの間まったく心開かないですし。むしろ、キレてる(笑)。

彩景 今考えると、あの心開いてなさも愛おしいんですけどね。

アニメ「魔道祖師」の場面カットより、藍忘機。

紗久楽 屠戮玄武(とりくげんぶ)が巣くう洞窟の場面で、仲間を逃がして2人だけ閉じ込められてしまうじゃないですか。魏無羨が藍忘機の傷の手当てをしたり、共闘して屠戮玄武を倒したり、少しずつ心を開いていく様子がうかがえるんですけど、そういう場面をちょいちょい挟んでくるのが本当にうまいんですよね。

彩景 私は13年後に再び魏無羨と出会った藍忘機が、今度こそ絶対間違えないぞって思っているのがすごく好きで。一度は魏無羨を失ってしまったわけじゃないですか。普段だったら、私はこの2人にはハマらないないと思うんですけど、だんだんかけがえのない関係になっていく過程がすごく丁寧に描写されていて、観ていると沁みますね。

紗久楽 アニメでは、実は小さい頃、魏無羨は藍忘機に出会ってるというシーンがあるんですよね。本人たちがお互いを自覚する前に会っていたというのがひたすらエモいんですよ。

彩景 関係性がやっぱり少女マンガっぽいんですかね。柊あおい先生の「星の瞳のシルエット」に登場する久住くんと香澄ちゃんみたいな。

アニメ「魔道祖師」の場面カットより、魏無羨。

──(笑)。

彩景 藍忘機の兄・藍曦臣(ラン・シーチェン)も好きなんですけど、お兄ちゃんってめちゃくちゃ人格者じゃないですか。口にしなくても藍忘機の言いたいことを理解してくれるし、だいぶ甘やかされたと思うんですよ。そこに魏無羨のような、今までいなかった天真爛漫で問題児タイプの人間に突然絡まれて、藍忘機は心底びっくりしたはずなんです。いきなり下ネタを言ってきたり、春画を持ち込まれたりして(笑)。

紗久楽 姑蘇藍氏の双璧で、清廉潔白な彼にそこまで踏み込んだ人はいなかったでしょうから。魏無羨の踏み込み方がまたチャーミングですよね。

彩景 確かに。本気で怒られたりしたら引くし、ここまではOKなんだって相手の出方を探っている感じが。

紗久楽 いつの間にか、めちゃくちゃ心に入り込まれている藍忘機もまたかわいい。

アニメ「魔道祖師」の場面カットより、虞紫鳶。

彩景 全然違うタイプの人間と向き合うって、人として絶対的な成長があるじゃないですか。あの2人じゃないとダメなんだろうなっていう説得力にも繋がってると思います。

紗久楽 魏無羨が藍忘機の後ろに隠れていたずらを仕掛けたりするんですけど、アニメではそういうときのしぐさもコミカルに描かれていて、盛り上がるポイントだなって感じました。

──そのほかの描写で、心に残っているシーンや萌えたエピソードはありますか。

紗久楽 岐山温氏の若様である温晁(ウェン・チャオ)の軍が、船に乗って雲夢江氏(うんむジャンし)の本拠地・蓮花塢(れんかう)をガーッと攻めるシーンですね。仙術を使うときのエフェクトがすごく凝っていて。赤壁の戦い的に、いいですよね、大軍の船で攻めてくるのは!

アニメ「魔道祖師」の場面カットより、藍忘機。

彩景 はいはいはい、火矢の雨が降るシーン! 迫力がありましたよね。そのあたりから、めちゃくちゃ話も面白くなるじゃないですか。

紗久楽 そうそう! 私は一族郎党根絶やしといった恐ろしい展開が来ると、テンションが上がるタイプなので(笑)。

彩景 わかる(笑)。江澄(ジャン・チョン)の母・虞紫鳶(ユー・ズーユエン)が、鞭になる仙器の紫電で戦うシーンもよかった。めちゃくちゃ強いんですよね。

紗久楽 そんなに強いオンナだったのか!ってなりますよね。紫電が江澄に受け継がれるところも……。本当にあそこから物語の深みにはまり、のめり込み度が増すと思います。

彩景 あそこは泣けますよね。名シーンだと思います。

──虞夫人が江澄と魏無羨に投げかけるセリフもまた、彼らの行く末を考えるといろんな意味で刺さります。

紗久楽 それでいうと「ごめんね そして ありがとう」というセリフもそうですね。すごく簡単な言葉ですけど、一番響くなって。はじめは温寧の姉・温情(ウェン・チン)が夷陵老祖(いりょうろうそ ※4)となった魏無羨に言うんですよね。それをまた現世の魏無羨が、蘭陵金氏の金凌(ジン・リン)に伝える。そこ至るには複雑な事情が入り組んでいるんですけど、巡りめぐる言葉の繋がりもいいなって思いましたね。

用語解説

※3. 献舎の術…古くから伝わる禁術。己の血で陣を書き、怨霊を召喚して願いを託す。命と引き換えになるため、試すものはほぼいない。魏無羨はこの術によって蘇った。↑戻る

※4. 夷陵老祖…魏無羨の呼び名。夷陵にある埋葬地・乱葬崗(らんそうこう)を本拠にした鬼道の開祖の意味。↑戻る

モブになって、藍忘機と魏無羨の2人を遠くで見守っていたい(紗久楽)

──「魔道祖師」には多くの魅力的なキャラクターが登場しますが、一番推せるなと思うキャラクターは誰ですか。

紗久楽 一番好きなのは藍忘機で、家的には蘭陵金氏が好きですね。藍忘機は存在そのものが、愛しいんですよ。一途でまっすぐで。ちなみにウチの父親も観たらしくて、同じく藍忘機推しだって言ってました(笑)。

彩景 勝手にさわさんは、藍忘機と魏無羨の2人セットで好きだろうなって思ってました。さらに言えば、魏無羨のほうが好きそうなイメージがあります。

紗久楽 藍忘機でした(笑)。藍忘機だけはどんな立場になろうと、魏無羨のもとに駆け付けてくれるんですよね。仙師のなかの仙師みたいな人なのに。

アニメ「魔道祖師」の場面カットより、温寧。

彩景 魏無羨と江澄のように、兄弟みたいに慕って育ってきた相手でも袂をわかつという、すごくつらい関係性も描かれるなか、お互いがお互いの唯一無二の味方だっていうのは救いでしかないですね。

紗久楽 彩景先生はやっぱり、温寧ですか?

彩景 温寧がやっぱりすごくいい子で、一番かわいいですかね。温情との姉弟間のやり取りもたまらないですね。でも、ドラマにハマったのは温晁の存在があったからなんですよね。彼の父・温若寒が、なんで皆殺しにしなかったのかと温晁に問うシーンも好きですし。要は、温氏推しなんでしょうね(笑)。

──もし1日だけ「魔道祖師」の登場人物になれるとしたら、どのキャラクターになりたいですか。

アニメ「魔道祖師」の場面カットより、魏無羨。

紗久楽 若干、夢女子脳があるので、普通にモブになりたいって思いました(笑)。モブになって、藍忘機と魏無羨の2人を遠くで見守っていたいって。

彩景 (笑)。私はなんだろう。蓮花塢の池に咲く蓮になりたいかな(笑)。もしくは、「五大世家が大変らしいぞ」って噂話をする市井の人たちになりたい。

紗久楽 五大世家のカリスマ性というか、恐れ多さがすごいですよね。

彩景 言ってしまえば、アイドルみたいなもんですよね。嵐の5人が治める国みたいな。温氏は好きだけど、領地に住むのは大変そうなので(笑)。距離の離れた平和な国に住んで、そっと行く末を眺めていたいですね。

──風の噂で聞くのがちょうどいいみたいな(笑)。

彩景 そうそう、たまにブロマイドを買ったりしたいですね、温氏の若様の(笑)。

紗久楽 射日の征戦(しゃじつのせいせん ※5)で活躍した人物の似顔絵が売られたりしてましたよね。手配書もたくさん出回っていたから、手配書を集めたいですね。

アニメ「魔道祖師」の場面カットより。

彩景 あ、それいいですね! じゃあ、似顔絵を描く人になりますかね(笑)。

──(笑)。実際に、どのキャラクターを描いてみたいと思いますか?

彩景 やっぱり、最初は好きなキャラを描きたいから、温寧ですかね。

紗久楽 そうなると、私は魏無羨、藍忘機、金凌かな。家推しの金氏は全員描きたいですね。

彩景 みんな長髪で美形だから、描くのが楽しそうですよね。ファンアートを描きたくなる気持ちがわかります。

──最後に「魔道祖師」の世界にこれから初めて触れる方に対して、ひとことお願い致します。

紗久楽 どんな人も絶対推しができるはず! 誰を好きになっても、楽しい話ばかりではないけど、推しだったらその境遇ごと萌えると思います。1人で観るのも楽しいですが、ぜひお友達と一緒に観て、推しについてワイワイ語り合ってほしいですね。あとウチの父親も観ていたくらいなので、年齢もあまり関係ないのかも。今私が中学生だったら、絶対観てますもん(笑)。

彩景 いろんな要素が詰め込まれているから、どの枠の人にも届くと思いますね。自分が好きな要素やキャラの視点を軸に観ても楽しめますし。撒かれた種がどんどん回収されていく展開がめちゃくちゃ気持ちいいので、最後にすごいご褒美が待っているという気持ちで観続けてほしいですね。

用語解説

※5. 射日の征戦…悪行の限りを尽くす岐山温氏に、雲夢江氏・姑蘇藍氏・蘭陵金氏・清河聶氏をはじめとする仙門百家が挑んだ大規模な戦い。射日は温家の家紋である、太陽を打ち落とすという意味を持つ。↑戻る