大人の恋愛×サスペンス!タイBL好きの2人も大興奮、マンガ版「Manner of Death」の魅力

タイBLの人気作品「Manner of Death」、そのマンガ版1巻が発売された。「Manner of Death」は容疑者と法医学者の恋愛を描いたサスペンスラブ。ドラマ版は多くの作品でカップルを演じている人気俳優・マックスとトゥンが主演を務めており、またタイのBLドラマには珍しい本格クライムサスペンスということもあって、大きな話題を呼んだ。ドラマの原作となった小説の作者は現役医師で、そのため死因や解剖結果といった医療的な部分の描写もリアリティがあると評価されている。マンガ版では、この小説のストーリーをもとにコミカライズ。執筆は梅本ゆかりが手がけている。

コミックナタリーでは、話題沸騰中のタイBLを早くから追いかけているブロガーの冬夢さん、マリーさんをお呼びして、マンガ版「Manner of Death」について語り合ってもらった。ドラマ版も好きで観ていたという2人は、マンガ版のどんなところを魅力に感じたのか? 最後のページには、マンガ版の冒頭部分も掲載している。

取材・文 / 七夜なぎ

対談参加者プロフィール

冬夢

もともとBL作品が好きで、中国や韓国といったアジア系の作品を観ているうちに、タイBLに出会う。初めて観た作品は「2Moons」。「役者さんがかわいい!」と衝撃を受け、続々と「Make It Right」や「SOTUS」などを視聴、タイBLにハマり今に至る。

マリー

韓国ドラマやK-POPを追ううちに、タイの作品と知らず「Love By Chance」を視聴。「なんて素敵な世界が広がっているんだ……」と感動し、タイBLにハマっていく。ハマった当時は日本語で見られる情報が少なく、英語や韓国語の情報を邦訳しつつ、タイの作品を追いかけていた。

タイBLに新風を呼んだ大人の恋愛×サスペンス

──数々のタイBL作品を楽しんできたおふたりに、今日は「Manner of Death」の魅力を伺っていきます。原作はSammonさんによる小説で、2020年にドラマが制作されヒット。2021年に原作小説の日本語訳版が発売、さらにコミカライズされ、ついに11月15日にコミックス1巻が発売されました(※以降、それぞれ「ドラマ版」「小説版」「マンガ版」と称する)。まず、ドラマ版はファンの間でどのように支持されていたのでしょうか?

冬夢 ドラマの制作が発表されたとき、タイBL好きの間で「主役のカップルは誰が演じるんだろう」と予想が繰り広げられたんですね。大人の恋愛で、サスペンスやミステリー要素があって、法医学もので……というキーワードや原作の表紙のイラストから予想して、ファンから名前が挙がっていたのが、マックスくんとトゥンくんだったんです。

※ドラマ版でメインキャラクターを演じたマックスとトゥンは、数多くのタイのドラマシリーズでカップルを演じており、ファンの間では「MaxTul(マックストゥン)」とセットで呼ばれている。

マリー “大本命”でしたよね。私も「Together with Me」の頃からマックスくんとトゥンくんのファンなのですが、本当にぴったりでした!

マンガ版「Manner of Death」の扉ページ。

マンガ版「Manner of Death」の扉ページ。

冬夢 しかも始まってみると、タイBLではこれまでにない犯罪サスペンス! 「誰が犯人なんだ」と、毎週自分で相関図を描いていました(笑)。

マリー 法医学者のバンは、自殺と思われていた女性の死体を検死し、他殺と断定するが、犯人らしき人物から自殺と報告するよう脅される。第一発見者の塾講師テーンを容疑者と怪しんで調べるうち、彼にだんだん惹かれてしまい……という、「この人を愛していいのか」と悩みつつも深まっていく関係にキュンキュンするシーンと、「事件の真相はなんなのか」とミステリーやサスペンスドラマの緊張感があるシーン、どんでん返し、どれも楽しむことができました。

──「ミステリーやサスペンスものもあるんだ!」と感じた読者も多いかもしれません。タイBLといえば「2gether」などの学園もの作品の印象が強いんじゃないかと思います。

冬夢 きっとそうですよね。実際、大学生を中心とした学園ものがタイBLでは多いです。大ヒットした「2gether」はまさにタイBLの“王道”。日本のBLの一般的なイメージとは少し違っていて、男性同士の恋愛が男女の恋愛と大きく変わらない空気感で描かれ、ハッピーエンドで明るくまとまる……この「ハッピーエンド」がタイBLで大事なところだと思っています。

マリー ハッピーエンド、大事ですね! 主役2人のラブストーリーを「尊い……」と応援する気持ちになりながら観れるところがいい。

──そういったお話を聞くと、「Manner of Death」はまた違うタイBLの魅力を楽しめる作品なのかなと感じました。

冬夢 そうですね。こうした大人同士の恋愛ものはほとんどなかった印象です。個人的には、「Manner of Death」がタイBLの世界で“大人の恋愛もの”が増えるきっかけになったと感じています。

マリー しかもこんなにサスペンスものを押し出しているのもすごく珍しい、ほぼ初めてですよね。「学生もので、初恋で、男性を好きになってしまって苦悩する」という“タイBLのあるある”を崩す、先駆者的な作品だと思います。

第1話より。主人公のバンは監察医で、とある女性の死体を検視することになる。

第1話より。主人公のバンは監察医で、とある女性の死体を検視することになる。

日本のBLマンガと、タイのBLドラマのいいとこどり

──ドラマ版のヒットや、日本でのタイBL人気の盛り上がりによって、今回「Manner of Death」がマンガになりました。読んでの感想を伺っていきたいです!

冬夢 日本のBLマンガが好きなので、「日本のBL作家さんがタイBLをコミカライズする時代になったんだ!」というところがまずうれしかったです。作者の梅本ゆかりさんは本作が初コミックスということですが、大人の男性の絵が素敵だなと。

マリー 日本のBL好きは、マンガの形になじみのある人が多いと思うんですね。だからまずマンガ化そのものがうれしくて、“布教”もしやすくなったなと感じます。ちょっとコミカルなシーンでの、頭身が小さくなったデフォルメ絵もかわいいですよね。

第1話より、バンとプートのやり取り。デフォルメの効いたイラストは、マンガならではの表現だ。

第1話より、バンとプートのやり取り。デフォルメの効いたイラストは、マンガならではの表現だ。

──マンガ版はドラマのコミカライズではなく、ドラマの原作にあたる小説版を元にしています。ドラマ版と違う部分もあるのでしょうか?

マリー ストーリーラインは同じながらも、少しずつ違っているところもありますね。見比べて楽しんでいます。1巻ラストの第8話では、ドラマ版にはいなかったキャラが登場するんです。それもあって今、「早く先が読みたい……」と震えています(笑)。

冬夢 うんうん。女性の死を巡る事件に主人公の法医学者・バンが巻き込まれて、容疑者であるはずのテーンに惹かれていく……というストーリーは変わりませんが、マンガ版は、バン先生の心情を丁寧に描く形で構成されていると思いました。バンは過去にとらわれているキャラクターなんだなというのが、読み進めるにつれてどんどんわかってきて……。自分の過去やトラウマに苦しんでいて、誰も信用していないのに、殺人者かもしれない男を愛してしまうことに葛藤している。

マリー 信念を持っているけど、自分を出していないし、周りに見せないようにしている。でもそこがきっとテーンには見えてくるんだろうなと……。より、儚さやかわいらしさの面を感じるキャラクターになっていますよね。

冬夢 確かに! でも、「ツン」のときと「デレ」の差が激しいところはドラマ版と雰囲気が同じかも。

マリー そのギャップに読者もテーンも心を掴まれてしまう(笑)。一方で、バンの“相手役”であるテーンは、ドラマと近い雰囲気があると感じました。ミステリアスで、バンに近づいてくるけれど、真意はなかなか掴めない。ストーリーが進んでいくと、家族に関する確執を背負っていることが明らかになっていく……。

第2話より。テーンは死亡した女性の恋人で、遺体の第一発見者でもあった。バンは彼の様子などから、テーンが殺人事件の犯人ではないかと疑う。

第2話より。テーンは死亡した女性の恋人で、遺体の第一発見者でもあった。バンは彼の様子などから、テーンが殺人事件の犯人ではないかと疑う。

冬夢 バンの友人の検事・プートにもいい意味で驚きました。最初はドラマ版と変わらず女たらしなんだなと読んでいたら、1巻の後半にプートからバンへの感情が明らかになるシーンがあって衝撃! 「ええっ! そうだったの!」と沸き立ちました。ほかにもバンを慕う少年ソラウィットや、バンの職場での助手ファーイなどもかわいい。

マリー 小説版の作者Sammonさんは現役のドクター。マンガ版は解剖シーンや法医学知識を生かしてピンチを切り抜けるシーンが多くて、そこも読んでいて楽しかったです。

──法医学シーンは、いわゆる「FBI」や「CSI」のような、海外のミステリードラマシリーズの雰囲気も感じました!

第3話より。本作の舞台はタイ北部の静かな町。マンガ版ではその地方の訛りを、日本風に置き換えている。

第3話より。本作の舞台はタイ北部の静かな町。マンガ版ではその地方の訛りを、日本風に置き換えている。

マリー 日本のマンガ読者にとっての読みやすさがありつつ、タイ原作ならではの雰囲気もあるのがいいなと思います。作品の舞台はタイの東北地方なんですが、ローカライズと言えばいいのか、その方言を日本の方言に置き換えていて、ニュアンスが掴みやすいよう工夫されている。メールの文面や資料などにはちゃんとタイ語が使われているので、「ああ、タイのお話だった」と味わうこともできるんですよね。