10月より放送されるTVアニメ「禍つヴァールハイト -ZUERST-」。KLabGamesのスマートフォン向けオンラインRPG「禍つヴァールハイト」の世界観をもとにしつつも、細田直人監督が「自由に作らせてもらった」というアニメオリジナルストーリーでは、ゲームの20年前を舞台に、骨太なドラマが展開されていく。
物語の軸になるのは、運送屋のイヌマエルと、新米兵士のレオカディオという2人の青年。コミックナタリーではこの2人にスポットを当て、イヌマエル役の阿部敦、レオカディオ役の小野友樹に本作への意気込みや、新しい収録様式の中でのアフレコへの向き合い方、互いへの芝居への印象などをメールインタビューで語ってもらった。また公式サイトで公開中の細田監督へのインタビューも一部掲載しているので、監督のこだわりの片鱗を併せて感じ取ってほしい。
取材・文 / 柳川春香
CHARACTER
オリジナルキャラクターだからこそ、1から作っていける楽しみ
──本作については細田直人監督も「海外ドラマのような物語を目指した」とおっしゃっていますが、設定やドラマの骨太さが大きな魅力ではないかと思います。阿部さんも「リアルな人間関係が魅力の一つ」と公式サイトでコメントされていましたが、どういったところにリアルさを感じられたのでしょうか。
阿部敦 魔法などが存在する世界観ではありますが、ファンタジーのように何もかもがうまくいくことはありません。けっこう残酷なことを突きつけられる描写があるので、そこにリアルさを感じました。
──小野さんは本作の魅力として「キャラクターの魅力」を挙げていらっしゃいました。
小野友樹 レオカディオに関して言えば「過去」を知れるという大きなポイントがあります。イヌマエルも同様で、すでにPVなどで公開されている「現在の」イヌマエルに至る前日譚を通して、キャラクターに触れられるところにも魅力があると思います。ストーリーに関しても、まだ触れられない部分が大きいかと思いますが、イヌマエルの「巻き込まれ」感をはじめ、さまざまな謎が徐々に明らかになっていくさまは、ぜひ注目していただきたいと思います。
──小野さん演じるレオカディオは、原作ゲームでは小山力也さんが演じていらっしゃる貫禄のある機動兵団の隊長ですよね。アニメの舞台はゲームの20年前ということで、まだかわいらしさの残る少年の姿ですが、演じる際に小山さんの演技を参考にされた部分もあったのでしょうか。
小野 実はオーディションの際に当初、「力也さんみを入れて……!」というディレクションがありました。力也さんの演じてらっしゃるレオカディオは、ゲームで聴かせていただいたうえでオーディションに臨んでいたので、ダメ元でトライしてみました。ただ最終的には、等身大のレオカディオを見たい、とのことで、僕の思ったままのレオカディオで演じさせていただけました。なので、アフレコ時には感じたままかなりストレートに演じさせていただいています。部分部分で、「もっと警戒心を持って!」などのディレクションをいただきつつ、相談しながらレオカディオ像を作らせていただいています。
──阿部さん演じるイヌマエルは、アニメオリジナルキャラクターでありながらダブル主人公の片翼を担うキャラクターですが、プレッシャーは感じましたか?
阿部 プレッシャーなどは特にありませんでしたね。オリジナルキャラクターだからこそ、1から作っていける楽しみがありました。あと、オーディションのときに急に「最終的に貫禄のあるキャラになるので、それでセリフをしゃべってもらえますか?」と言われて少し動揺してしまいました。
──細田監督からはイヌマエルというキャラクターについてどのようにご説明を受けたのでしょうか。
阿部 基本的には常に愛想笑いを浮かべているような、あまり強くは出ないキャラクターと言われていたと思います。
──公式サイトに掲載されたコメントでも、阿部さんはイヌマエルを「気弱なお人好し」と表現していましたよね。演じていくうちにその印象が変わる部分はありましたか?
阿部 お話を進めていくと意外にクレバーな部分や、率先して行動する勇気があるキャラだなと思いました。ぜひアニメで皆さんにも観ていただきたいです。
──本作については細田監督も「かなり自由に作らせてもらった」とおっしゃっていますが、演じている立場として、その「自由さ」や、監督のこだわりが出ているなあと感じる部分はありますか?
阿部 今回のキャスティングにも監督のこだわりがあるように感じます。アニメ作品ではありますが、外画で活躍しているキャストの方を抜擢したりなど、作品としてバランスをとっているように感じますね。
小野 レオカディオとしてのお芝居を、感じるままかなり“自由に”させていただいております。時折テイクを重ねて調整をさせていただく箇所があり、その際は監督の意図を汲めるまで何度もトライさせていただいております。
お互いの芝居を想像し、信じること
──アフレコは個別に行われ、監督からのディレクションはリモートで出されたと聞きましたが、やはりまだまだ難しさは感じていらっしゃいますか?
阿部 どの現場でも同じですが、やはり自分と掛け合いをしてくれる方がいないというのはお芝居が難しくもあり物足りなくもあります。でもだからこそ想像力をフルに活用して収録しています。これはこれで貴重な経験ですが、早くみんなで収録できるようになりたいですね。
小野 確かに皆さんで一緒に収録をできていた今までのほうが、いろいろな意味でやりやすさはありました。が、生活様式の変遷に伴い、今や収録様式もこの形が定着しつつあります。お互いの芝居を想像して、信じて、収録を進めさせていただいております。
──普段以上に想像力が重要になっているんですね。では、小野さん演じるレオカディオは阿部さんから見てどういったキャラクターですか?
阿部 若くて純粋で、でもそれゆえに無知で、これからどう成長していくのかがとても楽しみなキャラクターです。僕はどちらかというとレオカディオのようなキャラクターを担当することが多いので、小野くんのお芝居を見ながら「なるほど、そこはそう演じるのか」と、新たな発見があるのが面白いですね。
──小野さんから見た阿部さんのイヌマエルはいかがでしょう。
小野 前述の「信じる」部分に関係した話ですが、阿部さん演じるイヌマエルは一度聴いたら耳にこびりつく感覚がありました。一緒に録っていなくても、想像するだけで聴こえてくるような。もちろん阿部さんのことですから、想像を超える芝居を仕掛けてくることもありますが、それを含めて「信じる」ことでお芝居をさせていただいております。
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