コミックナタリー Power Push - 安藤ゆき「町田くんの世界」川端志季「宇宙を駆けるよだか」

別マの異色2タイトルが「このマンガがすごい!」入賞! 次世代を担う2作家を直撃

「宇宙を駆けるよだか」

「宇宙を駆けるよだか」

かわいくて素直な女子高生のあゆみは、恋人との初デートに向かう最中、容姿にコンプレックスを抱えたクラスメイト・然子の策略で、心と身体を入れ替えさせられてしまう。然子の身体のまま学校に登校したあゆみは、容姿が違うことで周囲の扱いがまったく変わったことに唖然とする。戸惑うあゆみだったが、然子から自身の身体を取り戻すことを決意し……。

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川端志季インタビュー

「読みやすさ」を大切に

「宇宙を駆けるよだか」カラーカット

──「このマンガがすごい!2016」オンナ編の5位ランクイン、おめでとうございます!

ありがとうございます。ただ地味な作業を続けてきただけなので、こんな評価をしていただけると思っていなくて。驚きでいっぱいです。

──大人も含む多くの読者を惹きつけた結果だと思うのですが、ご自身ではどのあたりが響いたと思われますか?

うーん、私が読んでいただくためにしていることは、子どもでも大人でも読みやすいようにすることですかね。フキダシの中の文字数とかコマに入れる情報量が多すぎないようにと。「よだか」はちゃんと読まないと、内容がわからない部分が多いので、せめて読みやすいものをと思って作っていました。

別マっぽく描けていないのはわかっていた

──同じく別冊マーガレットから「このマンガがすごい!2016」にランクインした「町田くんの世界」の安藤ゆき先生に、川端先生への質問をいただいています。「連載を経験して、考え方やマンガの描き方などで変えたこと、もしくは自然と変わったことはありますか?」。

あゆみと然子は心と体が入れ替わってしまう。

むしろ変わらなかったことがひとつもなかったくらいといいますか、毎月何かしら変えていて。全部で15回の連載だったんですが14回目で初めてミリペンで絵を描いてみたり、最終回で初めてGペンを使ってみたり。道具もネームの作り方とかも変えて、うまくいかなくても「タイミングが悪かっただけかな?」みたいな感じで、気にせず別のやり方を試し続けていました。

──考え方の面ではいかがですか?

ずっと、自分がちょっと別マっぽく描けていないっていうのはわかっていたんです。恋の話を描けば別マになるわけでもないですよね。王道のストーリーを描けなくていいのだろうかと迷っていたんですけど、「よだか」は割と好き勝手にやらせてくださって、描くのがすごく楽しかったんです。それで少しだけ自信がついたように思います。……あの、今回安藤先生と同じ記事に載ると聞いて、すごくうれしくて。大ファンなんです!

──そうでしたか。

「町田くんの世界」は連載が始まる結構前に、別マで連載すると仮定して、最初の何ページかだけを描くっていう企画に参加していたんですけど、その頃から大好きなので。町田くんみたいに、男子からも女子からもモテる「人たらし」を描くのって、大変だと思うんですよ。でも狙って描いている匂いすらしないし、ごく自然に町田くんを好きになれるマンガじゃないですか!「安藤先生の世界」ですよね。誰にも真似のできない世界を描かれている。「よだか」を「このマンガがすごい!」で5位に選んでいただいたこともうれしかったんですけど、「町田くんの世界」が3位って聞いた時はもっと喜びました。……熱量が多すぎて気持ち悪いでしょうか(笑)。

──いえ、熱い思いをありがとうございます!

描いていない時も、常にキャラがそばにいた

「宇宙を駆けるよだか」カラーカット

──「よだか」にはしろちゃんと火賀くんというカッコいい男子が2人出てきますが、カッコよく描こうと意識をされていたのですか?

カッコいいと言っていただくととてもうれしいんですけど、カッコよさについて考える余裕はなかったですね。カッコよく見せようとすると、うまく描けなくなってしまう気もして。ポンポンと自然に出てきたキャラを描きました。

──キャラクターたちの感情が表情だけでものすごく伝わってくるのですが、どのように描いていらっしゃったのでしょう。

ネームのときは、キャラの隣を歩いて「今どんな気持ち?」って聞いてみたり、かなり高いところに登って「今あんな動きをしてるな」ってキャラたちを見てみたりするんです。でも作画でこの表情は決めなきゃ、みたいな時にはキャラの中に入り込む。だから泣いている人を描いているときは私も泣いてたり、叫んでいるときは叫んだりしています。情緒不安定みたいなんですけど(笑)。

以前から公史郎にほのかな思いを寄せていた然子。

──ラストの海根さんの表情もとてもいいですね。

そこは迷いなく、この顔だと思って描けました。今まで然子の顔が出るコマは小さかったので、しっかり描いてあげたのは最終回が初めてでした。

──「描いてあげた」という感じなんですか。

はい。自分の子供みたいな感覚で……不思議でした。読み切りのときは、描き終わるまで名前も覚えないくらい、キャラとは距離があって。でも連載だと、描いていないときも、キャラと常に一緒にいる感じがして。「連載ってこういう感じなんだ」と、びっくりしましたね。

安藤ゆき「町田くんの世界」2巻 / 発売中 / 432円 / 集英社
「町田くんの世界」2巻

物静かでメガネ。そんな外見とは裏腹に成績は中の下。アナログ人間で不器用。なのに運動神経は見た目どおりの町田くん。そんな彼に弟が出来たり、告白する女の子が現れたり、初恋の人が現れたり……。人を愛し、人から愛される町田くんの第2巻です!

万丈梓「変則系クアドラングル」2巻 / 発売中 / 648円 / ほるぷ出版
「町田くんの世界」2巻

あゆみと距離を置くかつての恋人・水本、そしてそばに寄り添い続けてくれた火賀。そのふたりが「赤月の日」に入れ替わってしまい、困惑するあゆみだったが……。一方、美しい容姿も恋人も手にしたはずの然子は絶望を深めていき……。愛されるべきは、外見か、中身か。衝撃のクライマックス。

安藤ゆき(アンドウユキ)
安藤ゆき

2004年にデラックスマーガレット(集英社)にて、「星とハート」でデビュー。2009年に短編集「不思議なひと」を刊行する。2014年に上梓した短編集「透明人間の恋」が、「このマンガがすごい!2014」のオンナ編17位にランクイン。2015年にも短編集「昏倒少女」を発表する。同年より別冊マーガレット(集英社)にて、「町田くんの世界」を連載中。

川端志季(カワバタシキ)
川端志季

別冊マーガレット2012年9月号(集英社)に付属の別冊ふろくbianca1 1/2にて「08:05の変顔さん」でデビュー。その後もコンスタントに読み切りを発表し、2014年に短編集「青に光芒」を発表。別冊マーガレット2014年10月号から2015年12月号まで「宇宙を駆けるよだか」を連載した。