映画「黒執事」
小野大輔が語る水嶋セバスチャン
小野セバスは抑揚なく、水嶋セバスはより明確に
──冒頭のマフィアと戦うシーンなど、原作やアニメにもあるシーンが実写化されていたわけですが、そのあたりはいかがでしたか。
より、怖いなと思いました。マンガだとギャグで抜いたり、少しマイルドにできると思うんですけど、ひたすら怖かったです。マフィアを追い詰めていくシーンも、マンガだとセバスチャンがすごく余裕でいなす感じでしたが、映画版はずっと追い詰めている感じ。水嶋さんの演技が怖かったです。悪魔でしたね。
──アニメも原作よりかなりダークでしたが。
そうですね。アニメを演じるときも第1話の最後のシーンは何回も録り直しました。もっと低く、もっと無感情に、もっとホラーにと言われました。
──ホラーに。
不気味な怖いイメージを抑揚なく深く低い声で出してほしいと。そう考えると、水嶋さんのセバスチャンとはやはりアプローチが違います。映画版セバスチャンは、いやらしい部分はしっかりいやらしく。抑揚もはっきりとつけてますし、動きがありますよね。相手に対してのいなし方というか、挑発のしかたがより明確になってるとも思いました。それが怖いんですよ。
根幹となる主従関係が描かれていれば、紛うことなき「黒執事」
──小野さんがアニメでセバスチャンを演じるときに、一番気を付けていたことはなんでしょうか。
余計な感情を乗せないようにすることですかね。セバスチャンの目的は、シエルの魂を喰らうというところのみにあるので。そこ以外に頓着しない、興味を持ったり食いついたりしないんです。
──ええ。
好きとか嫌いという感情って振り幅があるじゃないですか。でもセバスチャンはシエルの魂以外に興味がないんですよ。ともすると、お芝居でそういう振り幅を出しがちなんですけど、あえてそれを出さないということを徹底してました。それは「黒執事」の根幹の部分なんです。
──セバスチャンとシエルの関係性、ということでしょうか。
そうです。セバスチャンはシエルしか生きる意味がないので。その主従関係が「黒執事」なんですよ。この作品の一番真ん中にあるのって、「御意」=「イエス、マイロード」なんです。いびつでもあるけれど、ものすごく美しくて崇高な主従関係。そこを実写版でもしっかりと描いてくれていたので、「ありがとうございます」の一言ですね。
──太鼓判が押されました。
根幹のテーマは全くぶれてませんね。でもすべて同じにやったら面白くない。あくまで映画ですから!
──ははは(笑)。
舞台版もありましたし、都度都度、そのフィールドでの「黒執事」があっていいと思うんですね。それぞれのスタッフさんが「黒執事」を愛してくれて、最大限表現したくて作ってくれているというのは幸せなことです。アニメスタッフの真ん中にいさせてもらう立場からも、改めて感謝したいです。本当にありがとうございます。
映画「黒執事」2014年1月18日(土)新宿ピカデリーほかにて全国ロードショー
執事の名はセバスチャン。知識と実力、品格と容姿を兼ね備え、非の打ち所があるとすれば性格の悪さだけという、万能にして忠実な執事。仕える主人は、巨大企業の若き総帥にして、幻蜂(げんぽう)家当主、幻蜂清玄(きよはる)伯爵。実は女であることを隠して生きる男装の令嬢で、その過去に壮絶な傷を抱えていた。2人をつなぐもの、それは命と引き換えの絶対的な主従関係。
そんなただならぬ関係の2人だが、実は東西で対立する分断された世界で、世界統一を目指す西側諸国女王の諜報員、「女王の番犬」という裏の顔を持つ。ある日、東側諸国で起きている、大使館員の“連続ミイラ化怪死事件”の解決という密命が下された。現場に残されたのはタロットカード。時同じくして、街から少女たちが失踪する出来事が起きていた。世界を巻き込む事件の黒幕の目的とは、そして事件の犯人は……!?
出演:水嶋ヒロ、剛力彩芽、優香、山本美月、大野拓朗、栗原類、海東健、ホラン千秋、丸山智己、城田優、安田顕、橋本さとし、志垣太郎、伊武雅刀、岸谷五朗
原作:枢やな(スクウェア・エニックス「月刊Gファンタジー」連載)
主題歌:ガブリエル・アプリン「Through the ages」(ワーナーミュージック・ジャパン)
監督:大谷健太郎、さとうけいいち
脚本:黒岩勉
(c)2014 枢やな/スクウェアエニックス
(c)2014 映画「黒執事」製作委員会
小野大輔(おのだいすけ)
1978年5月4日生まれ。高知県出身。主な出演作は、TVアニメ「宇宙戦艦ヤマト2199」(古代進役)、「進撃の巨人」(エルヴィン・スミス役)、海外ドラマ「glee/グリー」(フィン・ハドソン役の吹き替え)など。2014年4月から放送予定のTVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 スターダストクルセイダース」にも空条承太郎役として出演。高知県観光特使にも任命されている。
2014年1月17日更新