ディズニーとスクウェア・エニックスによる、ディズニーの世界を舞台にしたアクションRPGシリーズ「キングダム ハーツ」。その最新作「キングダム ハーツIII」が発売された。ゲームファンが待ち詫びていた、実に十数年ぶりとなるこのナンバリングタイトルは、発売から2週間も経たぬうちに全世界で500万本を突破。すでに多くのプレイヤーを魅了している。
そんな「キングダム ハーツ」シリーズを「本当に自分にとって特別なゲーム」と話すのは、台湾在住のイラストレーター・Izumi。コミックナタリーでは日本で活躍の幅を広げる彼女に、描き下ろしイラストの執筆と、通訳を介してのインタビューを申し込んだ。発売から1カ月も経たぬうちに、クリアした後に解放されるシークレットムービーまで観たと語る彼女は、待望の最新作をどうプレイしたのか。
取材・文 / 鈴木俊介
Izumi インタビュー
手描きの温かみまでも感じられました
──発売直後から「キングダム ハーツIII」をプレイされ、すでにクリア後のシークレットムービーまで見終えたというIzumiさん。まずは本作をプレイしてみての率直なご感想からお聞かせいただけますか?
「キングダム ハーツ」シリーズは1作目から遊んでいて、ビジュアル面もそうですし、クリエイティビティの部分でいろいろと刺激を受けてきました。作品がリリースされるたび、それらの要素がさらに新しい段階に進んでいくというか、とにかくいつもいい方面で驚かされ続けてきたんです。特に今作では制作チームの才能の高さ、そして良いゲームを作ろうという努力をますます感じました。画面の美しさももちろんそうですが、ゲームの全体的な作り込み、そういう部分に強く感銘を受けています。「キングダム ハーツIII」は3Dのゲームですが、3Dになっても2Dの美しさが失われていないですよね。
──それは具体的にどんな部分で感じましたか?
「キングダム ハーツ」のアートワークはとても魅力的で、個性があります。3Dモデルもキャラクターデザインの特徴と可愛らしさをしっかり理解して作られており、2Dで描かれたイラストの美しさを失っていないと思いました。しかも今作では、技術の進歩もあり、訪れた作品の世界に合わせて絵柄のタッチが変わりますよね。これが素晴らしい。特に「くまのプーさん」の世界(100エーカーの森)では、手描きの温かみまでも感じられました。
──確かに今作の100エーカーの森は、色遣いも水彩画のような淡い色で統一されていて、絵本の中にいるかのような気分が過去作以上に味わえます。
「キングダム ハーツII」の頃は、3Dの技術がまだそれほどだったので、武器とか小物の質感が今ほど色鮮やかでもないですし、どうしても硬い感じがしました。今作ではそういった部分まで素晴らしかったです。アクションについても、そんなに難しくないので、どんなプレイヤーでもすぐ上手になれると思います。
──強力な技が簡単に繰り出せたり、派手な演出の連携技が加わったりしたことで、バトルの自由度や爽快感が増しましたよね。
私が今作のバトルで大きく進化を感じたのは、キーブレードの形が大胆に変形するところ。RPGだと、初期に手に入れた武器って中盤以降は不要になってしまいがちですけど、今回は武器ごとに出せる技も違いますし、お気に入りのキーブレードを強化していくこともできるので、中盤になっても使いたいと思える武器がたくさんありました。これは今作の大きなポイントですね。
クリア後も、オープニング映像を繰り返し観ています
──シリーズを最初からプレイされているとおっしゃいましたが、そもそもIzumiさんはいつ頃、どんな形で「キングダム ハーツ」と出会われたのでしょうか?
最初はPlayStation®2を買ったばかりの頃に遊びました。映像もテーマソングも素敵で、それを観てやってみたくなりました。
──「キングダム ハーツ」以前にも、日本のゲームはプレイされていらしたんですか?
プレイしたゲームはいっぱいあります。でもアクションゲームとかが中心で、RPGはほとんどやらなかったんです。「キングダム ハーツ」をプレイして初めて「RPGって面白い!」と感じて、それから「ファイナルファンタジー」シリーズをプレイしたりと、すっかりRPGにハマりましたね。
──日本語のゲーム、特にRPGはセリフも多いので大変ではないかと思うのですが、苦労はされませんでしたか。
正直最初はわからなくて、大変でした。でも「キングダム ハーツ」のストーリーは、ほかのRPGと比べるとわかりづらいものではないですし、世界観も素晴らしいので、すぐ夢中になってしまったのを覚えています。スクウェア・エニックスさんのゲームはどれも映像がとても素敵なので、雰囲気を味わっているうちに世界観に引き込まれてしまいますね。
──「キングダム ハーツ」はディズニーのキャラクターが登場するということで、RPGに馴染みがないユーザーにとっても手に取りやすいタイトルなのかなと思います。
もちろんディズニーも好きでたくさん観ていますが、私にとってはシリーズディレクターの野村哲也さんが、ディズニーの世界観と「ファイナルファンタジー」の世界観をどんなふうにまとめて1つのゲームにするのかなという部分に興味がありました。最初は、どちらも軽く触れるくらいかなと思っていたんですが……双方の要素をここまで深く取り入れて、1つの世界としてまとめてしまわれるとは、正直想像していなかったです。
──Izumiさんは「キングダム ハーツ」シリーズのどんな部分を魅力に感じていますか?
どこがというのは難しいんですけど、どの作品にも心に残るシーンがあったから、ここまでプレイし続けているんだと思います。特にそうした印象的なシーンは、オープニング映像にうまく集約されていると思いますね。ですので、ゲームをクリアした後も、各作品のオープニング映像を繰り返し観ています。
──オープニング映像ですと、映像はもちろんですがテーマソングも印象的ですよね。
ええ。ですが楽曲が好きだからというより、歌と映像がすごくマッチしているので、それが好きで観ている気持ちが強いです。
“幸運のマーク”を見つけたときの達成感は格別!
──ディズニー映画の世界を冒険できるというのも、「キングダム ハーツ」シリーズの魅力の1つだと思うのですが、今作でIzumiさんがお気に入りのワールドはどこでしたか?
物語として好きなワールドと、マップとして好きなワールドと、両方あるんですけど……。
──ではまず、物語的にお好きなほうをお聞きできますか?
作品全体としてなら「ベイマックス」が舞台の世界(サンフランソウキョウ)です。映画の「ベイマックス」がもともと好きなんですけど、今作では映画のストーリーをただなぞっていくわけではなく、映画の“続き”をプレイすることができました。それがとてもうれしかったです。
──映画のファンとしては、彼らのその後がこうした形で覗けるのはうれしいですよね。では、マップ面ではいかがでしょう。
「塔の上のラプンツェル」(キングダム・オブ・コロナ)と、「パイレーツ・オブ・カリビアン」が舞台の世界(ザ・カリビアン)です。どちらも自然がとてもきれいで、魔法を使ったときの効果にも見とれてしまいました。
──わかります。特に「ザ・カリビアン」では、映画の俳優たちが実写さながらのリアルな姿で登場するので、そのグラフィックに合わせてソラたちのグラフィックも少しリアル寄りに調整されているみたいです。
それに、この2つのワールドには美しい自然もありますが、一方で人がたくさんいる賑やかな町もありますから、制作チームにとっても挑戦しがいのあるワールドだったのではないでしょうか。歩き回っているだけでも景色の変化が多いので、ついつい観察してしまいますね。ゲームの中で写真を撮ることができるんですが、この2つのワールドでは特にたくさん写真を撮ってしまいました(笑)。
──カメラの機能、楽しいですよね。幸運のマークと呼ばれるワールド内の“隠れミッキー”を探したり。
ゲームのメインストーリーはクリアしましたが、まだ撮り逃している幸運のマークがあるので、いろいろなワールドをのんびり歩き回りながら、それを探しています。見つけるのは大変ですけど、見つけたときの達成感が格別ですよね。マップの隅々まで歩いているので、幸運のマークを探しながら、料理を作るための食材を集めたり……。ミニゲームも豊富に用意されていて、やり込みできる要素がまだまだたくさんあるので楽しみです。
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リクの物語に感情移入してしまう
- 「キングダム ハーツIII」
- 発売中
販売元:スクウェア・エニックス
対応機種:PlayStation®4 / Xbox One
アクションRPG「キングダム ハーツ」シリーズのナンバリング3作目。2002年にリリースされた「キングダム ハーツ」から続いてきた物語“ダークシーカー編”の完結編となる。「トイ・ストーリー」「アナと雪の女王」「パイレーツ・オブ・カリビアン」「ベイマックス」などディズニーの作品を舞台としたワールドが多数登場。過去シリーズでも楽曲提供を行ってきた宇多田ヒカルの「誓い」がエンディングテーマソングとして書き下ろされた。
©Disney. ©Disney/Pixar. Developed by SQUARE ENIX
- 宇多田ヒカル「Face My Fears」
- 発売中 / EPICレコードジャパン
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[CD] 1400円
ESCL-5150
- 収録曲
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- Face My Fears (Japanese Version)
- 誓い
- Face My Fears (English Version)
- Don't Think Twice
- Izumi(イズミ)
- 台湾在住のイラストレーター。刀剣育成シミュレーションゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」にて鶴丸国永と物吉貞宗のイラスト、ライトノベル「茉莉花官吏伝」シリーズ(著者:石田リンネ)の挿絵イラストなどを担当している。TVアニメ「超次元革命アニメ『Dimensionハイスクール』」ではキャラクターデザインを手がけた。