コメディだからといって嘘をつきすぎない
──「川越ボーイズ・シング」はボーイズ・クワイア部の歌う楽曲も大きな魅力ですが、春男もちょっとだけ歌うシーンがあるそうですね。
興津 アニメのセリフを全部録り終わった後、最後の最後に歌を録ったんですけど、春男は絶対音感があるのに音痴なんですよ。それってどういうこと!?って、すごい考えましたね。音楽の先生をお呼びしてご相談しながら、発声に問題があって変な音が出るのか?とか、6話くらいから歌録りの日までずっとどうしたらいいんだろうって思ってました。「好きにやってください」って言われたんですが、いや、好きにはできないなって。考えなくていいことなのかもしれないですが……。
──自分の中で折り合いをつけたいというか、納得して演技をしたかった?
興津 ギャグにも説得力やリアリティは必要だと思っているので。コメディだからといって嘘をつきすぎないというか、喜劇とコントの違いというか。制作陣からも「リアリティを大事にしたい」という話がありましたし、笑いのシーンであってもあくまでドラマを作っているから、その中での在り方みたいなものは気にしますね。
──ちなみに興津さんは、ボーイズ・クワイア部の歌は聴かれる機会があったんでしょうか。
興津 歌うシーンはセリフとは別録りだったそうなんですけど、アフレコのテストのときに実際に歌っている人も何人かいて、リハーサルの映像でそれを聴けたんです。「すごい! うまい! なにこれ!」って感動してました。実際に聴けるとやっぱり伝わるものも変わってくるんですよね。
鵜澤 僕は1話のテストで歌わなかったんですが、それがちょっと悔しくて……。歌は別録りだと聞いていたので、テストで歌っていいのかがわからなくて、遠慮してしまったというか。収録は別日でも、アニメでは芝居のパートと歌のパートはつながっているから、芝居と歌とで感情の整合性を取れるようにしなくちゃいけない。だったらテストでは歌ったほうが、その歌ったばかりの感情が芝居にも表れて、絶対よかったなって。
興津 やったもん勝ちだよ。僕も芝居の中でいきなり歌い始めるシーンがあったから、テストのときは歌いましたね。その状況から歌い始めたとき、体がどういうふうになってるのかなっていうのを実感しておきたくて。「使いませんよ」って言われて、「知ってます」って言いながら(笑)。
鵜澤 なるほど……勉強になります。
──せっかくなので、ほかにも鵜澤さんから興津さんに聞いてみたいことがあればぜひ。
興津 「僕、何点ですか?」とか聞かないでね(笑)。
鵜澤 (笑)。さっきもおっしゃってましたが、なかなかみんなで一緒に録れない中で、座長としてどうしたら作品をもっとよりよいものにできるか?というのを聞いてみたいです。
興津 それは役に全部集中して、フルスイングし続けることじゃないですか。
鵜澤 周りじゃなくてまず自分、ですか?
興津 まず自分。もし「お前が座長なんだから」って言ってくるような人がいたら、そんなのぶん殴ってやればいいんですよ(笑)。
鵜澤 あはは(笑)。
興津 みんなでがんばりましょうよって僕は思うので、座長だから何かしなきゃいけないということはないですよ。ただ強いて言えば、座長が「これぐらい自分は役に取り組んでいますよ」っていうのを見せたら、真面目な現場だなってみんなも思いますよね。現場の空気をもとから悪くしようっていう人はいないから、隅っこで緊張している人がいたら、ひと言声かけるだけでまとまるし、そんなに気負わなくても大丈夫だと思う。「座長だから」って周りに気を回しすぎるのはもったいない。
鵜澤 本当に勉強になります! グーっと自分のことに集中しすぎて、空回りしちゃってた部分もあったんじゃないかと思っていたので……。
興津 十分だったと思いますよ。
──興津さんから見たら、鵜澤さんはフルスイングだったと。
興津 今日のインタビューでわかる通り、めちゃめちゃ真面目な人なので。
鵜澤 うれしいなあ(しみじみと)。
興津 まあ、ここで悪いことなんて言わないよ(笑)。
鵜澤 あれ、急に怖い(笑)。僕は何点ですか?(笑)
だんぼっちの天使の歌声を忘れるな
──いよいよ10月9日から放送が始まります。まだ先の展開については話せないことが多いと思うので、まずは第1話の注目ポイントを聞かせてください。
興津 春男に関しては、くすっと笑っていただければいいです(笑)。1話に出てくるだんぼっちの歌があるんですが、その歌声が春男の心に刺さって、このボーイズ・クワイア部の歴史がスタートするので、そのだんぼっちの“天使の歌声”を聴いてもらいたいですね。1話でだんぼっちに注目させておかないと、その後どんどん変な人が出てくるから(笑)、この歌声を忘れるなと。
鵜澤 自信がなくても少し行動してみると、案外自分の気持ちが変わることって、けっこうあると思うんですよね。だんぼっちも歌うことは大好きで、歌への向上心はどこかで持ち続けていて。そういう自分の好きなものに対して諦めない気持ちの大切さを、1話で感じてもらえるんじゃないかなって思います。だんぼっちと春男先生が出会ったように、諦めずに好きな気持ちを持っていれば、何がきっかけで動き出すか、どこにつながるかわからない。そんな出会いや縁がきっとあって、始まっていくこともあるんじゃないかと思うんです。
興津 音楽が嫌いな人や歌うのが嫌いな人も、世の中にはいると思うんですが、そういう人たちにこそ観てほしいですね。最初から全員が音楽が好きだとか歌が好きだとかって、そんな世の中ではないですから。音楽ってなんだろう、歌うことってなんだろう、なんでこの人たち楽しんでいるんだろう?って、改めて考えながら観られると思うので、ぜひ歌にも音楽にも興味ない方にも観ていただきたいです。そういう方が観ても楽しめるように作られていると思うので、ご期待ください。
プロフィール
鵜澤正太郎(ウザワショウタロウ)
1月22日生まれ、千葉県出身。81プロデュース所属。劇団日本児童に入団し、子役としてキャリアをスタート。主な出演作品に「デュエル・マスターズ WIN」(斬札ウィン役)、「アイドルランドプリパラ」(ウシミツ役)、「宇宙ショーへようこそ」(佐藤清役)、「古見さんは、コミュ症です。」(米谷忠釈役)などがある。趣味・特技はアコギ、ピアノ、ボイスパーカッション、ボウリング、スポーツ、歌、料理。
興津和幸(オキツカズユキ)
3月8日生まれ、兵庫県淡路島出身。ケッケコーポレーション所属。主な出演作に「ジョジョの奇妙な冒険」(ジョナサン・ジョースター役)、「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」(千早群像役)、「アイドリッシュセブン」シリーズ(大神万理役)、「ひげを剃る。そして女子高生を拾う。」(吉田役)、「Marvel's Spider-Man」(スパイダーマン / ピーター・パーカー役)などがある。趣味は妖怪・怪獣、ソフビ収集。
「川越ボーイズ・シング」特集
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- 「川越ボーイズ・シング」連載第3回|中西南央×金子誠がキャラクターから感じた“気持ちに正直になること”の大切さ
- 「川越ボーイズ・シング」連載第4回|生田鷹司、伊瀬結陸、葉山翔太、深川和征インタビュー “やべえ奴ら”が歌でひとつに
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