「世界文化遺産 下鴨神社 朗読劇 鴨の音 第二夜『読還-よみがえり-』」岸尾だいすけ×下野紘×前野智昭×島﨑信長|「何度も観ることで発見がある」“兄弟”演じた4人が世界遺産での朗読劇を振り返る

野沢雅子、岸尾だいすけ、下野紘、前野智昭、島﨑信長が出演した、オリジナルの朗読劇「世界文化遺産 下鴨神社 朗読劇 鴨の音 第二夜『読還-よみがえり-』」のBlu-ray / DVDが6月にリリースされる。世界文化遺産の京都・下鴨神社で、声優陣がオリジナルの朗読劇を披露する「朗読劇 鴨の音」シリーズの第2弾として、2021年10月16日と17日に行われた「読還-よみがえり-」。コミックナタリーでは1日目の公演を終えた岸尾、下野、前野、島﨑にその心境を伺うとともに、「何度も繰り返し観てほしい」という公演の見どころを聞いた。さらに今年4月に行われた先行上映会のレポートもお届けする。

取材・文 / 熊瀬哲子(P1~2)、柳川春香(P3)撮影 / 塩崎智裕(P1~2)、三澤威紀(P3)

オリジナル朗読劇「世界文化遺産 下鴨神社 朗読劇 鴨の音 第二夜『読還-よみがえり-』」

10月の秋空の下、世界文化遺産の下鴨神社で行われた「朗読劇 鴨の音」シリーズの第2弾「第二夜『読還-よみがえり-』」。今回の物語で岸尾だいすけは長男、下野紘は次男、前野智昭は三男、島﨑信長は四男を演じ、朗読劇を通して、それぞれが劇中劇でさまざまな役柄に扮する。前半はコミカルな掛け合いを中心にストーリーが展開され、声のみで出演した野沢雅子とのやり取りも繰り広げられた。そしてにぎやかなトーンの前半とは一変して、後編では長男、次男、三男が過去を振り返り、これまでのストーリーの伏線を回収していくように物語の核心へと迫っていく。

岸尾だいすけ×下野紘×前野智昭×島﨑信長 座談会

皆さんに楽しんでもらえているのは音で感じていた

──昨日の公演、拝見させていただきました。1日目の公演を終えられて今の率直な感想を教えていただけますか(取材は2日目の公演前に行われた)。

岸尾だいすけ こういうご時世ということと、昨日は天気のほうも不安だった(雨が降る予報だった)のでどうなるかは神のみぞ知るというところだったんですが、たくさんのスタッフの方と、そしてマコさん(声で出演した野沢雅子)の力がデカいんじゃないかな、なんて思いながら、無事に開催できたことに今は一番ホッとしております。……ボケたほうがよかった?

下野紘 いいですいいです、大丈夫です(笑)。僕としては世界遺産で、というのもそうなのですが、こういった開けた屋外で朗読劇をやるということが初めてで、どういった感じになるのかなというのはあまり想像がつかなかったんです。ですが、ここにいる3人と、スタッフさん、音声という形で野沢さんや中井(和哉)さんなどたくさんのベテランの方々がリハーサルの段階から手助けをしてくださっていて。なのでそんなに大きな心配はなく、本番も楽しんでやれたなと思っております。

左から下野紘、岸尾だいすけ。

前野智昭 登壇させていただいたのは我々4人でしたけれども、野沢さんをはじめ音声収録で参加してくださった皆さんや、スタッフさんの音響・照明、そして下鴨神社の持つ空気感や(エンディングテーマの)藤井フミヤさんの楽曲、そういうものがひとつになったときに、こんなにも未知数なドラマができるんだなっていうのを本番を通して改めて感じました。稽古の段階から面白いものをお届けできるっていう自信はあったんですが、稽古のときに感じたものの数十倍、数百倍いいものを皆さんにお届けできたんじゃないかなと思っています。

島﨑信長 僕は生で掛け合いの芝居ができるっていうのは本当に楽しいな、改めていいなと思いました。皆さんもおっしゃっていたことですけれど、どうしても演者が注目されますが、僕らもたくさんいるスタッフの一部に過ぎなくて。あとは朗読劇は生なので、観てくださっている皆さんの反応や、皆さんが作ってくださる空気感もすごく影響するんですよね。直接言葉を交わしているわけじゃないんですけど、皆さんとの空気感の掛け合いみたいなものがあって。そういうライブ感のようなものを改めて感じることができて、本当に楽しかったです。

──お客さんに囲まれるような形での朗読劇となりましたが、皆さんはお客さんの表情はご覧になっていましたか?

下野 (ライトの)逆光ということもあって、よくは見えなかったんです。

島﨑 でも拍手だったり笑いだったり、息遣いや音でずっと反応は感じていました。

下野 笑い声も聞こえて来ましたし、最後のほうはすすり泣く音もあったと思うので。そうやって耳に入ってくる音から、皆さんに楽しんでもらえてるのかなというのは感じていました。

前野 お客さんを入れて開催できたというのはすごく大きなことでしたよね。

──10月の京都、さらに夜の開催ということと、雨の予報もあって気温が心配だったのですが、イベントの序盤は境内が蒸し暑くって。意外と汗をかきながら拝見していました。

岸尾 舞殿も照明とかが当たっていて暑かったんです。「第一夜」はカイロをつけて「寒い、寒い」って言ってやってたんですけど。今回は汗ばみながらやってましたね。

公演当日の様子。(公式提供写真)

──ああ、そうだったんですね。

前野 ただ2日目はもしかしたら寒くなるかもっていう天気予報を受けてか、信長くんがこれから登山にでも行くんじゃないか?みたいな服装で京都入りしてたんですよ。

岸尾 そうそう(笑)。

下野 冬みたいな格好で。完全防備なの。

島﨑 (笑)。当日の朝ですよ? 当日の朝、家で準備してるときに、先に京都入りしてるマネージャーから「けっこう京都冷えます」と。「夜になると冷えるので、防寒対策をしてきてください」っていうメールが来たので、僕は満を持して……と思って、自分の中で最強だと思ってるすごいコートを持って来たんですよ。

岸尾 俺にも(連絡)来たけど、俺はパーカーだよ(笑)。

島﨑 (笑)。

下野 マネージャーさんも「ちょっと羽織れる上着を持ってきてくれ」くらいのつもりだったと思うよ。

前野 それを海外に行くくらいの装備で。

島﨑 だから京都に着いたら、それを畳んで、畳んで、ずっと手に抱えてました。

岸尾 それ着てTくん(マネージャー)と並んでたら変だよ。季節感がわからない。

下野 同じ場所に居る人間とは思えないもんね。ちなみにTくんはあちらです(編集注:長袖のスタッフの中、1人半袖のマネージャーが座っている)。

──あっ、半袖の(笑)。

島﨑 並んでると季節感が真逆。どこにいるんだかわからない(笑)。

──そんなことがあったと(笑)。イベント中も、最初はそうやって少し蒸し暑さを感じていたんですけど、中盤に入って物語のトーンが変わってくるあたりからひんやりとした風が吹いてきて。そこから後半に向けてだんだんと涼しくなってきて、最後に皆さんが正面に向かってお辞儀されたときに、ひときわ大きい風が吹いたんですよ。

前野 吹いてましたね。

下野 もう物語のオーラスもオーラスのタイミングで風が吹いたのもわかりました。(クライマックスの)「よし、じゃあオープニングからやろう!」と言ったあとに、風がサーッと吹いてきて。

島﨑 ねえ、あれすごかったですね。

下野 あれはよかったなと思います。

──そうして、終わった途端に雨が降ってきて。

島﨑 そう、終わってからね。

岸尾 俺らも始まる前に雨がどうなるかなって話をしていて、(物語の)前半が終了して、後半の展開が変わるところで涙……という感じで雨が降ってきたら素敵だね、なんて話もしていたんです。

──でも公演の最後に降るのも、これも演出かっていうくらい素敵な流れでした。

全員 そうでしたね。

フレッシュ……?な4人でチームワークはバッチバチ

──2020年10月には第1弾となる「鴨の音 第一夜『糺の風』」が開催され、岸尾さんのほか、中井和哉さん、沢城みゆきさん、皆口裕子さん、今回と同様、声のみで野沢雅子さんが出演されていました。岸尾さんは「朗読劇 鴨の音」シリーズに出演されるのは今回が2回目となりますが、新たなメンバーで舞台に立つことになっていかがでしたか?

岸尾 普段からお仕事でもご一緒している後輩たちですから、非常にわかり合えていたと思います。前回は僕が一番後輩くらいの勢いで、(沢城)みゆきも年齢は下ですけれど、芸歴は同じくらいだったので。それに比べたら今回は、フ……フレッシュではないんだけども(笑)。

下野前野島﨑 (笑)。

岸尾 この並び、フレッシュ……ではないんだけども(笑)。

下野 ちょっとね、フレッシュ……ではないですけども(笑)。

岸尾 「第一夜」が熟練した、長年寝かせたワインのような方々だとすると、今回は……。

下野 ぶどうジュースですか?

──そこまで?(笑)

岸尾 いやいや、エネルギッシュ! 発泡してる感じ。弾けてる感じは本当にあったと思います。役柄として血はつながっていないけど、一応“兄弟”ですから、その兄弟ならではの連帯感や会話のテンポ感というものが、普段の掛け合いからもちょっとずつ影響が出ているんじゃないかなって思いましたね。下鴨神社という場所とシリーズは同じでも、演者と物語が変わるとここまで違うんだなと、やってみてとても面白かったです。

公演当日の様子。(公式提供写真)

──インタビューの冒頭で、稽古の段階から手応えを感じていたというお話がありましたが、稽古は4人揃ってやられていたんですか?

前野 そうですね、4人揃ってやりました。

──じゃあそこから皆さんチームワークは感じていて?

下野 バッチバチですよ。

岸尾 (笑)。

下野 誰かが何かをやってきたら「お、じゃあ俺もこう返そうか」みたいなのもあって。オリジナルの朗読劇ということで、決められた大まかな演出などはありますけど、「こういうキャラクターで」っていうのをしっかりと決めてやっているわけでもないので。「このキャラクターはこういう性格かな」という大枠があって、あとは自分たちで演じてみるという。そういった自由度の高さがあったので、お互いに弾けることもできればフォローもできる。我々もそれくらいの関係値なのかなと思うと、稽古から本当に楽しかったですね。毎回「岸尾さん、あそこの部分でどうするかな?」とか。

岸尾 (笑)。そうですね。

下野 それも楽しみで。一緒にやっているのにどう来るのかが楽しみだというのも不思議な感覚だなと思いますが、岸尾さんが弾けると前野くんも弾け始めるんですよ。僕はそれが楽しみで楽しみで。信長の演じるキャラクターがちゃんとしてるから、弾けられるんだろうなっていうのもありましたね。

岸尾 ここまで読んで本編を観ていない方はずっとふざけてるのかな?って思うかもしれないけど、本当に短いワンシーンだけ、遊べるワンシーンだけは「いいですよ」……とは言われてはいないけど(笑)、大丈夫かなっていうところだけは、特に決めずに、毎回フランクに演じています。

下野 冒頭の梅本(長男が扮する交通情報センターのアナウンサー)のキャラクターも演出ですもんね。

岸尾 演出ですから。「こういうキャラでやってください」って言われて、僕は泣く泣くあのキャラでやってますから。

下野 (笑)。

岸尾 泣く泣くではないです、楽しんでやってます(笑)。

──前野さんもコミカルなお芝居が多かったように感じます。

前野 そうですね、全体の半分くらい劇中劇の部分があるので。そこは割と自由にやらせてもらっています。もちろん演出いただいた範囲内ではありますが。その場その場で楽しんでいただけたら、という思いでチャレンジしています。

──身振り手振りを加えて、表情も変えながら演じられている印象がありました。

前野 そうですね。僕はやっぱり感情移入すると体が動いちゃうんです。でも舞台ってそういうものだと思うので、それは全然ありなのかなと。自分のセリフがないところとかでも表情は作って、より世界観に引き込みたいなという部分もあります。

左から前野智昭、島﨑信長。

──それは鑑賞していても非常に感じました。そんな岸尾さん、下野さん、前野さんの後ろで、島﨑さんは比較的真面目なトーンのキャラクターで、3人の掛け合いを座って聞いている場面が多かった印象ですが、あのときはどんなお気持ちでお聞きになっていたんですか?

島﨑 (笑顔で)楽しいな、面白いなって見てました。

下野 (笑)。

島﨑 真面目と言っても、序盤は力の抜けた感じのキャラクターだったので。あまり固めずに、会話劇なのでその日のみんなのテンションとか噛み合い方とか、空間の感じで全然変わるなって思っていたので。僕も何も決めずにやっていましたね。

下野 途中で噛む人とかもいるからね!(1日目の公演でセリフを噛んだ下野)

岸尾島﨑 あははは(笑)。

岸尾 自分から切り込んでいったね(笑)。

前野 それも含めて生ならではですから。

下野 それをうまく物語に組み込めるかどうかってことですからね!

──(笑)。前野さんもおっしゃっていた通り、それが生の舞台のよさですし、臨場感があってとても楽しかったです。あとは「第一夜」に引き続き、今回の「第二夜」でも野沢さんの声の存在が、ストーリーの中でとても重要な役割を担っているなと感じました。

岸尾 こんなことを言うのもあれですけど、ずるいですよね。録音であれだけのことをやられるって。最後もマコさんが(観客に向かったビデオメッセージで)今の御時世に合ったすごく素敵なことをおっしゃっていて。それは皆さんも感動するし、泣きますよって。だから現場で我々がもっとがんばらないといかんなあと思う次第です。発破をかけられている思いですね。

下野 やっぱり存在感がすごいですもんね。