コミックナタリー Power Push - 河本ほむら原作、尚村透作画「賭ケグルイ」
マンガ読み・神田沙也加が原作者に突撃
女性の豊満なボディには思惑が詰まってる
神田 読者的には気になるポイントがまだまだあるんですけど、やっぱり最初に出来たキャラクターは夢子ちゃんなんですね。私は芽亜里ちゃんも結構好きなんです。
河本 ああ、ありがとうございます!
神田 扉ページでの、夢子ちゃんと芽亜里ちゃんのちょっと百合っぽい感じも、これからもぜひ描き続けていってほしいです! だって最高ですよ、黒髪ぱっつん姫カットロングに加えて、ツインテールですよ。もう、どうします!?(興奮気味に)
──キャラクターのビジュアルに関しては、どう作り上げていきましたか?
河本 最初にラフを描いて尚村先生にお送りしました。僕も黒髪ぱっつん姫カットが大好きなので、そこはもう決まりで。僕のラフではただのブレザー姿だったんですけど、尚村先生からはものすごく巨乳になって返ってきたんです(笑)。でもこれ迫力あるなと思って、「これでお願いします」と。
神田 女性の豊満なボディには思惑が詰まってることが表現される場合が多いんですよ。スカート丈がギリギリなのも、すごく危うさを感じるポイントです。体型とか出で立ちも含めて、夢子ちゃんを表していますよね。表情が変わる瞬間のギャップもまたいい。
河本 基本的に僕、ギャップ萌えなんです。ちょっとマニアックな話で申し訳ないんですけど、昔カプコンの「ヴァンパイアセイヴァー」という格闘ゲームがあったんですが、そのバレッタというキャラがすごく好きで。赤ずきんちゃんみたいなかわいらしい見た目なのに、攻撃するときには「死ね!」って言いながらナイフやマシンガンを使ってくるんですよ。小学2年生くらいのときにそのゲームをやっていたんですけど、おそらくそれにものすごく影響を受けているんですよね。
神田 なるほど、面白い。それがルーツなわけですね。あと私、すごく気になってることがあるんですけど……、夢子ちゃんの親指のリングは、何かに関係しているんですか?
河本 あー、そうですね、これは……。
神田 関係あるか、ないかだけでも!
河本 はい、夢子の過去に関係があります。
神田 ふぅ……!(額の汗を拭う動作) もう、最初からずっと気になってたんです。不思議な、意味ありげなところにしてるなあって。
生爪と2000万は等価交換
──ほかにも気になるキャラクターはいますか。
神田 生徒会のこれからはすごく気になりますね。みんなちょっと変態で。生志摩妄(いきしまみだり)ちゃんなんて、すごい目ですよ。
河本 こういうキャラも好きなんですよね。
神田 わかります。眼帯してリボンして。しかも鞄にはめっちゃリボンとかクマさんとか付いてて。あとは伊月ちゃんの、生爪を集めてるところも好きですね。
──ホラーは苦手とおっしゃってましたが、ああいうゾワッとするような描写は大丈夫なんですか?
神田 すごく怖いのに見ちゃうタイプです。意外と大丈夫ということもなく、しっかり眠れなくなったりするんですけど(笑)。爪や目って、人間が本能的に怖いパーツじゃないですか。作中では2000万の代わりに手足の生爪を賭けますけど、ちゃんと等価交換というか、2000万に値する感じがする。ここに生爪を持ってくる発想がすごいなと思いました。
河本 「賭ケグルイ」ではあまり残虐描写は出したくないので、グロくない範囲で一番エグいことってなんだろう、と考えてその発想に至りました。
神田 たぶんすごく恐れているのと同時に、脳のどこかで一種の快楽物質が出てるんでしょうね。
河本 そう思っていただけるとうれしいです。夢子の思想がそういう部分と共通するので。
すぐ試せそうなゲームが魅力
──このギャンブルの設定の詰め方や、オチを含めたストーリーの作り方はどうやっているんですか?
河本 最初にオチを考えるようにしています。そこからこういう感じで逆算して、どういうゲームにしようかな、と。
神田 着地点から考えるんですね。
河本 そうですね。でも最初からオチのためのゲームになってしまうと面白くないので、やってて楽しいようなゲームにできたらな、といつも考えています。
神田 それはすごく思いました。最初から聞いたこともないようなゲームじゃなくて、例えば投票じゃんけんとか、ダブルデッキでの神経衰弱とか、すぐ試せそうですし。普通にゲームとしてやってみたいですもん。
──この先の展開含めて、どの辺りまで筋書きを考えているんでしょうか。
河本 連載が始まるときに、担当さんに「2巻で終わるときと4巻で終わるとき、それ以上続くときの3パターンを考えてきて」と言われて。もし打ち切りになってものすごく中途半端な感じで終わっても嫌だなと思ったので、3パターンちゃんと考えましたね。今はなんとか、最後の3パターン目になれた感じなので、結構先まで考えています。
神田 それってドキドキですね! 2巻通り越しても、4巻の壁があるわけですし。……ぶっちゃけ、自分が見たり聞いたりしたものに、リアルタイムで影響を受けながら進んだりすることもあったりします?
河本 ああ、それはありますね。
神田 やっぱりそうなんですね。
──それは自分で音楽をやる上でも気になるところですか?
神田 そうですね。音楽とマンガ連載だと、着地点までの長さが全然違うので。1本の連載にずっと関わるより、1曲作るほうがゴールが早いじゃないですか。1曲1曲がパッキングされたものがアルバムなので。でも河本さんは、作品と関わっている間、ずっと夢子ちゃんや鈴井くんと一緒に生きていくわけで。今これに影響を受けたからちょっと違う展開にしてみよう、とか、リアルタイムで動いていくことがあるのかな、と。
河本 どこに行くか、僕もよくわからないところもありますね。大枠は決まっているんですけど、どういう過程を経てそこへ行くのかは、かなり変わってきています。実は連載前にカッチリ決まっていたのは2話までで、そこからはわりとリアルタイムで考えてました。例えば1巻だと、3話と4話は西洞院さんとギャンブルするわけですが、彼女がどんなギャンブルをするのかは、そこで初めて考えたり。
神田 なるほど。でも、絶対そのほうがいいと思います。最初にこう決めたから、そこから逸れられないというのは、臨機応変ではない。それってきっと読む側にとっても優しくないというか。先生が「絶対こうじゃなきゃいけない」ってがんじがらめになっていると、読者にもそれが見えてしまうと思うんですよね。
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- 河本ほむら原作、尚村透作画「賭ケグルイ」 / 各627円 / スクウェア・エニックス
- 1巻 / 発売中
- 1巻 / 発売中
- 3巻 / 2015年6月22日発売
あらすじ
名門・私立百花王学園。この学園には階級制度が存在する。生徒会を頂点とするこの学校は「ギャンブル」に支配されている。勝てば天国。負ければ地獄。ギャンブル強者は羨望、弱者は被虐のクルった学園。そんな学園に、1人の少女が転校してくる。彼女の名前は蛇喰夢子……。
神田沙也加(カンダサヤカ)
舞台を中心に女優としてのキャリアを積み、多数のミュージカルに出演。2014年3月公開のディズニー映画「アナと雪の女王」日本語吹替版ではアナ役を担当し、大ヒットを記録した。2014年6月には、ギタリストBillyと結成し、自身がボーカルを務める音楽ユニット・TRUSTRICKとして1stアルバム「Eternity」でメジャーデビュー。ユニット名は「TRUST=信頼、信用」「TRICK=いたずら、策略」の2語を合わせた造語で、少しの毒とファンタジーが共存する独自の世界を構築している。2015年1月にはTVアニメ「銃皇無尽のファフニール」のオープニングテーマとなるシングル「FLYING FAFNIR」、2ndフルアルバム「TRUST」を続けて発表した。同年5月、TVアニメ「俺物語!!」のオープニングテーマ「未来形Answer」を含む新作CD「未来形Answer E.P.」をリリース。6月19日には東京渋谷O-EASTで「Garnet」、7月4日には品川ステラボールで「Iolite」と冠したプレミアムライブを実施。
河本ほむら(カワモトホムラ)
アマチュア時代、2009年より牛乳名義でWEBマンガを新都社(にいとしゃ)にて執筆。2013年にガンガンJOKER新人漫画賞でネーム部門奨励賞を受賞し、「賭ケグルイ」でデビュー。ガンガンJOKER(スクウェア・エニックス)にて2014年4月号より連載中。司法試験合格歴あり。高校時代はバスケットボール部に所属。
尚村透(ナオムラトオル)
第9回スクウェア・エニックスマンガ大賞奨励賞受賞。2009年より「失楽園」をガンガンJOKER(スクウェア・エニックス)にて連載し、全6巻で完結。同誌にてアニメ「TARI TARI」コミカライズのネーム構成を担当したのち、2014年より「賭ケグルイ」の作画を担当。