KADOKAWA タテスクコミック×LINEマンガ WEBTOON STUDIO|編集部とプラットフォームがタッグを組み、一歩踏み込んだ作品作りを (2/2)

スタジオとタッグを組んだロマンスファンタジー3作品

──「年下執着皇子は不遇な王女を愛しすぎてる」「冷酷公爵はあざらし姫に執着中」「私が滅ぼしていいですよね 純白の聖女は復讐を誓う」はいわゆるロマンスファンタジー。縦スクロールコミックの人気ジャンルの作品です。

長田 まず、ロマンスファンタジー──女性向けの異世界ものは、根強い人気のあるジャンルです。ただ、数多くリリースされるロマンスファンタジーの中で、どう差別化するのかが、重要なポイントだと思います。

坂野 先ほどの2作品は新人作家中心の企画ですが、ロマンスファンタジー3作品は縦スクロールコミックスタジオとタッグを組んでいる作品です。彼らは今の縦スクロールコミック需要をきちんと理解したうえで、かつ高クオリティの作品を制作してくれています。そのよさを押し出せる作品として、今回この3作品をラインナップしました。まず「年下執着皇子」は、鮮やかな画面が魅力のen-dolphin studioさんの作品です。かわいい王女とカッコいい皇子さまのすれ違う様子に、やきもきしていただければなと!

坂野聡

坂野聡

長田 「年下執着皇子は不遇な王女を愛しすぎてる」は本当に主人公を応援したくなりますよね。皇子は冷酷で仕事ができるけれど、恋愛では不器用というギャップも魅力的です。そして何より、en-dolphin studioさんの線画や着色仕上げが素晴らしくて、読み進めたくなる作品になっていると思います。

「年下執着皇子は不遇な王女を愛しすぎてる」
原作:たてのよこ 漫画:鹿雨里 制作:en-dolphin studio

制作:en-dolphin studio「年下執着皇子は不遇な王女を愛しすぎてる」

制作:en-dolphin studio「年下執着皇子は不遇な王女を愛しすぎてる」

実の父と姉から虐げられて育った王国の王女・リア。隣国との戦争に負けた責任を押し付けられたリアは、国民に「傾国の悪女」と蔑まれながら、賠償金代わりに戦勝国の王のもとへ嫁がされる。そこでもひどい扱いは変わらず、身体を売られそうになったとき、シュワルツ王国の皇子・セネトがリアの目の前に。彼は「──迎えに来ましたよ、俺の王女様」と告げ、リアを手にするため思わぬ行動に出て……。心優しき不遇の王女と、ヤンデレ気味な年下皇子とのラブストーリー。

第1話を読む!

坂野 「冷酷公爵はあざらし姫に執着中」は、「推しの一途すぎる執着を、私はまだ知らない」の和泉杏咲先生と日本の縦スクロールコミックスタジオとしては老舗のSHINE Partnersさんタッグによる作品です。この作品で推したいポイントは、なんといってもキャラクターですね。あざらしを含めて、とにかくかわいいキャラクター揃いになっています。

「冷酷公爵はあざらし姫に執着中」
原作:和泉杏咲 作画:UNO STUDIO 企画・制作:SHINE Partners

原作:和泉杏咲 作画:UNO STUDIO 企画・制作:SHINE Partners「冷酷公爵はあざらし姫に執着中」

原作:和泉杏咲 作画:UNO STUDIO 企画・制作:SHINE Partners「冷酷公爵はあざらし姫に執着中」

人間に変身できるあざらしの姉妹、オデットとコーデリア。行動的な妹・オデットは、危険だといくら注意されても陸上の人間界へ遊びに行くのをやめなかった。ある日、ついにオデットがコーデリアの前から姿を消してしまう。妹を必死に探し続け、疲れ果てたコーデリアを拾ったのは、「冷酷公爵」と呼ばれるルドルフだった。早く城から抜け出して妹の行方を追いたいコーデリアだが、ルドルフに人間の姿を見られたら一巻の終わり。あざらしに夢中なルドルフに正体を隠したまま、果たして彼女は妹を見つけ出せるのか。

第1話を読む!

長田 ロマンスファンタジーを多く読んでいると、動物に転生してしまう物語もいくつか目にします。でも、本作の主人公はあざらしという設定が斬新でした。主人公にはさまざまなピンチが訪れますが、ポジティブな姿勢で乗り越えていくので、ついつい応援したくなります。先ほど触れた表紙に関しても、あざらしに目がひかれるので、ついクリックして読みたくなってしまいますよね。

坂野 「私が滅ぼしていいですよね 純白の聖女は復讐を誓う」はカクヨムの「恋愛創作コンテスト」を受賞した小説が原作です。この作品はなんといってもド王道! てらいもなく、王道のロマンスファンタジーであることが魅力の作品です。

「私が滅ぼしていいですよね 純白の聖女は復讐を誓う」
原作:やきいもほくほく 作画:伽奈多 制作:フーモア

原作:やきいもほくほく 作画:伽奈多 制作:フーモア「私が滅ぼしていいですよね 純白の聖女は復讐を誓う」

原作:やきいもほくほく 作画:伽奈多 制作:フーモア「私が滅ぼしていいですよね 純白の聖女は復讐を誓う」

ある日、高校生のサラは異世界のライナス王国に召喚され、自分が聖女であることを告げられる。聖女の役目は、この国を魔族から守るための大結界を張ること。突然の出来事に戸惑いながらも、王太子やほかの聖女に支えられ、サラは王国に尽くしていく。しかし迎えた運命の日、大結界の代償には聖女の命が必要であることを知ってしまう。信じていた人たちに裏切られ、命を落としたサラ。死後の世界で待っていた女神に時間を巻き戻してもらい、ライナス王国へと帰ってくる。サラは復讐するという強い思いを胸に、魔王と契約を交わす。

第1話を読む!

長田 「あざらし姫」はコメディ寄りの作品でしたが、「私が滅ぼしていいですよね」は復讐もの。敵役が憎たらしく描かれていることと、主人公が絶望的な環境であっても能動的に動いていくポジティブさがあること、その2つがこの物語に共感しやすくなるポイントとして巧みだなと感じました。

国産の縦スクロールコミックでヒットを生み出したい

──そしてもう1作品、「歌舞伎町モラトリアム」は、歌舞伎町の社会学を研究しているライターの佐々木チワワさんによるエッセイが原作となっています。

「歌舞伎町モラトリアム」
原案・監修:佐々木チワワ シナリオ・構成:青季ふゆ 作画:森野ハルナ

原案・監修:佐々木チワワ シナリオ・構成:青季ふゆ 作画:森野ハルナ「歌舞伎町モラトリアム」

原案・監修:佐々木チワワ シナリオ・構成:青季ふゆ 作画:森野ハルナ「歌舞伎町モラトリアム」

大学生の優衣は、夢も目標もなく、彼氏にも振られ、ただ無為に日々を過ごしていた。ある日、なりゆきで足を踏み入れた歌舞伎町のホストクラブで、ホストのソラと出会い、日常が一変する。欲望の街・新宿歌舞伎町で、「姫」と「担当」という関係の中で共鳴する2人が行き着く先は──。狂おしくも愛おしい、痛いほどリアルなモラトリアムの記録。

第1話を読む!

坂野 この作品は、弊社から刊行された原作エッセイが面白くて、コミカライズできないか、と相談させていただいたことが企画の発端になっています。プロットをチワワ先生、シナリオを作家としての実績豊富な青季ふゆ先生にお願いして、作画はこれまた「タテスクコミック大賞」出身の森野ハルナさんが担当しています。森野先生渾身のキャラクターの表情作画と、歌舞伎町の3Dレイアウトが融合して、すさまじいクオリティの作品になりました。

長田 私のホストに対する知識は、近頃ニュースで報じられている程度しかなかったのですが、こんな世界なのだなとリアルに知れる点が面白かったです。主人公が等身大の若い女性なので、若い女性読者が主人公目線で物語を追えるのではないでしょうか。また、主人公が惹かれていくホストがとても色気のある優しいキャラで、森野先生が鮮やかに描かれているからこそ、ホストに興味のなかった主人公がハマっていくのも説得力がありました。

長田英将

長田英将

坂野 ニュースではホストにハマる女の子たちに対する一面的な報道がされていますが、実際にそこで生きている人たちはどんな気持ちなのか、ある種ドキュメンタリーのような気持ちで迫っていく作品です。こういった作品を縦スクロールコミックとしてリリースすることはある種チャレンジですが、次に繋がるといいなと思っています。

──そんな作品たちがいよいよ配信となりますが、今のお気持ちはいかがですか?

坂野 今はもう配信を待つのみです(笑)(※インタビューは配信直前の11月中旬に実施)。6作品ともにいろんな可能性を秘めていると思うので、より多くの人に読まれてほしいですね。

長田 どんなリアクションが返ってくるのか、とても楽しみです! 特に「禍人 -マガヒト-」「RAY」「歌舞伎町モラトリアム」はチャレンジングなタイトルなので、縦スクロールコミックユーザーにどう受け入れられるのか、楽しみにしています。この協業をきっかけに、今後もKADOKAWAさんと多くの作品を作り出して行きたいですね。

坂野 僕らKADOKAWAはメディアミックスが得意な会社なので、原作を作り、縦スクロールコミックにして、その後のメディア化も進めていく……という流れをLINEマンガさんと一緒にできればなと。そのためにも、縦スクロールコミックの配信開始と紙書籍を同時に発売するなど、柔軟な発想は持ち続けられればと思います。まだまだ国産の縦スクロールコミック原作ではヒット作が生まれていないので、その先陣を切る作品をこのタッグで生み出していきたいです。

長田 ぜひ、今後ともよろしくお願いします! そのためにも、ぜひみなさんに6作品を読んでいただきたいです!