スタジオとタッグを組んだロマンスファンタジー3作品
──「年下執着皇子は不遇な王女を愛しすぎてる」「冷酷公爵はあざらし姫に執着中」「私が滅ぼしていいですよね 純白の聖女は復讐を誓う」はいわゆるロマンスファンタジー。縦スクロールコミックの人気ジャンルの作品です。
長田 まず、ロマンスファンタジー──女性向けの異世界ものは、根強い人気のあるジャンルです。ただ、数多くリリースされるロマンスファンタジーの中で、どう差別化するのかが、重要なポイントだと思います。
坂野 先ほどの2作品は新人作家中心の企画ですが、ロマンスファンタジー3作品は縦スクロールコミックスタジオとタッグを組んでいる作品です。彼らは今の縦スクロールコミック需要をきちんと理解したうえで、かつ高クオリティの作品を制作してくれています。そのよさを押し出せる作品として、今回この3作品をラインナップしました。まず「年下執着皇子」は、鮮やかな画面が魅力のen-dolphin studioさんの作品です。かわいい王女とカッコいい皇子さまのすれ違う様子に、やきもきしていただければなと!
長田 「年下執着皇子は不遇な王女を愛しすぎてる」は本当に主人公を応援したくなりますよね。皇子は冷酷で仕事ができるけれど、恋愛では不器用というギャップも魅力的です。そして何より、en-dolphin studioさんの線画や着色仕上げが素晴らしくて、読み進めたくなる作品になっていると思います。
「年下執着皇子は不遇な王女を愛しすぎてる」
原作:たてのよこ 漫画:鹿雨里 制作:en-dolphin studio
坂野 「冷酷公爵はあざらし姫に執着中」は、「推しの一途すぎる執着を、私はまだ知らない」の和泉杏咲先生と日本の縦スクロールコミックスタジオとしては老舗のSHINE Partnersさんタッグによる作品です。この作品で推したいポイントは、なんといってもキャラクターですね。あざらしを含めて、とにかくかわいいキャラクター揃いになっています。
「冷酷公爵はあざらし姫に執着中」
原作:和泉杏咲 作画:UNO STUDIO 企画・制作:SHINE Partners
長田 ロマンスファンタジーを多く読んでいると、動物に転生してしまう物語もいくつか目にします。でも、本作の主人公はあざらしという設定が斬新でした。主人公にはさまざまなピンチが訪れますが、ポジティブな姿勢で乗り越えていくので、ついつい応援したくなります。先ほど触れた表紙に関しても、あざらしに目がひかれるので、ついクリックして読みたくなってしまいますよね。
坂野 「私が滅ぼしていいですよね 純白の聖女は復讐を誓う」はカクヨムの「恋愛創作コンテスト」を受賞した小説が原作です。この作品はなんといってもド王道! てらいもなく、王道のロマンスファンタジーであることが魅力の作品です。
「私が滅ぼしていいですよね 純白の聖女は復讐を誓う」
原作:やきいもほくほく 作画:伽奈多 制作:フーモア
長田 「あざらし姫」はコメディ寄りの作品でしたが、「私が滅ぼしていいですよね」は復讐もの。敵役が憎たらしく描かれていることと、主人公が絶望的な環境であっても能動的に動いていくポジティブさがあること、その2つがこの物語に共感しやすくなるポイントとして巧みだなと感じました。
国産の縦スクロールコミックでヒットを生み出したい
──そしてもう1作品、「歌舞伎町モラトリアム」は、歌舞伎町の社会学を研究しているライターの佐々木チワワさんによるエッセイが原作となっています。
「歌舞伎町モラトリアム」
原案・監修:佐々木チワワ シナリオ・構成:青季ふゆ 作画:森野ハルナ
坂野 この作品は、弊社から刊行された原作エッセイが面白くて、コミカライズできないか、と相談させていただいたことが企画の発端になっています。プロットをチワワ先生、シナリオを作家としての実績豊富な青季ふゆ先生にお願いして、作画はこれまた「タテスクコミック大賞」出身の森野ハルナさんが担当しています。森野先生渾身のキャラクターの表情作画と、歌舞伎町の3Dレイアウトが融合して、すさまじいクオリティの作品になりました。
長田 私のホストに対する知識は、近頃ニュースで報じられている程度しかなかったのですが、こんな世界なのだなとリアルに知れる点が面白かったです。主人公が等身大の若い女性なので、若い女性読者が主人公目線で物語を追えるのではないでしょうか。また、主人公が惹かれていくホストがとても色気のある優しいキャラで、森野先生が鮮やかに描かれているからこそ、ホストに興味のなかった主人公がハマっていくのも説得力がありました。
坂野 ニュースではホストにハマる女の子たちに対する一面的な報道がされていますが、実際にそこで生きている人たちはどんな気持ちなのか、ある種ドキュメンタリーのような気持ちで迫っていく作品です。こういった作品を縦スクロールコミックとしてリリースすることはある種チャレンジですが、次に繋がるといいなと思っています。
──そんな作品たちがいよいよ配信となりますが、今のお気持ちはいかがですか?
坂野 今はもう配信を待つのみです(笑)(※インタビューは配信直前の11月中旬に実施)。6作品ともにいろんな可能性を秘めていると思うので、より多くの人に読まれてほしいですね。
長田 どんなリアクションが返ってくるのか、とても楽しみです! 特に「禍人 -マガヒト-」「RAY」「歌舞伎町モラトリアム」はチャレンジングなタイトルなので、縦スクロールコミックユーザーにどう受け入れられるのか、楽しみにしています。この協業をきっかけに、今後もKADOKAWAさんと多くの作品を作り出して行きたいですね。
坂野 僕らKADOKAWAはメディアミックスが得意な会社なので、原作を作り、縦スクロールコミックにして、その後のメディア化も進めていく……という流れをLINEマンガさんと一緒にできればなと。そのためにも、縦スクロールコミックの配信開始と紙書籍を同時に発売するなど、柔軟な発想は持ち続けられればと思います。まだまだ国産の縦スクロールコミック原作ではヒット作が生まれていないので、その先陣を切る作品をこのタッグで生み出していきたいです。
長田 ぜひ、今後ともよろしくお願いします! そのためにも、ぜひみなさんに6作品を読んでいただきたいです!


