「付き合ってあげてもいいかな」たみふるインタビュー|特別じゃない、女の子と女の子の普通の恋愛

女性同士の恋愛をリアルに、かつ前向きに描いてみたい

担当編集 たみふるさんの作品は、女性同士だからどうこうというわけでなく、リアルなキャンパスライフの中に女の子同士のカップルがいるという、普通の大学生の恋愛が描かれていると思うんです。付き合っている相手をめんどくさく感じることや、愛の重さが違うなと思うことってあるよねと、共感できる要素が随所に表れていて。まさに“今の恋愛”を描いている作品だなと思います。

リアリティがあるって言われるのはすごくうれしいです。百合を扱った作品ってどうしてもファンタジー感があるというか、普段読まない人からしたら女子高で、花園で、禁断で……というイメージが残っているんじゃないかと感じて、女性同士の恋愛をもう少しリアルで、かつ前向きに描いてみたいなという思いは、同人誌で発表するときからずっとありました。なので登場人物たちにもリアリティを持たせたいなと思っていて。例えばマンガやアニメのキャラクターのプロフィールに「優しい」と書いてあっても、純朴に育ってきたうえでの優しさなのか、「優しい」と思われたいからそう振る舞っているだけなのか、いろんなタイプがあると思うんです。なので「優しい」「おてんば」とか、そういう属性だけで作っていくのではなく、こういう部分もあるけどこういうところもある、というふうに、極端なキャラクターにならないように意識しています。

──演出面でもそういったところには気を付けているのでしょうか。

みわと冴子がキスしているところを目撃してしまったみっくん。冴子からみわと付き合っていることを気まずそうに報告されるが、その事実に驚きつつも「ルチャと鶴田にも言ってみろよ」と優しく後押しする。

例えば4話で、みわと冴子がキスしているのをみっくんが見てしまって、その後みっくんが自分の考えていることを冴子に伝えるシーンも、みっくんのセリフを「いいこと言った、どう?」みたいなオーバーな演出にしてしまうと、一気にわざとらしくなるし、感動の押しつけになっちゃうなと思ったんです。なのでみっくんのセリフも「俺はこうだと思う」というさり気ないものにして、その後も照れて流しちゃうとか。大げさすぎない演出にしようというのは、リアルな描写のために心がけているところではありますね。

──確かにドラマチックな演出にしているわけではなく、登場人物が自然と言葉を発しているような見せ方だと思いました。

マンガやアニメで記号的なキャラクターを見たときに「本当の人間ってこうじゃないのにな」と思うこともあって。それに対して、今の自分の実力ではどれくらいリアルな人物を描けるんだろうと、挑戦みたいなところもあるかなと思っています。

女の子の性欲が強くてもいいじゃない

──マンガワンでの連載前、pixivにみわと冴子の絵を載せていたとき、2人のことを「妥協して付き合っている」「打算で付き合う女たち」と記していました。

実際の恋愛って、すべてが完全な純愛であるとは限らないじゃないですか。婚活とかもそうですけど、自分の利益のために恋愛する人は普通にいて。だからこそ純愛に憧れるというのもわかるんですけど、打算的な恋愛をすることが悪いもののように思えてしまうのもどうなんだろうと。私は、それはそれで人間らしくていいんじゃないかなと思っていて。だから「同性が好きなのも間違いじゃないと思うよ」ということと同時に、「そういう打算的な恋愛も間違いじゃないと思うよ」って、肯定的に描きたいなと思ったんです。そもそも「付き合ってあげてもいいかな」というタイトルも、“付き合ってあげてもいいかな”くらいの軽い気持ちで付き合っちゃえばいいのに、それも別に悪いことではないんじゃないのかな、という考えから付けたものなんです。

──同じくご自身がpixivに載せていたイラストの中で、みわのキャラ紹介文に「性欲が強い」という設定が書かれていたのも気になりました。

入学早々、いろんな男子と遊んでいるリカ。彼女なりの考えを聞き、みわも思いを巡らせる。

その「性欲が強い」っていうのも、女の子にとってはいけないこととして扱われがちだと思うんです。みわちゃん本人としてはそれを恥ずかしく思っているけど、でもそれって別に悪いことではないんじゃないかなと。リカちゃんもいろんな男の人と遊んでいる女の子として描いていますけど、異性が好きで性欲の強い女の子の目線もちゃんと描きたくって。女性で性への関心が強くてもいいんですよっていうのを、みわちゃんとリカちゃんを通してちょっとポップに描いてあげたいなと思っています。ちなみに同人誌のときの設定は、連載の中で変えるところもあるんですが、みわの「性欲が強い」だけは絶対に変えないっていう、それに対しての強い信念はあります(笑)。

──(笑)。作品に込める思いというのはこれまでにも伝わってきましたが、たみふるさん自身の萌えのようなものも、作品に詰まっているんですか?

「みわちゃんの悲観的なところをめんどくさいと思ってるでしょ」とリカに言われ、すぐに否定できなかった冴子の会話を偶然聞いてしまったみわ。

そうですね。みわは「ベースの指弾きってエロいな」という概念から生まれたキャラクターなんですが(笑)、彼女にはけっこう好きな要素を詰め込んでいます。みわが面倒くさい言動をするたびに私が喜んでいるみたいな(笑)。ちょっと癖があって友達にはなりたくないけど、友達の友達くらいの距離から見てるのが楽しいキャラクターが好きなんです。みわもそういう感じの子かなと。

──“面倒くさい萌え”みたいなものがあるんですね。

そうなんです。こういう女子いるよね、面倒くさいよね、でも萌えるよね、みたいな感覚で愛でています。

たみふる「付き合ってあげてもいいかな①」
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たみふる
たみふる
2012年頃より執筆活動を開始。2014年に「女神さまと呼ばないで!」で商業デビュー。2016年にはとなりのヤングジャンプ(集英社)にて「空気人形と妹」を連載。2018年8月からは小学館のマンガアプリ・マンガワンにて「付き合ってあげてもいいかな」を連載中。