鬼灯は本当は優しいと思います（安元）

長嶝　俺は人気投票で白澤を抜きたいです。

──2016年にモーニング（講談社）誌上で行われた原作マンガのキャラクター人気投票では、白澤が2位で閻魔大王が16位でしたね。

長嶝　そう、閻魔大王は10位圏外なんですよ！ 意外とがんばってる人なんだけどなあ。

安元　みんな、「閻魔さまにはほかの人が入れるから私は別の人に入れよう」と思ったんじゃないですか？

遊佐　そうそう。人気あると思いますよ。

長嶝　2人とも、自分は安泰だからそう言うんだよ……。閻魔大王も俺もがんばってるんだけどなあ。

──白澤を抜くとなると、1位か2位になるしかないのでなかなかハードルが高いですね。長嶝さんは鬼灯に対してどんな印象を抱いていますか？

長嶝　やっぱり、閻魔大王は鬼灯を頼りにしてるんだろうなって。そういう立ち位置っていいよね。鬼灯がちゃんと動いてくれて、いろんなことやってくれて、閻魔は象徴みたいな感じで好きなことやって（笑）。

遊佐　これを聞くと本当に鬼灯が厳しいのもしょうがないって思いますね。

──そうですね（笑）。鬼灯は「ドS」と言われることの多いキャラクターですが、安元さんも江口先生も「それは違うと思う」とおっしゃっていますね。

安元　ええ。サディストではなくて、鬼灯は本当は優しいと思いますよ。ぶつくさ言いながらもちゃんと仕事してるし、シロたち動物や茄子、唐瓜への対応も「やれやれしょうがない」なんて言いながらすごく面倒見がいい。一子・二子のこともちゃんとかわいがってるし。閻魔さまはサボるから「サボんなよ」って言ってるだけなんですよ。白澤はただただ嫌い。

遊佐　白澤は子供時代の鬼灯を助けたりしてるんですけど、鬼灯はあんまり感謝をしないんですよね。それはどうかと思いますけどね。

安元　それはもう数千年前に終わったことですから（笑）。

遊佐　数千年前に自分を生贄にしたやつにさんざん仕返しするくせに（笑）。

──（笑）。長嶝さんは、鬼灯のことをドSだと思いますか？

長嶝　閻魔大王を演じてるとね。ただ愛のあるドSだと思いますよ。ろうそくを垂らしても、相当上から垂らしているようなイメージ。ろうそくが近いと、ろうが冷めなくて熱いんだよ。

遊佐　金魚草のジュースも、鬼灯は良かれと思って飲ませてるんでしょうね。

松山さんはやっちゃダメって言ってるのにやる（安元）

──第弐期で難しかったシーンはありますか？

安元　いつも難しいです。

遊佐　ええ、難しいシーンだらけですよ。

安元　漢字テストみたいな台本だし。

遊佐　それもありますし、コメディってどう出るのが正解なのか、みんなと絡んでみないとわからないところがあるので、本番が勝負なんですよ。

──「どう出るか」というのは？

遊佐　セリフのトーンだったり、掛け合いとしてテンション高く出たほうがいいのか、しっとりと落としたほうがいいのかとか。

安元　ギャグだから、相手の出方次第で全然変わってくるんです。

遊佐　芝居の会話が成立するかは本番次第なので、1人でリハーサルしてきたものが正解じゃないんです。

安元　それに長嶝さん、小林（由美子）さん、松山（鷹志）さんたちが何をしてくるかわからないですからね。閻魔、シロ、ルリオは三悪ですよ（笑）。

──松山さんのアドリブの多さは、第壱期のときからインタビューなどでも語られていましたが、第弐期でも健在なんですね。

安元　ええ、やっちゃダメって言ってるのにやるんです（笑）。

まだ地獄に行かずにすみましたね（安元）

──あはは（笑）。では最後にお伺いしたいんですが、江口先生から質問を預かっていまして。「私は小学校のとき、電車のドアに頭が挟まれて発車しそうになったことなど、人生の中で何度か『死ぬ！』と思ったことがあり、その体験が地獄への興味につながって『鬼灯の冷徹』が生まれました。3人は九死に一生を得た体験がありますか？ 差し支えない範囲で教えてください」とのことです。

安元　江口先生すごいな（笑）。僕は、実際に僕が絶対死んだと思って母親が大絶叫したことがあって。エスカレーターって、下りと上りがクロスしてるじゃないですか。今はだいぶ変わったけど、昔はクロスしているところに隙間があって、子供の頃に乗り出したら首が挟まって、首が90度どころじゃない角度になったらしいんですよね。そしてそのままエスカレーターがスーって上がっていって。母親が「ぎゃー！」って大絶叫。

長嶝　うわあ。

安元　でも僕、関節すべてが異常にやわらかいんですよ（笑）。そのときもケロンとして出てきて、スタスタと大号泣してる母親のところに歩いていったんです。もう母親にはめっちゃ怒られましたね。ボッコボコに殴られて、そっちのほうが死ぬかと思いましたけど。

長嶝　俺はそんなにないんですけど、家がちょっとガス爆発を起こしちゃって。

遊佐　ちょっと？

安元　レベル高いな（笑）。

長嶝　いや、でもそんなに大したことない爆発だったんだけど。子供のときに親戚の家に1人で遊びに行ったときに、台所でブワーって爆発したんですよ。そのときにおばさんが「みんな逃げて！」って叫んで、その場にいた大人全員が子供の俺の目の前をバーって駆け抜けて（笑）。「俺を誰も助けてくれない」「大人ってそういうものなんだ」と学びました。

遊佐　ガスには気をつけないとですね。僕は中学生のときに自転車に乗っていたら、前輪のところに小さい枝が入ってしまって。邪魔だと思ったんですが、そのまま走っていたんです。でも「カツカツカツカツ」って音がしていたから、足で取ろうと思ったら足が前輪に挟まりまして、そのまま自転車ごと一回転（笑）。奇跡的に受け身をとれたんで無傷ですみましたが、「足って自転車に挟まるんだなあ」と思いました。

安元　うわあ、チャリは危ない。小学生の頃だったかな。チャリを全力で漕いでたとき、前に止まっているトラックがいたんですよ。でも俺が近づいたらトラックのドアがバーン！って急に開いて！ その瞬間、首から上がドアに叩きつけられて、自転車だけ4、50mくらいピューって進んでいって、俺はドアの下にバタンって落ちた（笑）。そのときも「首イったかな」って思いましたが、柔らかいもんだから無傷で。トラックのおじさんは大慌てでしたね。俺は結構首を痛めがちだなあ。

遊佐　そんなこんなで九死に一生を得た僕たちは今、「鬼灯の冷徹」に出ています。

安元　まだ地獄に行かずにすみましたね（笑）。

遊佐　みんなは僕たちの九死に一生体験を真似しないようにね。

安元　良い子は真似するなよ。