コミックナタリー PowerPush - ドラマ「彼岸島」

ヤンマガの人気サバイバルホラーがドラマ化 総監修は三池崇史!松本光司に聞く制作秘話"

先の展開は決めずに好きなように描いてる

──1人は女の子ですけれども、明たち幼なじみ6人のうち、松本さんご自身が投影されているような人物というのは居ますか? 

ヒーローになるにつれてだんだんかけ離れてはいくんですが、明は自分だと思ってます。コンプレックスがいっぱいあって、告白もできないあの感じは僕です(笑)。

──そうなんですね。でもそう言われると、明の特技である物語を創る力も松本さんの投影なのかなと合点がいきます。

その点に関しては恐らく、「スタンド・バイ・ミー」の影響があると思いますね。「スタンド・バイ・ミー」は映画も小説も好きなんです。明はもう僕からすると見上げるような存在になってしまって、少し寂しいですね。

マンガ「彼岸島」の8巻より。島内での8カ月間の修行を経て、心身ともに強さを増した明。

──明が成長する展開は当初から予定していた?

いや、何も考えてなかったんですよ(笑)。はじめは篤という頼れる兄ちゃんに引っ張ってもらう形で話を進めていたんですが、そのままでは明はあまりに主人公っぽくないんですね。なのでこれは、成長させていく流れにするしかないのかなと。

──途中で明を成長させようと思い立ったと。作家さんによってタイプは色々だと思うのですが、松本さんは先の展開については決め込まずに描かれるタイプですか?

そうですね、担当編集とも先の展開については話さないですし、完全に好きなように描かせてもらっています。

──担当編集に先々のストーリーを相談したりはしない?

読者のリアルな反応を知るために、担当編集にはいち読者で居てもらっています。なので見せたときの感触で「あ、この部分は伝わったな」とか「ここはイマイチ把握できてないのかもしれない」とか確認しながら、直しています。

読者に受け入れられる、という確信

──「彼岸島」は物語が進むテンポの良さが気持ちよくて、そこが読者を飽きさせない要素のひとつだと思います。先ほどアンケートはご覧にならないということでしたが、このエピソードはそろそろ読者が飽きるかもしれない、といった舵取りはどのように判断していらっしゃるのでしょうか。

そこは自分の生理に近いです。このパターンは前回見た感じがするから避けようとか、感覚に頼ってる部分が大きいですね。大まかな出来事だけは決めてますが、例えば関門を3つ作ろうと考えていても、「3つ」と明言していなければ、話がダレそうになってきた場合は2つに減らしたりします。

ドラマ「彼岸島」より。人物名は写真左より、ケン、明、ポン、西山。

──そうした話の転がし方は連載当初からやられているんですか?

いえ、ある程度人気が安定してからですね。僕の記憶だと、明とポンが対峙した後ぐらいから好きにやるようになっていきました。そこで好きなことを描いても受け入れてもらえるんだ、とちょっと確信に近いものを感じたというか。

──具体的にはどういった展開が受け入れられたのでしょう?

明がポンに物語を話して聞かせる場面です。明とポンが対峙するエピソードにおけるクライマックスシーンなんですが、戦って撃破! というカタルシスとは違う方向に終息していきますよね。 あまりメジャーではない演出だなと自分でも思ったのですが、描いてみるとちゃんと反響があったので、「あ、好きなことやってもいいのかも」と思うようになりました。

──ターニングポイントになったと。

はい。それ以降はずっと好きなようにやってます。なんとなく恋愛が欲しいと思ったら恋愛要素を入れて……。うまくそこに行く道筋さえ作っておけば、読者はちゃんと付いて来てくれるっていうことが把握できたんです。

──ちなみに言える範囲で、今は「これが描きたい」というものはありますか。

松本光司

吸血鬼サイドのストーリーはもっと描きたいですね。ただそっちに行き過ぎると吸血鬼を倒しにくくなって、全体の流れがブレてくるので、バランスが難しいなと気をつけているところです。

──ゆくゆくは吸血鬼側のアナザーストーリーも拝見してみたいです。では最後にドラマを楽しみにしている読者、視聴者の方にメッセージをいただけますか。

僕もいち視聴者として、ドラマを楽しもうと思っています。そして、これを機に読みはじめようと思ってくれる人がいたらうれしいです。ドラマほど美少年は出てこないんですけど(笑)。まず手にとってみて、嫌いなら嫌いでしょうがないですけど、とりあえず読んでみて欲しいですね。

ドラマ「彼岸島」
あらすじ

東京の大学へ進学した宮本明は、夏休みの帰省で久しぶりに幼なじみのユキ、ケン、ポン、西山、加藤と再会する。兄の篤が婚約者と旅行に出かけたまま失踪した1年前から明と家族の関係は綻び始めていたが、気のおけない仲間達は昔のままだった。そんな中、明は突如現れた美女に篤の免許証を見せられる。冷というその女によると、篤は生きており冷の村で吸血鬼と戦っているというのだ。明は篤を捜すため、仲間とともに冷の村がある島「彼岸島」へと向うことに……。しかし、島に到着した明たちを待ち受けてのは、最凶の吸血鬼・雅が島を支配する、想像を絶する地獄絵図だった──。

放送スケジュール
  • MBS:2013年10月24日(木)スタート
    毎週木曜 深夜24:59~25:29(初回25:14~25:44)
  • TBS:10月24日(木)スタート
    毎週木曜 深夜24:58~25:28(初回25:13~25:43)
  • CBC:10月30日(水)スタート
    毎週水曜 深夜26:08~26:38
  • RKB:11月4日(月)スタート
    毎週月曜 深夜25:58~26:28
  • HBC:10月27日(日)スタート
    毎週日曜 深夜24:56~25:26
  • SBC:10月29日(火)スタート
    毎週火曜 深夜24:58~25:28
  • MBC:11月4日(月)スタート
    毎週月曜 深夜24:05~24:35
出演

白石隼也 鈴木亮平/山下リオ
遠藤雄弥 西井幸人 阿部翔平 勝信
水崎綾女 大和悠河 佐藤めぐみ
栗原類 鶴見辰吾(特別出演)

スタッフ

総監修:三池崇史
脚本:NAKA雅MURA
監督:西海謙一郎、横井健司

原作:松本光司 「彼岸島」(講談社「ヤングマガジン」連載)
オープニングテーマ:AI「TOP OF THE WORLD」(EMI Records Japan)
主題歌:Honey L Days「涙のように好きと言えたら」(avex trax)
制作:エクセレントフィルムズ
製作:「彼岸島」製作委員会・MBS

松本光司(まつもとこうじ)
松本光司

1974年6月4日、群馬県生まれ。1998年、第39回ちばてつや賞ヤング部門大賞を「彼女は笑う」で受賞する。同作品でヤングマガジン(講談社)にデビュー。1999年に短編「となりのおねえさん」「黄色に染まれ」を発表し、同年9月に別冊ヤングマガジン(講談社)にて初の連載作「サオリ」をスタートする。2000年8月からはヤングマガジンで「クーデタークラブ」を連載。2002年から同誌で「彼岸島」の連載を始め、2010年からは最終章「彼岸島 最後の47日間」へと突入した。