コミックナタリー PowerPush - ドラマ「彼岸島」
ヤンマガの人気サバイバルホラーがドラマ化 総監修は三池崇史!松本光司に聞く制作秘話"
牛乳女の母乳の味はカルピスかタピオカか
総監修・三池崇史より、原作者・松本光司さんへの質問
私も明と同じく「大糞赤子」の母「牛乳女(うしちちおんな)」が大好きです。彼女の中毒性が高く栄養ゼロ、餓死するまで吸い続けてしまうという母乳の「うまい……うまい……」味が気になって眠れなくなることがあります。どんな味なんでしょうか? 例えば、「カルピス」に近いとか、いや「タピオカ」だね、とかでも構いませんので教えて下さい。
そして、これらの恐ろしくも魅力的なキャラクターは先生の脳内のどの部分で生み出されてくるのか?
──ということで、原作でいうと目下連載中の最終章「彼岸島 最後の47日間」に登場する邪鬼(オニ)・牛乳女に関する質問をいただきました。牛乳女は体にたくさんの乳があり、そこから出る母乳を口にした人は中毒症状に襲われ正気を失う、という怪物です。
ははは、三池監督らしい質問ですね(笑)。母乳の味……まぁ、やっぱり甘いんでしょう。
──松本さんの中で、カルピスやタピオカといった既存の食品に例えるとするならなんですか。
えっ、例え……(苦笑)。どっちかならタピオカじゃないかな。ちょっと生ぬるい感じの。でも読者それぞれのイメージを正解として欲しいですね。
──わかりました(笑)。それと邪鬼はどうやって発想されるのか、ということですが。
その時々の閃きなので、改めて聞かれると実は答えに困ってしまうんですよね(笑)。ただ牛乳女に関しては、母性が描きたかったんだと思います。でも僕がいきなり母性の美しさを説いてもおかしいので、母性の危険性というか悲劇性みたいなところを描きたいなと。なので牛乳女と大糞赤子はセットで思い付きました。まあ大糞赤子を出すことには少し抵抗もあったんですけど。
──それはどういった理由からですか。
あれは自分の子供をスケッチしてるうちに思い付いた邪鬼なんですよね。なので子供を汚すようで嫌だったんですけど、思い付いたらやってみたくなっちゃうというか。そのほうが作家としては正しいんじゃないかと。
──作家の性ということでしょうか。やはり新しい邪鬼の制作には力が入りますか。
そうですね、新しい邪鬼を出して手応えがあったときが一番楽しいですしね。お笑いのギャグのようなもので、初めて登場させるときはスベったらどうしようといつも緊張します。頭の中でいいイメージが出来ていても、いざ作品に出してみるとピンとこないときもありますからね。イメージを超えたときはものすごく楽しいです。
──数々の邪鬼が登場しますが、特に手応えを感じた邪鬼は何でしょう。
姫ですかね。炭鉱の螺旋階段をよじ登ってくる登場シーンはいい画が描けたと感じています。出す前は読者に「は? 何これ」って言われるんじゃないかと不安で、僕の中では結構冒険でしたけど。
連載になるかもわからないのに2巻分一気に描いた
──そういった読者の反響はアンケートを参考にされるんですか?
いや担当編集の反応ですかね。担当が読んだ後焦ってるような素振りを見せると「あ、これはダメだな」っていう(笑)。僕はアンケートは見ないんですよ。あんまり気にしてると疲れちゃうので。担当に読者の代表になってもらっていますね。
──ドラマ「彼岸島」では第1話から映像化していくわけですが、初期のことを振り返るとどんなことが思い出されますか。
ちょうど結婚したてで必死でした。当時講談社に、「バイオハザード」の1作目に出てきそうな、古い洋館があったんですけど、そこに1カ月ぐらいカンヅメになって2巻分一気にネームを描き上げて。
──結婚したてなのにいきなり1カ月も外泊を。
だからこそですね。まだ連載になるかどうかもわからない、はじめの描き溜めの段階だったんですが、家に居るとほかに人がいるから気になったりするし、締め切りがあるわけじゃないからダラダラしちゃいかんと思って。
──企画提案の段階で2巻分も描き溜めるものなんですね。
「彼岸島」の場合は2話や3話分のネームだけ見せて連載の話を持ちかけても、担当もどんな話かよくわからないだろうと思ったんですよ。少なくとも島に行くまでを描かないとと思って、そこまで一気に作ったんです。
──2巻分は迷うことなく筆が進みました?
展開は決まっていましたけど、はじめはキャラクターの多さに手こずりました。1人2人なら状況がシンプルでわかりやすいんですが、未知の島へ行くという冒険的な話なら、やっぱり仲間内大勢で行くから面白い。キャラクターがたくさんいることでゴチャゴチャしないように、その辺は無理しながら描いていた記憶があります。
あらすじ
東京の大学へ進学した宮本明は、夏休みの帰省で久しぶりに幼なじみのユキ、ケン、ポン、西山、加藤と再会する。兄の篤が婚約者と旅行に出かけたまま失踪した1年前から明と家族の関係は綻び始めていたが、気のおけない仲間達は昔のままだった。そんな中、明は突如現れた美女に篤の免許証を見せられる。冷というその女によると、篤は生きており冷の村で吸血鬼と戦っているというのだ。明は篤を捜すため、仲間とともに冷の村がある島「彼岸島」へと向うことに……。しかし、島に到着した明たちを待ち受けていたのは、最凶の吸血鬼・雅が島を支配する、想像を絶する地獄絵図だった──。
放送スケジュール
- MBS:2013年10月24日(木)スタート
毎週木曜 深夜24:59~25:29(初回25:14~25:44) - TBS:10月24日(木)スタート
毎週木曜 深夜24:58~25:28(初回25:13~25:43) - CBC:10月30日(水)スタート
毎週水曜 深夜26:08~26:38 - RKB:11月4日(月)スタート
毎週月曜 深夜25:58~26:28 - HBC:10月27日(日)スタート
毎週日曜 深夜24:56~25:26 - SBC:10月29日(火)スタート
毎週火曜 深夜24:58~25:28 - MBC:11月4日(月)スタート
毎週月曜 深夜24:05~24:35
出演
白石隼也 鈴木亮平/山下リオ
遠藤雄弥 西井幸人 阿部翔平 勝信
水崎綾女 大和悠河 佐藤めぐみ
栗原類 鶴見辰吾(特別出演)
スタッフ
総監修:三池崇史
脚本:NAKA雅MURA
監督:西海謙一郎、横井健司
原作:松本光司 「彼岸島」(講談社「ヤングマガジン」連載)
オープニングテーマ:AI「TOP OF THE WORLD」(EMI Records Japan)
主題歌:Honey L Days「涙のように好きと言えたら」(avex trax)
制作:エクセレントフィルムズ
製作:「彼岸島」製作委員会・MBS
(c)松本光司・講談社/2013「彼岸島」製作委員会・MBS
松本光司(まつもとこうじ)
1974年6月4日、群馬県生まれ。1998年、第39回ちばてつや賞ヤング部門大賞を「彼女は笑う」で受賞する。同作品でヤングマガジン(講談社)にデビュー。1999年に短編「となりのおねえさん」「黄色に染まれ」を発表し、同年9月に別冊ヤングマガジン(講談社)にて初の連載作「サオリ」をスタートする。2000年8月からはヤングマガジンで「クーデタークラブ」を連載。2002年から同誌で「彼岸島」の連載を始め、2010年からは最終章「彼岸島 最後の47日間」へと突入した。