コミックナタリー Power Push - 「響け!ユーフォニアム2」監督・石原立也×原作者・武田綾乃対談

「働いたら負け」の時代に見せたかった、努力することの美しさ 全国大会に向けてラストスパート、北宇治ファイトォォー!

原作1巻に散りばめられていた伏線は伏線ではなかった

小説はアニメの原作となる3冊に加え、番外編2冊、立華高校がメインのスピンオフ2冊が発売されている。

──原作とアニメでいろいろな違いがあります。個人的に一番印象が変わったのは多くのキャラクターが関西弁でなくなったことでした。

石原 僕も最初はアニメも関西弁でやるかなと思って、関西に縁のありそうな声優さんのリストアップもしたんですよ。ただ難しいのが、関西弁を話すキャラクターが1人2人ではなく大多数という点。役柄に合っている声と演技で、さらに関西弁がしゃべれるという人はなかなか見つからないだろうということで、アニメ版では標準語になりました。そんな流れがあったので、兵庫県出身の寿美菜子さんが演じるあすか先輩なんかは、少しその名残りが残っていると思いますけど。

──演奏シーンが充実している点も、原作との大きな違いですよね。1期だと原作ではサンフェスは3ページ弱だけで、京都府大会に至っては演奏シーン自体が描かれていません。

武田 そうなんですよね(笑)。それら以外に、短編集(宝島社文庫「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のヒミツの話)にある「きらきら星」の演奏シーンなども拾ってくださって。

石原 当初は、アニメで演奏シーンはなるべくやらない方針でした。「5話のサンフェスや最終話の京都府大会くらいでやろうか」と、それらのシーンだけしっかりと力を入れようという感じでした。でも、なんだかんだで増えていき、結局はほとんどの話に演奏シーンが入っていきました。

──「響け!ユーフォニアム」は原作1巻の発売後にアニメ化が決定し、その後、アニメ制作と平行して原作2、3巻と短編集の執筆が進行したと聞きました。時系列順に伺いたいのですが、まず1巻の時点で2、3巻の構想はあったのでしょうか? 2、3年生の関係や滝の過去など、後の伏線が1巻の時点でたくさんありましたが……。

副部長・あすかと、部活を辞めさせたい母親。全国大会に向けて盛り上がっていた部に動揺が走る。

武田 全然考えていませんでした(笑)。アニメ化が決まってから1巻を読み返して、2、3巻に使えそうなポイントを拾っていった感じです。例えば3巻でフィーチャーされるあすか先輩なんて、部活動でよくいる、できるけど謎な先輩を描きたいだけのキャラクターでしたし。

石原 僕もその点は驚きました。ただ1巻で三者面談を終えたあすかが「5分で終わらせたった!」と言っているので、家庭に問題がある子なのかなと思いながら読みましたよ。

武田 確かに問題はありそうな描写ですね。その辺りを3巻につなげられてよかったです。

元吹奏楽部が観たアニメ版の“あるある”

──アニメ化決定後は、武田さんはどのように関わられましたか?

武田 脚本やデザインのチェックというか、一応目を通しましたけど、あまり口出しはしないようにしていました。

石原 感想は逐一いただいていました。「かわいい」とか「靴紐を結ぶシーンを入れてくれてありがとうございました」とか(笑)。

──アニメ制作中に同時進行で続編を執筆されたということですが、情報の共有などはされましたか?

武田 アニメ1期の制作中に2巻と3巻のプロットを作って送ったのは覚えています。

原作では2巻から登場するみぞれだが、アニメ1期では少しずつその姿を見せる。

石原 原作2巻なら、みぞれというオーボエの女子がいて、希美という女子とどんな関係であるかとか。そういった情報をいただいて、1期にも必要な部分は反映させました。

──逆に、アニメを観て原作側が受けた影響は?

武田 1巻のときは全体の流れや空気を重視して、ギスギス感が強めの話を書いていたんですけど(笑)。巻数を重ねるに従って、よりキャラクターを立たせて、イベントを増やして、単調にならないように要所要所にヒキを作って……という感じにしています。

石原 キャラクターの名前や設定をアニメから逆輸入していただきましたよね。

武田 そうですね、特に男子部員とかは短編集を書くときに参考にさせてもらいました。あと立華高校を舞台にしたシリーズ(宝島社文庫「響け!ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ」前編・後編)の主人公・佐々木梓は、アニメの影響をもろに受けて書きました。

石原 梓はすごいですよね、1巻ではチョイ役だったのに主人公になっちゃって。

武田 出世しました(笑)。

──武田先生は学生時代に吹奏楽部だったそうですが、その立場から見て、アニメのどういった所にこだわりを感じましたか?

武田 私は中学卒業までユーフォとチューバを吹いていましたけど、やはり衝撃的だったのは、きちんとキャラクターが演奏しているところですね。ピストンを音に合わせてきちんと押しているとか、管がちょっと空いている感じとか、その辺の再現度は特に驚きました。

石原 コンクールを取材したり、雑誌を読んだりして自分たちなりに勉強はしたつもりです。トランペットとユーフォだけですけど実際に買いましたし。手元にあると、持ち方の基本やピストンを押した時の感触みたいなこともすぐにわかるのでよかったです。結局、吹けるようにはならなかったんですけど(笑)。

武田 難しいですよね。吹奏楽部“あるある”としてはキャラクターと楽器の個性がリンクしてるところでしょうか。目立つトランペットは気が強いところとか、吹奏楽部ならではの空気を感じました。あとは楽譜への書き込みも懐かしかったです。

第2期5話の「三日月の舞」演奏シーンでは、楽譜への書き込みなどがたくさん確認できる。
第2期5話の「三日月の舞」演奏シーンでは、楽譜への書き込みなどがたくさん確認できる。

石原 あれは雑誌にあった写真を参考にしました。楽譜に書き込みしたり写真を貼ってあったり。僕はお守り代わりなのかなと解釈しています。

──楽器に名前を付けるのも“あるある”なのでしょうか?

武田 友達はみんな付けていましたね。大きなドラムにトトロとか、トランペットにゆりことか。後者はお母さんの名前らしいですけど、特に意味とかなくノリで付けてる感じが学生らしい(笑)。吹奏楽部の雰囲気は、文化系の中では少し独特なのかもしれません。限りなく体育会系というか、人前に出る人特有のハイテンションなところがありますね。

テレビアニメ「響け!ユーフォニアム2」

TOKYO MX1:水曜24:00~24:30
ABC朝日放送:水曜26:14~26:44
KBS京都:木曜25:30~26:00
テレビ愛知:水曜26:05~26:35
tsk:水曜25:00~25:30
BS11:木曜24:00~24:30
AT-X:金曜22:00~22:30

Blu-ray / DVD「響け!ユーフォニアム2」1巻 / 2016年12月21日発売 / ポニーキャニオン
「響け!ユーフォニアム2」1巻
Blu-ray Disc 7020円 / PCXE-50711
DVD 6156円 / PCBE-55531

第1回「まなつのファンファーレ」(本編48分)

初回特典
  • キャラクターデザイン池田晶子描き下ろし三方背特製 ケース/デジパック仕様
  • 16Pスペシャルブックレット:パート日誌(低音パート)、キャラクター紹介、第1回解説、楽器設定、小物 設定、美術設定、スタッフコメント【石原立也(監督)】
  • キャラクターデザイン池田晶子描き下ろしイラストカード(中川夏紀)
映像特典
  • 未放送ショートムービー「花火大会キッスへようこそ!」
  • WEB版予告映像
  • ノンテロップOP/ED
  • PV/CM集
音声特典
  • キャストコメンタリー(黒沢ともよ×朝井彩加×豊田萌絵×安済知佳)
  • スタッフコメンタリー(石原立也×池田晶子×山田尚子)
その他
  • 日本語字幕
  • 2017年3月12日開催スペシャルイベントチケット優先販売申込券(2017年2月6日申込締め切り)
原作小説 / 武田綾乃「響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」発売中 / 宝島社文庫 / 710円
「響け!ユーフォニアム2」1巻

舞台は北宇治高校吹奏楽部。高校に入り、クラスメイトの葉月からの熱烈なアプローチを受けて吹奏楽部に入った久美子。

久美子の高校の吹奏楽部は、5年前までは関西大会の常連で、過去に全国大会に出場したこともある強豪校だったが、顧問である山岡が他校へと移ってからは関西大会にすら進めていない。

再度の顧問交代を機に、再び高みを目指す部員たちの青春と奮闘、幼い人間関係の深化を、小気味よい演奏シーンとともに描いた、スウィング・青春小説!

石原立也(イシハラタツヤ)

アニメーション監督・演出家。京都アニメーション所属。監督作に「中二病でも恋がしたい!」「無彩限のファントム・ワールド」などがある。

武田綾乃(タケダアヤノ)

1992年、京都府生まれ。2013年、第8回日本ラブストーリー大賞隠し玉作品「今日、きみと息をする。」でデビュー。2作目の「響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部へようこそ」がアニメ化され話題に。ほかの著書に「響け! ユーフォニアムシリーズ 立華高校マーチングバンドへようこそ 前編・後編」、ユーフォシリーズのファンブック「響け! ユーフォニアム 北宇治高校の吹奏楽部日誌」(いずれも宝島社文庫)などがある。最新刊は「石黒くんに春は来ない」(イースト・プレス)。